遠野の駅舎がどうもタダモノではないぞ…の続きです。
前述の安宅研太郎さんは、生徒さん達と遠野の街づくりに取り組んでいるだけでなく、
遠野とそこでの活動、オフキャンパスの情報発信もされています。
『HEii』という機関紙です。
なんだかですね、そのまま書店に並んでもいいようなプロ顔負けの雑誌です。
エディトリアルデザインがいいんでしょうね。
安宅さん自らが編集とデザインをなさっているそうです。
やはりですね、デザインなんです。
世の中にはさまざまな活動があります。
その中には大変立派で意義あるものも多いのですが、
活動する方々の思いや真剣度が高ければ高いほど、
びっしりと文字原稿で埋め尽くしたような配布物を作ってしまいがちなんですが、
それではですね、誰も読まないんです。
読めないと言ってもいいかもしれない。
情報や報告はあくまで素材なので、その素材をどう料理するか…によって、美味しさに差が出るように、
きちんと料理されていないと、受けての頭に入っていかない、読み取れない、印象に残らないんですね。
活動報告もその内容もどうデザインされるか、によって伝わる内容にも差が出るんです。
小さな生真面目な活動であればあるほど、ちゃんとした立派な活動であればあるほど、
絶対にデザインが必要であり、デザイナーの質が活動を決めるといっていいほど大事なんです。
安宅さんのように、地域活動をデザインしている方に、
もう30年来の友人なんですが、兵庫県の灘区のナディストこと慈(うつみ)憲一さんがいます。
彼は、阪神大震災をきっかけに、東京から故郷に帰り、
兵庫県灘区を盛り上げる活動をもう四半世紀にわたり取り組んでおられます。
さまざまな企画と配布物出版物は、いずれも地元の街を連動した体験企画になっていて、
今でいう『ブラタモリ』のような企画をたった一人で始めて、今ではたくさんの仲間と共に、神戸の街を盛り上げています。
慈さんは、町おこしとかいわず、「まちあそび」と呼んでらっしゃいますね。
おもろい、ことが大事…と
確かに、その企画もスノッブだけど優しさがあって、知的でユーモアがあって、子供からお年寄りまで、
誰でも参加したくなるような、参加可能なとこと、それをガイドする慈さん自身のキャラクターが一番の魅力なんですが、
やはり、その信頼を、イメージを、企画のブランド力を生み出しているのは、表現力とデザイン力なんですね。
これらのデザインはすべて、慈さん自身が手掛けています。
これは、今年の夏休み企画の摩耶山登りのポスターです。
デザインというのは、それまでのその人が経験した知的経験のすべてが現れますし、
同時にそういった教養力はデザインの力で付与することができるんですね。
神戸の三宮駅にこのポスターが張り出されているらしいのですが…(慈さんのFaceBookより)
パルコの広告かと思いました。
こうした場所に登場しても、大企業とそん色のない力を持っていますよね。
デザインというのは、小さな組織でも大企業と対等に渡り合える武器のひとつなんです。
だから、デザインはとても大事なんです。
そういった意味では、安宅さんの遠野での活動も、デザインの力が十二分に発揮されていることがわかりますね。
HEiiは、平易と読むんでしょうかね。
遠野の自然や遠野の生活文化を、町を、建築を通して解読していくような内容です。
どの号もですね、大変な力作なんですが
その中で、ちょっと私の目を引いた特集がありました。
マンサード屋根の建物が異様に多い…という
「マンサードリサーチプロジェクト」という記事です。
つづく