鬼滅の刃の前半、竈門炭治郎の修行時代の重要建築物
それが、鱗滝左近次の家です。
山の端の一軒家。
下見板張りの板葺き石置き屋根が特徴ですね。
間取りをチェックする前に、この家の大きさを確認します。
が、日本家屋は3尺(909ミリ、約90センチ)が、モジュールになっていますから、容易に判別できます。
3間半×2間ということです。
あっさり、下図のような平面形であることが分かってしまうんですね。
3尺=909ミリが2つで1間(いっけん)ですから、3間半とは6370ミリで、約6.4メートル×3.6メートル。
面積は23.4㎡。
坪数でいうと、7坪ほどの家です。
その中はどうなっているか、というと…
手前が土間になっていて、床が上がった板間がある。
土間の幅と座敷の関係はというと
土間の幅は3尺のようですね。
以上のような内部空間の描写より、平面図は以下のようになります。
と、ここまで作成してみてから、気づいたんです。
あれ?禰豆子は?
どこにいるんだっけ?
ここに居ますよね。
禰豆子は鬼になってしまってるので、夜行性で、太陽を怖がりますから、陽の当たらない部屋。
囲炉裏の向こうに引き戸があります。
この奥にいるんです。
しかも、押し入れみたいなところじゃなくて、布団を敷いても案外広い。
そして、窓が無い部屋。
平面図的にはこうなる。
非常に不自然です。
普通に家を建てるときのセオリーにはない平面形です。
一部を突出させて、窓もない。
いわば、ウオーキングクローゼットのような部屋がくっついてしまうんです。
これはですね、ビフォアーアフターですよ、鱗滝家の。
つまり、どういうことかというと、
鱗滝さんは、炭治郎を鬼殺隊の戦士として養成する間、炭治郎に妹の禰豆子を預かるといったものの、
しかし、禰豆子は鬼になっちゃっているので、太陽の陽に当てることは出来ない。
そして、ずっと寝ている。
普通の座敷に寝かせておくことはできなかったため、
ワシがきちんと面倒を見るといった手前、鱗滝さんは、もともとの家の後ろに、禰豆子のための部屋を増築したのです。
わざわざ寝たきりの禰豆子のために、そこまでやる鱗滝左団次。
陽の当たらない部屋を付ける、匠です。
鱗滝さんは、そこまでやってくれる人なんです。
上司がそこまで面倒見てくれる。
だからこそ、炭治郎も鬼殺隊として命がけで頑張れるんですね。
こういうところが、今の子供達も鱗滝さんを尊敬している、その人気の秘密ですね。
自分でここまで書いてみて、ホントかよ!と
はじめの家の外観を確認してみたところ、
やられました。
その部分は屋根に隠れて見えない。
つまり、増築前も増築後も、右側の裏手にまわらないと、その様子は確認できませんが、
増築は絶対に行われているということなんです。
しかし、平面図では簡単に増築できるように見えますが、
立面図で確認してみます。
禰豆子の部屋は、このように切り妻の平入り側に接続して増築しなくてはならないのですが
ここではけっこう問題があって、
屋根の勾配を考えて繋がないと雨漏りの原因になるんですね。
そこで、実際の断面図はこのようになってしまう、どうしても。
つまり、天井が非常に低くならざるを得ないんです。
そして、禰豆子の部屋は人が立つのは難しい。
禰豆子が寝ている理由として、鬼でありながら人を食うことを我慢しているので、
体力を消耗しないようにずっと寝ているのではないか…と、鱗滝さんは分析していましたが、
私の分析は違います。
天井があまりに低いから、です。
だから、彼女はずっと寝ているんです。
と、これで解決解決と思っていましたら、違ってました。
orz
カラスが家に入ってくるシーンがあるんです。
なんと、もっと大規模につながっていました。
T型平面なんです。
そして、切り妻でキチンと屋根をかけてある。
石置き板葺き屋根で、谷になる部分の雨仕舞いはどう処理したのか興味が湧きますが…。
炭治郎がここにやってきた頃と、修行に出る前の間でかなりの大工事のリフォームをおこなったと推察されるわけです。
それだけじゃない、樹木の伐採もおこなっていますよね。
上図の比較でも分かるように、
炭治郎が来たばっかりの頃は、家ギリギリまで樹木が寄ってましたが、
アフターでは、それらの樹木が伐採されて、建物周辺の土地が広げられて、明るくなっている。
その一方で、増築した部屋は陽の光を入れないように。
最終的に正解の平面図は、こんな感じです。
鱗滝さんは、剣士としても優秀なようですが、
匠としても、相当な腕前といえるでしょう。
つづく