鬼滅の刃が大人気ですね。
少年ジャンプの連載マンガからアニメ化され、そして映画が作られた。
どんな話かといいますと、これから観る人のためにもネタばれしないようにざっくり説明しますと、
鬼に家族を殲滅させられた主人公の少年が、唯一生き残った自分と鬼に襲われて瀕死の妹と共に、
鬼への復讐、妹の治療のために、修行の旅に出て鬼退治をする、という、まあ王道の話ではあります。
しかしながら、その時代設定、空間設定、デザイン、独特の語彙力、展開、表現手法に画期的なものがあった。
むしろ、前衛に過ぎ、同時にアナクロであり、無残であり、爽やかでもあり、暗い、というそういうアンビバレンツな魅力に溢れています。
だから、始めのファンからは、面白いけどメジャーにはならないだろう。
このマイナーな面白さが分かるのは自分だけだろう。
鬼滅の刃は面白いけど、普通の人には無理じゃ無いか?
俺らだけが鬼滅の刃を推している。
と、みんなが思っていて、実はみんなが観ていた。
つまり、蓋を開けてみれば、実は、面白くメジャーでマニアじゃなくても皆に伝わって、日本中が推していたというわけなんです。
とうとうこうなりました。
記事によれば、10月16日に封切られた「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(外崎春雄監督)が29日、興行収入(興収)275億円を突破した。
29日までの45日間で、興収275億1243万8050円、動員2053万2177人を記録。
同262億円を記録した97年の米映画「タイタニック」を超え、日本歴代興収2位に躍り出た。
日本歴代最高の興収308億円を記録した、宮崎駿監督の01年のアニメ映画「千と千尋の神隠し」。
とのことなんです。
こういった話題が呼び水になって、さらに鬼滅の刃を観とかなきゃ!という人を増やしますからね。
もっともっといくかもしれませんね。
「千と千尋の神隠し」が歴代一位というのにも驚きですが、2001年の作品、すでに20年近くも前ということにもあらためて驚きました。
たしか、「千と千尋の神隠し」は確かに話題にはなっていたと思いますが、現在の鬼滅ブームというところまでいってなかったように思います。
と、いいますのも、子供達が千尋のセリフをしゃべったりとか、ハクのことを尊敬したりするとこまでではなかった。
しかし、この鬼滅はですね、子供達が主人公の竈門炭治郎のセリフを真似ている。
「全集中 水の呼吸!」とか言ってますね。
それだけじゃない、ときの内閣総理大臣までが「全集中の呼吸」とか、国会の答弁で言いだした。
何を、首相、おもねっているんですか?
と聞きたいところですが、確かに、「全集中」って言いたくなるんですよね。
全集中という言葉自体がこの作品の大発明。
鬼滅の刃の主人公である炭治郎が、剣ののワザを繰り出すときに叫ぶ言葉です。
昔でいえば、ライダーキック!とか、最近ではゴムゴムのー!とか、そういうのです。
こういうヒーローものでは、まあ、こういう集中力とか、集中せよ!、研ぎ澄ませ!とかだったと思うんですが、
「全集中 水の呼吸 弐の型 水車!」とか、ワザの名前が、キッチリ説明してある。
「全集中の呼吸」というのが、鬼を退治できる「鬼殺隊」があやつる、いわば剣の呼吸法みたいなもの、
そして、炭治郎が会得したのが、「水の呼吸」です。
そして、その剣法には壱から拾までの型があって、相手や状況に合わせて繰り出すのです。
壱から拾と、旧習の文字遣いをしましたが、この鬼滅の刃は、徹底してそういう漢字力というのも多用していますね。
なにを隠そう、登場人物の名前が読めない!
竈門炭治郎
竈門禰󠄀豆子
鱗滝左近次
鬼舞辻無惨
産屋敷耀哉
鋼鐵塚蛍
甘露寺蜜璃
時透無一郎
不死川玄弥
悲鳴嶼行冥
まるで、夜露死苦、愛死天流、摩武駄致、鬼魔愚零、とかのヤンキー語みたいですね。
それぞれ、以下のように読みます。
かまどたんじろう
かまどねづこ
きぶつじむざん
うぶやしきかがや
はがねづかほたる
かんろじみつり
ときとうむいちろう
しなずがわげんや
ひめじまぎょうめい
ちなみに、上にあげたヤンキー語はそれぞれ、よろしく、あいしてる、マブだち、きまぐれ、と読みますよ。
主人公も、およそ、主人公らしからぬ名乗りなんですよね。
この二人が、炭治郎と禰豆子
そして、剣の師匠であり二人の親代わりの鱗滝左近次。
1度みたら忘れられないキャラクターです。
炭治郎はエメラルドグリーンの市松模様の羽織にゴルバチョフみたいだし、禰豆子は竹を咥えているし、
鱗滝さんは天狗のお面をかぶっています。
このように、触りの部分だけではたぶんこの作品のすごさが分からないと思いますが、
アニメならば、親を殺され、途方に暮れていた炭治郎を鬼退治出来るほどの剣の腕前までに育てるまでの、
最初の2回を少し我慢して観ればあとは一気に面白くなりますよ。
犬夜叉、どろろ、彼岸島、鋼の錬金術師、ベルセルク、シグルイ、レイリ、南総里見八犬伝、尼子十勇士、真田十勇士、赤胴鈴之助、
といったものが渾然一体となっているから、
世代を超えて訴えかけているのでしょう。
同時に、無力だった炭治郎を、鱗滝さんが鍛えてくれるという師弟モノ。
現代の社会では、企業や部活の中における師弟関係というものが、失われて久しいですよね。
若者は、「ワザやスキルを本当は教えて欲しい」んだと思います。
また、この鬼滅の刃、すぐに口頭で説明します。
態度で示すとか、眼で盗めとか、黙って見ていろ!みたいな、昔の修行方や物語の伏線の張り方はさっさとバラしてしまいます。
敵の鬼もずいぶんおしゃべりで、俺は、こうこうこういう悪さをしてやった!とか、誰それをこんなにヒドイやり方で殺してやった!とか、
すぐに説明しますね。
また、物語上の設定とか、敵の弱点や特徴なんかも、師匠の鱗滝さんとの回想シーンとかを、平気で挟み込んできて説明しちゃいます。
そんなじっくりやってられない、みんな忙しいんだから、ということでしょうか。
これもまた、ゲームの攻略法を先に読んでからゲームを始めちゃうような現代っこの風習に合わせているのかもしれませんね。
しかしながら、そんな説明だらけのシーンと、無言、無音、セリフなしの動きのあるシーンがメリハリよく展開して面白いんですよ。
ま、そんな作品解説は多くの人がやってると思いますから、
ワタクシはやはり、建築の解説から入るべきでしょうね。
これが、物語の最初。
炭治郎と禰豆子がたどり着いた鱗滝さんの家です。
遠くに田畑と里が見える、いわゆる里山の山の端に建っている平屋の日本家屋ですね。
壁面の腰までが下見板張りで、上が漆喰塗り。
特徴的なのは、今では、ほとんど見られなくなったタイプの板葺き石置き屋根です。
鬼滅の刃では、この鱗滝さんの家は、さまざまな角度から描かれているので、
まあ、いつものとおり、この家の間取りでも検証してみるか…と思ったのですが、
やり始めてみると、なんだか妙なんです。
つづく