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「盗伐」の真相

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「盗伐」って言葉、聞いたことありますか?

とうばつ?

盗み?伐る?

何それ?って感じだと思います。

 

私もはじめて聞いたとき、ああ、タイとかベトナム、ミャンマー、ラオスの話しでしょ?と思いました。

実際、かつては、インドシナ半島では、チークの不法伐採がすごい問題になってました。

 


 

当時、そのほとんどが日本向けということで、国際問題にも発展していて、

不法な伐採が原因で山の保水力や地耐力がなくなり、

1988年の大洪水の際には、災害によって多くの村々で数百人におよぶ被害が出て、

タイ政府はチークの伐採を全面禁止にしていました。

 

 

 

山の中を象を使って運ぶんですよ。
象がチークを降ろすときに鼻で持ち上げたり背中に載せたり、足で引き摺ったりするんですが、

木の根元に穴を開けて鎖でつないでいたみたいです。
ある日の斉藤ジムショ

 

当時の熱帯林業に関する研究者による技術情報誌『熱帯林業』(その後『海外の森林と林業』に改称)。

において、研究者の増子博さんの盗伐のレポートが凄いです。


増子博
1941年山形市生まれ。宇都宮大学農学部卒業後、上級職として林野庁に採用され、
本庁、旭川・秋田・前橋・東京・熊本の営林局管内で森林管理業務に従事。
また、国際協力事業団の森林環境専門家としてミャンマー、タイ、フィリピン、ケニアに長期派遣、
および同事業団の国際協力専門員として海外20数カ国で活動。東京大学・宇都宮大学の農学部非常勤講師。技術士(林業)

国際緑化推進センター

 

山道で「盗伐団」に遭遇…って書いてありますよね。

盗伐の実態を調べることは大変難しいことであり、余り首を突っ込むと生命の危険さえある…とも書かれていますよね。

 

それはですね…タイ北部というのは別名ゴールデントライアングルといいまして、

ケシの一大産地であり世界最大の麻薬密造地帯だったんですね。

 

 

このミャンマー、タイ、ラオスが接する山岳地帯はメコン川も流れていますが、

その水運利用にもより、麻薬と、チークの産地と、関わる人達と、出荷方法は完全にカブっていたんです。

 

そして、これら違法な麻薬の収益は、このゴールデントライアングル周辺の様々な勢力の収入源ともなっていました。

犯罪組織というか反政府ゲリラや少数民族、反政府活動家や亡命政府といった面々です。

 

国境はありますが、山の中のジャングルの中の、道なき道をたどるような場所です。

なので、非合法の木材であっても、いやいや禁止されてるタイじゃなくてラオス製だよ、いやいやミャンマーのだよ、

ベトナム軍が基地や道路の工事でやむなく伐採した合法なものだよ、といろんな言い訳が通っていた。

それだけじゃなく、裏では、実は各国政府の軍が簿外収入として取り仕切っていた、とも言われています。

 

私が、20数年前ベトナムやタイに家具や建材の発注やら買い付けに行っていたときも、

タイではチークは伐採禁止になっているににもかかわらず、どこやらから出回っていましたね。

もちろん原木ではなく、フローリングや角材に加工されていましたが。

 

とまあ、それくらい「盗伐」といえば、ヤバイ話しなんですよ。

 

現在でも南米とかアフリカとか、そういった発展途上国や、内戦やら近隣諸国との緊張感の中で、

不安定な政府や、反政府勢力の資金源につながるような、そういうものが違法伐採、盗伐なんです。

 

ちょっとしたコソ泥感覚では実行し得ないはずなんです。

なぜなら、伐採のための工具や重機、運搬のための重機や搬送車両、そして大勢の作業員と運営する組織が必須。

そして、そこまで物理的にやれたとしても、次にはこの違法伐採された木材を捌かなくては、

商社的機能をつかって、市場に持ち込まなくては、流通に載せなければ換金できませんから…

かなり、大がかりになる。

 

今の法治国家の日本で!そんな、ことが!まかり通るわけがない!はず!

と思っていたし、そう思いたい…

 

ところが…なんです。

 

まかり通っているようなんです、盗伐。

山の樹木の盗み。

勝手に他人の山の樹木を伐採して、

どこかに売り捌く。

 

どこだよ!そんなゴールデントライアングルみたいな場所!

隠れてこそこそ樹木伐採し、人目を盗んで搬出できるなんて!

原生林の奥深い山とか、諸島部か、深夜作業で?と思いましたよ。

 

ところが、案外、人里近いところで、白昼に堂々とおこなわれていました。

しかも、そんなに山奥でもないし、無人島でもありませんでした。

 

それは、宮崎県でした。

そして、盗まれたはずの木が、堂々と市場にも出回っていました。

 

そして、宮崎県はそもそも杉の生産で第一位なんです。

また、日南の杉は「飫肥杉」としてブランドでもあります。

 

飫肥杉は江戸時代初期に藩主が藩の財政立て直しのために植林を奨励し、産み出した地域の名産品です。

その木は通常の杉よりも油分を多く含み、水を吸いにくく、軽量で強いいことから造船用として重宝されました。

そんな伝統のある場所です。
 

 

 

天井材とかで使われる幅広で薄く割いても反りにくい「秋田杉」で有名な、秋田県を抜いて、

1990年から、ブッチぎりの1位なんですよね。

そんな名産品が杉である宮崎で盗伐?ちょっと首をかしげたくなるんですよね…

 

つづく

 

 

 

 

 


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