コロナウィルス対策では換気が有効!ということが周知されたものの、
いったい、どれくらいの換気量があればいいのか?についての知見がないということでした。
どれくらいの換気量かの目安がわからないと、
窓を開け放つのか、隙間でいいのか、それが分からない。
なので、先日、丸の内線の中で、出っくわしたのですが、
通称”全開大王”(私が命名)でした。
もの凄い怒りの形相で、ブツクサ言いながら、電車のすべての窓を全開にしてまわっているオジサンです。
座ってる人の前に立ち、開けろ!ごラあ!と言いながら、すべての窓をガシャン、ガシャンって全開して回っていた。
怖かったです。
そこまでやる必要はないんです。
換気というのは、空気の流れを作って、空気を入れ替えることなので、効率よく入り口と出口を作ってやればいい。
これは実感としてわかりますよね。
部屋全部を開け放たなくても、表側(日向)と裏側(日陰)の二か所の窓を開ければ風が通る。
自動車なら前の窓と後ろの窓を対角で開ければ、走っているときはさらに空気が入れ替わる。
体感できると思います。
ただ、空気の様子は目に見えないので、風が抜けてるように見えて、風の通り道が変だと案外淀んでいるところもある。
面白い実験動画を発見しました。
山登土地開発株式会社:快適な暮らしを実現する換気と高気密住宅の関係
さらに、重要な換気システムの解説の動画も見つけました。
空気の流れ(第1種換気と第3種換気の比較実験) | Panasonic
この動画は必見で、家や建物が廊下や部屋で仕切られているときに、風がどう流れていくか?
について解説してあります。
上記の2つの動画を見ていただければわかるのですが、換気のための空気の流れというのは、
ちょうど、池に流れ込む川と池から出ていく川の流れに似ているということです。
流れやすいところを、ショートカットして出ていく。
そして、淀みには生物が繁殖しやすい。
川や池ならば、そういう淀みが水辺となって、水草や魚や小動物が繁茂するビオトープになりますが、
室内で空気が淀んだ場所は、湿気が溜まりカビなどの微生物が繁茂することになります。
これがですね、まず、換気に関する建物や空間の物理的な法則ですね。
次に、ウィルスの感染と、ウィルス量について書かれた白木先生の論文を見ていくわけですが、
緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康)
No.5004 (2020年03月21日発行) P.30
白木公康 (千里金蘭大学副学長,富山大学名誉教授(医学部))
専門は臨床ウイルス学。
新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補に挙がっている抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)を開発
白木先生は、論文中でこう書いておられる。
※原文は青にしました。
コロナウイルスの増殖
インフルエンザウイルスは,感染して6時間で増殖を終えて,108/mL程度の感染性ウイルスを産生する。
SARSコロナウイルスは,6時間程度で増殖し,105〜6/mL程度のウイルスを産生する2)。
したがって,気道上皮細胞からのコロナウイルス放出はインフルエンザの約100分の1程度と推測できる。
まず、インフルエンザは感染後6時間で増殖を終え…と書いてあります。
つまり、感染ったかな?と思ってから6時間で、その人も感染させる側に回るということです。
そして、
108/mL
さらっと、書いてありますが、これはどういう数字かというと、10の8乗という意味です。
10の二乗は10×10で100ですね。
10の八乗とは、10×10×10×10×10×10×10×10ですから、1憶ということです。
mLというのは、ミリリットルですが、どれくらいの量かというと、
これくらい
アフターシェーブローションとか、顔につける乳液とかの使用量。
その中に1億個のウィルスが増えるといってます。
インフルエンザの場合ですけど。
SARSが105〜6/mLといってますから、10の五乗で10万、六乗で100万個ですね。
新型コロナも100万個くらいでしょうかね。
インフルエンザウイルスの感染能力(ウイルス力価)は、点鼻による鼻腔への感染では,127~320TCID50で、
それに比べてエアロゾルでは0.6~3TCID50と約100分の1のウイルス力価で感染する7)〜10)。
さっそく、見たことのない単位が出てきました。
TCID50
この単位とはなにかというと、「感染価」というもので、ウィルスの個数ではありません。
ウィルス自体は非常に小さいだけでなく、非常に脆弱なので、1個のウィルスでいきなり感染というわけではなく、
一定量のウイルスが存在しないと、つまり、数打ちゃ戦略なんですね。
ウイルスを混ぜた液体に接触し、感染した細胞は、細胞変性を起こします。
このウイルス液を希釈していき、ある一定以上薄くなると,接種しても細胞変性は起こらなくなります。
そのような薄める実験を繰り返して、半分の細胞が感染する濃度を TCID50と呼びます。
ウイルス不活化試験について
ウィルスの感染価を示す単位としては、HID50というものがありますが、
こちらはどストレートにHuman Infectious Dose(人間の感染量)、被験者の半数で感染が成立する吸入ウイルス量のことです。
こちらの1973年の研究論文によれば、
インフルエンザ生ワクチンに関する研究 低温順化株の野外実験 水谷裕迪 井土俊郎
「鼻腔にinstillationし た場合 の50% Human Infectious Dose (HID50)は、127TCID50に相当する」とあり、白木先生の論文とも合致します。
つまり、鼻にウィルス液体を入れた場合よりも、エアロゾル=空気中に漂う微粒子のかたちのウィルスの方が100倍感染力がある。
100分1の量で感染してしまうということです。
なんかヤバくないですか?点鼻されたら速攻で感染しそうなのが、エアロの方がもっと効くよ、ということです。
ここで、もうひとつ重要な論文があるのですが、高橋和郎先生による (大阪府立公衆衛生研究所副所長・感染症部長)
※原文は緑にしました。
ヒトがエアロゾル吸入により発症するときのウイルス量について考察する。ヒト,サル,マウスではウイルスを含むエアロゾル(Fluエアロゾル)を吸入することにより発症することは多くの文献(文献4~6)で報告されている。
被験者は容易に作製されたFluエアロゾル(直径1~3μm,10L)を吸い込んで発症する。
診断は咽頭スワブからのウイルス分離と特異中和抗体価の有意な上昇で判断している。
この場合,中和抗体を持たない被験者を対象にすると,被験者の半数で感染が成立する吸入ウイルス量(50%human infectious dose:HID50)は,免疫のない人で,わずか0.6~3.0TCID50(約0.4~2.0TCID50,約0.4~2.0個の感染性ウイルスに相当する)と非常に少量であるとの報告(文献7)がある。
えっ、えっー ええっー
わずか0.6~3.0TCID50
(約0.4~2.0TCID50,約0.4~2.0個の感染性ウイルス)
なに、なに、なに、それ、1個以下で?
これに対して,鼻腔内滴下による感染の成立に必要なウイルス量(HID50)は127~320TCID50と約100倍(文献4)あるいはそれ以上のウイルス量が必要であるという。
この理由としては,粒子サイズの小さなエアロゾルの多くは吸入後直接,気管以下の下気道に付着し,これは免疫状態にもよるが,ウイルスが比較的増殖しやすい環境であることが考えられる。一方,大きな飛沫は上気道で捕獲され,下気道まで達することができない。つまり,上気道における解剖生理学的な防御機構が働くため,感染成立にはより多くのウイルス量が必要となることが考えられる。
5~10μmのエアロゾル(飛沫と呼ばれる)は30mの落下に17~62分を要し,沈着部位は鼻腔や上気道である。
一方,2~3μm(飛沫核)は落下せず,吸入時には肺胞に達する。
このように,エアロゾルは大きさによって上気道や肺胞の標的細胞に達する。
インフルエンザウイルスでは,通常の呼気の87%を占める1μmのエアロゾルも感染性を有し気道で感染する11)。
注意すべき点は,湿気の高い密室では2m離れていても,くしゃみや咳だけでなく,呼気に含まれる1μm程度のエアロゾルさえ感染性を保持して浮遊し,吸気によって上気道または下気道で感染するということである。
密室におけるインフルエンザの集団感染例としては,空調が3時間停止した飛行機内で,1名の患者から37名に感染している12)。
多くの人が密集し呼気のエアロゾルが乾燥しない空間では,感染者がいると感染は避けがたく,多数の感染者が発生する。
点鼻では感受性細胞に到達できるウイルスが限られるが,
エアロゾルの噴霧は上気道・下気道の上皮細胞に直接感染するため,100倍以上効率よく感染できると思われる。
一方,物を介する感染(fomite transmission)では,さらに多くのウイルスが必要と思われる。
つづく