これが、葛西臨海水族園の全体像です。
これまでの議論の中で、この場所がなんのために準備されたのか?ということが分かっていただけたかと思います。
それは、一度なくしてしまった江戸の海の、浜辺、渚、水辺の環境の再生なんですね。
そのために、50年がかりで計画してきたものだったのです。
それが、50年かけて終わったのではなく、50年がかりでスタートラインに立っただけ。
やっと今、端緒についただけなのです。
葛西臨海水族園は「水族館」と思っている方々も多いと思うのですが、「館」ではなく「園」なんです。
つまり、ここはハコモノとして計画されているのではなく、もっと大きな全体の環境として構想されている。
だから!
水族園なんです。
そして、建築家の谷口吉生さんもそのように理解して設計デザインしているから…
緑と海の間で建築が主張していない、
いや、最小で最大の効果で絶景を生み出している。
私の大好きな瀬戸内の漁港、鞆の浦の弁天島の弁天堂のようなものなのです。
現代的なガラスの素材を用いていますが、その意図は海のお堂や海の神社なんですね。
そのことをまったく理解しないままに、今、葛西臨海水族園についての議論を押し進めている。
まさに、ゴリ押しに、無理押しに強引に進めようとしているから!怒っているんです。
都庁の連中は、葛西臨海図遺族園の敷地を、
こんな感じで狭く切り取って考えている。
全体像はもっと大きいんすね。
周辺に人工的に作られたものではあったが、今や自然になろうとしている地形です。
そして!葛西臨海水族園に行ったことがある方ならみんな知ってる、ここに注目してほしい!
葛西臨海水族園の最大の特徴ですが…
ここが、東京?っていうような自然景観が広がる広場があるのです。
おべんとうも持ち込みできます。
このエリアには淡水生物館があるのです。
上から見ると、円弧状の建物がくっきり見えますが、
現実には、この建物も緑の中に埋めてあります。
そして、建物の周囲に渓流がある。
これ…凄い仕掛けというか、
30年前当時では、本当に画期的だったんじゃないでしょうか。
こういう、人工なのに、より純粋化された自然景観ってどっかで見たことある…
どこだっけ
どこだっけ
って考えていて、思い出しました。
下鴨神社です。
そして、糺の森です。
糺ノ森(ただすのもり)と奈良の小川です。
下鴨神社は京都の神社の中でも、もっとも古い部類で、創建は崇神天皇の時代といわれております。
崇神天皇といえば、紀元前100年とも、西暦300年ともいわれている、1700年から2000年前ということです。
その頃から、脈々とこの神社と森は守られ続けてきており、京都の寺社仏閣の中でも荘厳な雰囲気を醸し出しています。
この糺の森の中に小川が流れているんです。
奈良の小川といいますが、あらゆる川の上流に位置するような、川の妖精みたいなほんとうに厳粛なる流れ。
その、糺の森もいわば都市の中の人工の自然なんです。
そして、航空写真で見ても、そんなに大きくないのに中に入るともっと大きな自然に包まれているような感じのするところですね。
ここの森の木々が樹齢200年から600年といわれていますから、
神社の創建からはあの寿命の長い樹木ですら3代くらい交代しているということです。
つまり、葛西臨海水族園は、この下鴨神社のような全体像を胸に描いて構想されてきているのだ!ということなんです。
かたや築1700年の京都の下鴨神社に挑んでいる、まだ30歳の建物なんです。
つづく