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とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。

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こんなニュースを見かけました。

 

旧本郷庁舎の解体開始 岩国市
中国新聞アルファ https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=497263&comment_sub_id=0&category_id=110 

 

 

戦時中に建てられた木造建築です。

岩国市本郷町の旧本郷総合支所庁舎について、市は本年度中に保存か解体かの方針を昨年まで話しあわれていたようですが、

 

同じく中国新聞の昨年の記事です。ちょうど1年前ですね。

 

ズームやまぐち 旧本郷庁舎 保存か解体か 戦時中の建物 岩国市が来月方針

 

価値を調査せず

 市本郷支所によると旧庁舎は文化財に指定されておらず、市が独自に建築物としての価値を調査したことはない。保存する場合は耐震工事が必要で、費用は耐震診断だけで500万円程度かかるとみる。解体費用は1千万円程度と見込む。 

 保存を唱える住民グループ「旧本郷総合支所庁舎を活(い)かす会」はこれまで、勉強会を開いて大工や歴史家を招き、旧庁舎の建築的な価値などを調査してきた。保存を求める町内外からの署名は、5日現在で1039人分が寄せられた。 

 同会の依頼で旧庁舎を視察した山口近代建築研究会の原田正彦代表(62)は「旧庁舎は昭和初期の典型的な作りだが、希少な建物。文化財になり得る建築物であり、市は判断を先送りして詳細調査をするべきだ」と話す。 

 WSで出た意見は3月開催予定の有識者会議に報告され、市は同会議の結論を踏まえて最終判断する方針だ。解体、保存という意見の違いはあるが、WSを通じて住民たちが「本郷の未来」を真剣に考えている点は同じであり、市は慎重に判断をする必要がある。 

旧本郷総合支所庁舎
 洋風木造2階建てで、1942(昭和17)年に旧本郷村役場として建築。終戦後は一時期、簡易裁判所などとしても使用された。2006年の旧岩国市との合併後に本郷総合支所となり、14年春、近くに新築された本郷支所に行政機能が移転した。 

(2017年2月7日朝刊掲載)

 

ここで、話しあわれていることは、現時点で価値があるかどうか?を決めようとしていることなんです。

この戦時中に建てられた建物は、何かの様式に則っているものではなさそうだし、

著名な建築家が作ったものでもなく無名だし、大理石でもないし、鋳鉄や真鍮がふんだんに使われたものでもないし、

構造的に当時はまだ珍しいコンクリートでもないし、

おそらく戦争中の乏しい物資の中で、日本の大工さんの技術で、漆喰塗りで建てられた洋館。

 

 

これ、学術的に建築を知っている非常に優秀なデザイナーが付いていた建物だと思います。

板張りの切り替えと窓の取り合い、板の水平ラインから窓が上に飛び出すように配置されてるでしょ?

そこにリズム感が生まれている。

また、上部の板張りは「イギリス張り」という手法で、最下部の板張りは「押縁下見張り」という手法が使い分けてあります。

このあたりの様式的処理は、下部が石張りで上部が擬石つくりの大学の校舎とかともいっしょです。

 

山間の村の庁舎としての立派な体を現そうとした当時の郷土愛に溢れた精一杯の正装。

そんな素敵な建物に見えるんですが、どうでしょうか?

 

 

 

これを今、まさに壊しているんだそうです。

 

このような建築物保存で問題になるのが、この「文化的価値」というヤツなんですが、

学術的にどうか…とか、制作者が著名か…とか、あらかじめ準備されたその場の尺度や権威で考えるから、

いわば、他人まかせだから、

「価値が無くなる」、「価値があるといえなくなる」んです。

 

価値はですね、はじめからあるんじゃなくて、価値は創るもんなんです。

 

どんな建物でもできたてホヤホヤでは、まあ、ある種の使用価値しかありません。

そもそも、経済的価値という意味では、建物は新築時からどんどん評価額は減価するように設定されています。

 

だから、文化的価値というのは、その後に生じるものであって、最初は無形化しています。

いわゆる一次的な使用効力を失い始めたときから徐々に発生するものなんです。

 

そして、その文化的価値というものは、社会状況の変化によっても生じてきます。

まず、どんなモノにでも絶対的に生じるのが、経過年数による「古い」という価値ですね。

 

次に、今後その古い建物が社会の中でどのような役割を発揮するのか?と、

新たな価値創造への読み替えができるかどうか、が鍵なんです。

そういう未来予想、未来への展望をもたせることが出来るか?です。

すぐに思いつかない場合は、慌てないで次の時代変化まで待ちましょう。

なぜなら、必ず人々の価値観は変化するから。

 

日本各地がそうなんですが、江戸から明治大正昭和と連続してきた村落共同体が戦後の社会的変化の中でうち捨てられ、

過疎化と人口減少の中で地域密着型の細かい行政単位を、統合してきています。

その結果、かつての村役場だったり、小学校だったり、診療所だったり、消防署だったり、といった町村の中心施設が、

統合移転や閉鎖によって空き家化しています。

 

結果として、それらの公共施設を解体するかどうか…という判断をしなくてはならなくなっている。

そのときに、戦後に建てられたコンクリート庁舎は、どちらかというと箱型無個性で、その価値をうまく読み替えることができなく、

あっけなく解体されているケースがとっても多いんです。

 

しかしながら、

この、本郷村の庁舎は今、輝き始めているときだと思うんです。

 

つづく


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