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とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。

こんなニュースを見かけました。

 

旧本郷庁舎の解体開始 岩国市
中国新聞アルファ https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=497263&comment_sub_id=0&category_id=110 

 

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戦時中に建てられた木造建築です。

岩国市本郷町の旧本郷総合支所庁舎について、市は本年度中に保存か解体かの方針を昨年まで話しあわれていたようですが、

 

同じく中国新聞の昨年の記事です。ちょうど1年前ですね。

 

ズームやまぐち 旧本郷庁舎 保存か解体か 戦時中の建物 岩国市が来月方針

 

価値を調査せず

 市本郷支所によると旧庁舎は文化財に指定されておらず、市が独自に建築物としての価値を調査したことはない。保存する場合は耐震工事が必要で、費用は耐震診断だけで500万円程度かかるとみる。解体費用は1千万円程度と見込む。 

 保存を唱える住民グループ「旧本郷総合支所庁舎を活(い)かす会」はこれまで、勉強会を開いて大工や歴史家を招き、旧庁舎の建築的な価値などを調査してきた。保存を求める町内外からの署名は、5日現在で1039人分が寄せられた。 

 同会の依頼で旧庁舎を視察した山口近代建築研究会の原田正彦代表(62)は「旧庁舎は昭和初期の典型的な作りだが、希少な建物。文化財になり得る建築物であり、市は判断を先送りして詳細調査をするべきだ」と話す。 

 WSで出た意見は3月開催予定の有識者会議に報告され、市は同会議の結論を踏まえて最終判断する方針だ。解体、保存という意見の違いはあるが、WSを通じて住民たちが「本郷の未来」を真剣に考えている点は同じであり、市は慎重に判断をする必要がある。 

旧本郷総合支所庁舎
 洋風木造2階建てで、1942(昭和17)年に旧本郷村役場として建築。終戦後は一時期、簡易裁判所などとしても使用された。2006年の旧岩国市との合併後に本郷総合支所となり、14年春、近くに新築された本郷支所に行政機能が移転した。 

(2017年2月7日朝刊掲載)

 

ここで、話しあわれていることは、現時点で価値があるかどうか?を決めようとしていることなんです。

この戦時中に建てられた建物は、何かの様式に則っているものではなさそうだし、

著名な建築家が作ったものでもなく無名だし、大理石でもないし、鋳鉄や真鍮がふんだんに使われたものでもないし、

構造的に当時はまだ珍しいコンクリートでもないし、

おそらく戦争中の乏しい物資の中で、日本の大工さんの技術で、漆喰塗りで建てられた洋館。

 

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これ、学術的に建築を知っている非常に優秀なデザイナーが付いていた建物だと思います。

板張りの切り替えと窓の取り合い、板の水平ラインから窓が上に飛び出すように配置されてるでしょ?

そこにリズム感が生まれている。

また、上部の板張りは「イギリス張り」という手法で、最下部の板張りは「押縁下見張り」という手法が使い分けてあります。

このあたりの様式的処理は、下部が石張りで上部が擬石つくりの大学の校舎とかともいっしょです。

 

山間の村の庁舎としての立派な体を現そうとした当時の郷土愛に溢れた精一杯の正装。

そんな素敵な建物に見えるんですが、どうでしょうか?

 

 

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これを今、まさに壊しているんだそうです。

 

このような建築物保存で問題になるのが、この「文化的価値」というヤツなんですが、

学術的にどうか…とか、制作者が著名か…とか、あらかじめ準備されたその場の尺度や権威で考えるから、

いわば、他人まかせだから、

「価値が無くなる」、「価値があるといえなくなる」んです。

 

価値はですね、はじめからあるんじゃなくて、価値は創るもんなんです。

 

どんな建物でもできたてホヤホヤでは、まあ、ある種の使用価値しかありません。

そもそも、経済的価値という意味では、建物は新築時からどんどん評価額は減価するように設定されています。

 

だから、文化的価値というのは、その後に生じるものであって、最初は無形化しています。

いわゆる一次的な使用効力を失い始めたときから徐々に発生するものなんです。

 

そして、その文化的価値というものは、社会状況の変化によっても生じてきます。

まず、どんなモノにでも絶対的に生じるのが、経過年数による「古い」という価値ですね。

 

次に、今後その古い建物が社会の中でどのような役割を発揮するのか?と、

新たな価値創造への読み替えができるかどうか、が鍵なんです。

そういう未来予想、未来への展望をもたせることが出来るか?です。

すぐに思いつかない場合は、慌てないで次の時代変化まで待ちましょう。

なぜなら、必ず人々の価値観は変化するから。

 

日本各地がそうなんですが、江戸から明治大正昭和と連続してきた村落共同体が戦後の社会的変化の中でうち捨てられ、

過疎化と人口減少の中で地域密着型の細かい行政単位を、統合してきています。

その結果、かつての村役場だったり、小学校だったり、診療所だったり、消防署だったり、といった町村の中心施設が、

統合移転や閉鎖によって空き家化しています。

 

結果として、それらの公共施設を解体するかどうか…という判断をしなくてはならなくなっている。

そのときに、戦後に建てられたコンクリート庁舎は、どちらかというと箱型無個性で、その価値をうまく読み替えることができなく、

あっけなく解体されているケースがとっても多いんです。

 

しかしながら、

この、本郷村の庁舎は今、輝き始めているときだと思うんです。

 

つづく


とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。②

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。

 

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戦時中に建てられた木造庁舎、岩国市本郷町の旧本郷支所庁舎の解体問題についての続きです。

解体の事由として挙げられているのは

 

1.このまま使用するには、

2.耐震上の問題があり、

3.耐震工事には費用がかかる

 

の3つ、これ現在、日本中で起きている歴史的建造物の破壊による更地化の共通の理由なんですね。

 

私のように、「古い建物は、まずは壊すな!」と言ってる建築オタクからすると、

破壊を理屈づけるための屁理屈といえます。

 

なぜなら、

1.このまま使用するわけではない。

2.耐震上の理由は法律改正によるもので、法律の目的から解釈し直す必要がある。

3.初めから保存の気がないから、面倒くさいから、公共工事だし、高く見積もっている。

その結果、

 

壊してしまう、更地にする。

壊してこの先、どんなメリットがあるというのか…

 

実は、この3つの屁理屈で、古都京都でも重要な文化財として認められていた建築にも関わらず、

壊している例が次々と出てきているんです。

 

これ、大変にびっくりしたんですが

 

国登録文化財を同志社が解体撤去 洋館「フレンドピース」

 

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学校法人同志社(京都市上京区)が、創設期の明治時代に建てられた国登録有形文化財「フレンドピースハウス」(同)を解体撤去したことが19日までに分かった。

木造洋館の好例と評価されていたが、法人が運営する幼稚園の移転新築計画に伴い取り壊された。同志社大今出川キャンパス(同)では、大正時代のヴォーリズ建築「致遠館」の建て替えも浮上。同キャンパスは京都近代化を象徴する校舎群で名高く、法人も積極的に保存活用していただけに波紋を広げそうだ。
 フレンドピースハウスは、同志社創設期のレンガ校舎造りに関わったD・C・グリーンが設計、1887年ごろ完成した。木造2階建ての瓦ぶきで、洋風のベランダなどを備え、建築面積約250平方メートル。2006年に「洋風意匠を基調とした住宅」の好例として国登録有形文化財になったが、老朽化が著しく16年3月で使用をやめていた。

 

マジか!!って思いましたら

 

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マジでした。

壊してました。

 

この建物はですねえ、100年以上の前のものが、つい最近まで同志社大学で使われていたものなんです。

新島譲が同志社大学を設立する前からあったものなんです。

 

5年前のNHK大河ドラマを覚えてらっしゃいますでしょうか?

戊辰戦争の会津城(鶴ヶ島城)攻防戦で、スペンサー銃をもって抗戦した女戦士、山本八重。

綾瀬はるかさんが演じましたよね。

 

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鶴ヶ島城の敗戦の後の、八重の旦那が同志社大学を設立した新島譲です。

 

八重さんの写真は残っていて、このホンワカした風貌に胆が据わっていて凄みがありますね。

 

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▲救世軍の頃

 

そのような、重要な建築物でも壊してしまうその動機はいったいなんのか

 

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御所東と呼ばれる、京都の中でも大変すばらしい場所に位置しています。

 

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同志社のフレンドピースハウスの南にも立派な庭のある邸宅の緑がつながっていました。

 

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どうやら、それごと無くなっています。

 

つづく

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。③

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。②

 

古都、京都ですら古い建物を大事にしていない。

同志社創立者の関連建物ですら壊している…という現況報告でした。

おそらく、同志社大学の関係者は、この機会に古い建物をぶっ壊して、売却したり、ホテルにしたり、

大学経営の強化などという似非大義名分に乗っかって行動しているんだと思いますが、

同志社には、理工学部建築学科を持たない弱みで、デベやゼネコンの営業に、いいようにヤラレテるんだと思います。

世も末でしょう。

ちなみに、この同志社のフレンドピースの南に位置する、梨の木神社。

ここでも、神社の社社殿を維持管理するにはしょうがない…とかいう屁理屈で、思いっきりマンション建ててるヤツラがいまして、

世も末感をさらに押し広げています。

同じような論旨で、下鴨神社でもマンション建設していますけど…。

 

そのような日本全国的な風潮の中で、岩国の本郷村ですが、

そもそも、本郷村のような山奥の集落が、今後どのように共同体を維持していくのか…大変な課題です。

 

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そして、そのような山間の集落に、この庁舎建築のように立派なものが残っていたという奇跡。

 

普通はですね、残らないんです。

 

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ほとんどの行政庁舎は、戦後になって、もっと、くだらねえ感じの、

どこの県や市に行っても同じような、モダニズム系の機能主義建築。

戦前の、お上がエラい系を否定する、何もかもフラットでエラい人など居ません系のオフィス建築みたいなものに成り下がっています。

 

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結果として、地域性とか、庁舎建築に必須の中心性や象徴性を、あらかじめ放棄しているようなものばかりに、なり果てました。

 

つづく

 

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。④

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。②

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。③

 

山口県岩国市の元本郷役場について、続きです。

 

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村の全体像を見ると、街道筋に中国地方の山間部独特の赤瓦の家並みが続いています。

これは、石州瓦といって雪が積もる山陰中心に、岡山、広島、山口の山間部では一般的な施釉された瓦です。

 

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本郷町もこの石州瓦の屋根が混じっていますね。

 

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このように、現在でも街道の雰囲気がなんとか残っています。

そして立派なお寺とかも残っています。

 

こういう建物が何にも残っていなくて、お寺や神社を壊したり移転したりして、

歴史的価値を消滅せしめて地域資産を無くしてしまった場所が日本中、実に多いんです。

無くしただけでなく、はじめから歴史的つらなりを無視したニュータウンなんかも実にたくさん出来てしまっています。

 

そのような、街では望むべくもないような素晴らしい古い建物がつながって残っており、街の骨格が分かる。

それなのに、壊そうとしている元本郷村役場、愚策としかいいようがありません。

 

つづく

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑤

宮崎県に、都城市という街があります。

 

宮崎県でも南の端ですね。

むしろ鹿児島県なんじゃないの?というぐらい、かつては薩摩藩だったようです。

 

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都城盆地という山に囲まれた盆地ですから、いわば京都のような地形ですね。

 

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それでなのかどうなのか、九州南部の地方都市なのに、都(みやこ)と城(じょう)で、都城です。

この都という字は、メトロポリスを表すのではなく、

者には「魔除けされた土手」という意味があり、「阝(おおざと)」と組み合わせられることで、

呪術的に「守られた土地」という意味になり、そこから安全な土地として栄えることから、都市を表すことになったようです。

なので、都城とはいってみれば、都に立つ城のことですから、古代都市として何か必須の条件でも備えていたのでしょう。

かつての九州王朝である筑紫王国が移封されたとか、神武天皇の宮居があったとか、

そもそも日向(ひゅうが)の国という命名からして古代ロマンを誘うわけですが、

 

その都城市、思いっきり名前負けするくらいに、というか豊富な自然に囲まれた農業の国です。

特に、農林畜産業の分野において全国トップクラスを誇っており、多くの食品関連企業が立地しています。

農業産出額の約8割を畜産業が占めていることが特徴ですが、焼酎を中心とした酒造メーカーもたくさんあります。

 

そのような、母なる大地と峻険な山々に囲まれたおおらかな街にこんなトンガッタ建物があるんです。

 

なんだ?これは!と

まあ、思うでしょう、普通。

 

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僕もですね、思いました。

初めてこの建物のことを知ったとき。

えっ?何?これ、蝸牛的なアコーディオン的な、なんか動き出しそうな…

種子島宇宙センターとか軍事基地じゃないの?と。

 

都城市民会館って聞いて?へっ、市民?

いやいやいやいや、これってもっと何か…

こう宇宙的なロボット的な未来的な、マジンガーZとかの機械獣とかの危険な形態でしょ。

SF好きな俺らにはアリだけども、一般市民には無理っしょ、こんなマシン。

 

と、思いましたね。

また、そういうオーラをフルスロットルで、ガンガン放っています。

 

こんな、未来から来たバックトゥーザフューチャーな凄い建築。

これがですね、もはや建設から既に50年を経ようとして、超絶に価値上昇中なんです。

 

世界的にみても…なんです。

 

しかも、これ設計した人、日本人なんです。

 

その人の名は、菊竹清訓。

名前からして、古代王朝の役職とか古代の名著みたいな感じしますよね。

キクチクセイクンではなく、「きくたけきよのり」さんといいます。

 

戦後日本の現代建築の巨匠です。

というか、今をときめく多くの日本の建築家を生んだ人です。

 

つづく

 

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑥

菊竹清訓さんという人はですね、建築家として圧倒的に独自です。

 

日本の戦後の建築界は、戦前にヨーロッパやアメリカに留学していた方々によって、大きな潮流がつくられています。

 

その中でも、フランスの建築家ル・コルビュジェのところに行った方々の系譜です。

 

これは非常に特殊で、本来なら明治維新での近代化の過程での政策が現代までつながっています。

明治政府は各国に働きかけお雇い外国人と連動するように、さまざまな外国のシステムを導入しています。

憲法や医学はドイツを参考にしたとか、軍隊はフランスが中心で、アメリカ人は教師とか開拓使とか、

建築や鉄道等のインフラは圧倒的にイギリスでした。

海運や港湾、運河や河川の水利については、その道の先進国家のオランダで、船員や海軍もオランダでしたが、

後に海軍もイギリス式に変わっています。

 

それくらい、英国贔屓でした日本は。

40年後には日英同盟とか結んじゃうくらいですからね。

 

その英国から日本に建築を教えにきたのが、ジョサイア・コンドルです。

 

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鉄道を教えにきたのがエドモンド・モレル。

 

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モレルは来日して2年目には結核で亡くなってしまい、その意志を継いだのがジョン・ダイアックです。

 

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彼らの設計した多くの建設物がいまだに現存しているのは素晴らしいことだと思いませんか?

 

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コンドルは工部大学校(現・東京大学工学部)の教授でもあったことから、明治以降の日本の建築家を数多く育てています。

片山東熊 、辰野金吾 、曽禰達蔵、佐立七次郎、渡辺譲、久留正道、河合浩蔵、新家孝正、滝大吉、妻木頼黄、桜井小太郎といった、錚々たるメンバーです。

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この時代の建築は、関東大震災とその後の火事、太平洋戦争のときの都市爆撃による空襲によって、多くのものが失われてしまっています。

また、せっかく残っていたのに戦後の高度成長期に再開発等で失われたものも多いです。

 

日本の工部省(建設とインフラを合わせたような省庁)は、ほぼ英国伝授のエンジニアリングの伝統が続いています。

彼らの世代が現代まで続く日本の近代化の屋台骨をつくりました。

 

その明治維新から50~60後の大正年代に登場したのが、ル・コルビュジェを中心としたモダニズム建築運動なんです。

 

コンドルの弟子たちの孫世代にあたる建築家、前川国男がコルビュジェの事務所に入所したところから、日本の近代建築の流れが大きく変わります。

 

つづく

 

 

「ボルトがない!」で建設パニック⑥

「ボルトがない!」で建設パニック
「ボルトがない!」で建設パニック②

「ボルトがない!」で建設パニック③ 

「ボルトがない!」で建設パニック④

「ボルトがない!」で建設パニック⑤

 

ご無沙汰しております。

「ボルトがない!」の続きです。

 

 

もうですね、森山!ブログ更新しろよ!との声が大きい。

ボルトの続き書けよ、とか

卸売市場法のこともはやく最後まで書けよ、とか

菊竹清訓の都城市民ホールのことも早く書けよ、とか

 

書きますよぅ!

 

でも、最近書くものが増えてんですよ。

それに加えて、メルマガも毎週月曜日に送らなきゃいけない。

 

そうなんです。

メルマガも始めたんです。

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https://www.mag2.com/m/0001685317.html

 

書かなきゃいけないものだらけで、ブログ更新がついついおろそかになっておりました。

すいません、で、ボルトの話です。

 

年明けからいろいろと関係者の方々のお話を聞いてまわってたんですね。

鉄工所とか、建設会社とか、設計事務所とか、行政の方とか、官僚の方とか、不動産関係者の方とか。

で、それぞれの立場で状況への理解が違う。

ま、当たり前といえば当たり前なんですけどね。

 

戦況でも、戦場と本土では状況への理解度や緊迫度が違うのと同じ。

戦場でも、最前線と作戦本部では戦闘中の状況判断が違うのと同じ。

 

しかしながら、それでは、大変危険です。

目的と行動を全軍が理解していなければ敗けます。

もしくは一軍が暴走して混乱を生じ、後の外交解決に支障をきたすこともあります。

 

だから、戦術学でもその基本作業を明確に分けてあります。

戦術とは、つきつめれば「問題解決能力」であり、次の3つとされています。

 

1.状況判断:自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断すること

2.意思決定:わが軍が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定すること

3.作戦計画:下された決定を実行するために作戦方針を作成すること

 

1.の状況判断は、任務の分析、地形の判断、敵情の判断に分けられます。

任務の分析

自分に与えられたを分析し、達成すべき目標を明確化、複数ある場合には目標の優先順位を決める。

地形の判断

自分が置かれている地理的環境を分析し、戦闘地域を構成する地理的特性を解釈、重要な地形や接近経路を明らかにする。

敵情判断

敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線を分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討する。

 

2.意思決定は、可能的な状況を個々に分析し、それらの統合的な状況判断に基づき、行動方針を下すことですね。
可能性のある状況

これは自らと相手の実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在します。

個々に分析
これらを個々に分析し個々の戦闘行動によって生じうる結果を検討します。

総合的判断

分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら最も危険性の高い事態を明らかにすると同時に、任務を達成するための戦闘行動を選択肢を限定していく。
行動方針の決定
少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定する。

決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。

 

3.作戦計画とは目標を達成するために採用される行動方針、参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立します。
そして、目標を具体的な状況として定義することが重要です。方針が示されたら、その具体的な達成条件は何をもって判断するかを定義しておかなければなりません。そして、作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進める必要があります。

 

以上は、軍事学における戦術論からの引用ですが、ボルト不足で建設パニック!も、

その解決のためには、まずは状況判断の共有が、すべての人々になされないとダメです。

 

ボルトがない!と何が起きるのか?

ボルトがない!はいつまで続くのか?

ボルトがない!にどう対処すべきなのか?

 

年明けから徐々に報道もはじまりました。

まあ、私がいつものごとく、先取り情報交換会を開いていたからなんですが

 

口火を切ったのは、経済紙の週刊ダイヤモンド

2019.2.27
 「ねじ不足」でラグビーW杯ピンチ!?人手不足に次ぐ建設業界の受難
 週刊ダイヤモンド編集部  松野友美:記者 

 

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今秋開催されるラグビーワールドカップで会場の一つとなる「えがお健康スタジアム」(熊本市)で、大型ビジョンの鉄骨土台の建設が止まっている。

原因は業界が「まさか足りなくなるわけがない」と思っていた小さな部材、ねじにある。

 橋や高層ビル、細長いオフィスビルなどの鉄骨をつなぐ鉄鋼製の高力(ハイテンション)ボルトと呼ばれるねじの不足が、全国各所で工事を遅延させているのだ。
不足は昨夏ごろから始まった。10〜11月時点では、高力ボルトを扱う会社の8割以上で工期に影響が出ていた(国土交通省の調査)。

そこで、年末に国交省が買いだめを控えるよう業界に要請したが、改善に時間がかかっている。

 国内にはボルトメーカーが十数社あり、商社や問屋を通してゼネコンに供給される。

平時では、先々の分を注文する方法と、問屋が持つ在庫を供給するルートがあるが、後者の在庫がなくなっている。

本来は発注から1ヵ月半程度で届くはずが、半年近く待たされるケースも出ているのだ。

 部材の調達力がある大手や準大手のゼネコンは「発注を前倒ししているので工事に影響はしない」と口をそろえる。

実害の中心は中小ゼネコンや、他業界の会社が自前で納入工事をする場合だ。

 

 

 

つづいて、週刊プレイボーイ

建設現場でパニック続出!「ボルト不況」がやってくる?

 

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建築用のボルトが足りず、工事が中断したり、施工計画が頓挫したりする事態が各地で相次いでいる。

建築エコノミストの森山高至(たかし)氏がこう話す。

「不足しているのは鋼材同士を接合する『高力(こうりき)ボルト』。建築物の骨組みを組み立てる際に欠かせない部材です」
 
高力ボルトは高層ビルやタワーマンション、店舗物件など、鉄骨造の建築物には幅広く使用されているという。

関東圏の中堅建設会社の幹部A氏が明かす。

「高力ボルトは通常ならキロ300円程度、注文後1週間ほどで調達できますが、昨年秋頃から日ごとに納期が延び、単価も上昇。11月にはキロ400円近くまで高騰し、数量を確保できなくなりました」

ボルト不足の要因は複合的だ。前出の森山氏が解説する。

「最近は建設需要が活況を呈す一方、高力ボルトの母材である特殊鋼線材は自動車や建機、造船にも使われるため、大手鋼材商社は利幅が低い建設業界への供給を後回しにしがちです。

また、特殊鋼線材を造る製鉄所の高炉数はピーク時から半減。現存する高炉も老朽化がひどく、近年はトラブルや事故が多発して出荷量が落ち込んでいます。

さらに、昨年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震では、室蘭市にある日本有数の特殊鋼の工場が被災し、操業が一時ストップしました。こうして昨年の秋口から"ボルト不足"が顕著に表れ始めたのです」

 

国土交通省が昨年秋にメーカーや建設業者などを対象に行なった緊急調査(有効回答:305社)によれば、高力ボルトの納期は6ヵ月程度まで長期化。「工期に影響が出ている」とした会社は8割にも及んだ。

 

この異常事態を受け、同省は発注を抑えるよう建設業界に異例の要請を出すに至ったが......。前出のA氏が言う。

 

「その後、大手鋼材商社がボルトメーカーから高力ボルトを買い占めました。大型案件を請け負うスーパーゼネコンに優先的に回すためでしょうが、そのせいで市中にボルトが出回らず、納期はさらに長期化。今年に入ると、問屋からは『ウチもメーカーから発注を止められている。年内に出荷するのは厳しい』と......」

 

その結果、建設現場ではいま何が起きているのか。

「ドラッグストアのような小型物件でも数千単位の高力ボルトが必要ですが、そんな数量は確保できず、依頼が来ても引き受けられません。すでに着工が決まっている案件でも、建材も機械も職人もそろっているのにボルトがなく工事に着手できない、という事態が起きています」(A氏)

そんななか、高力ボルト市場は"闇市"と化していた!

 

「メルカリなどのフリマアプリでは、相場の10倍もの価格で高力ボルトがバラ売りされています。それでも『あと100本あれば竣工(しゅんこう)できる』というような業者は購入せざるをえないのです」(A氏)

 

ボルト不足で混乱を極める建設市場。今後はどうなる?

 

「国交省の統計では、昨年1年間に建てられた建築物は約60万棟、市場規模(工事費)は約27兆円。そのうち鉄骨造の割合は4割(約11兆円)にも及ぶ。つまり、現在の建設業界は鉄骨造がメインで、その骨組みを高力ボルトが支えている構図です。

ボルト不足が長引けば、建設業界、ひいては日本経済に大きな打撃となります」(前出・森山氏)

 

"ボルト不況"、到来間近か?

 

この記事でコメントしていただいているA氏とは、年明け早々にお会いして鉄工所の様子を聞いたんです。

 

つづく

 

「ボルトがない!」で建設パニック⑦

ボルト不足問題について、現状を余すことなくお話した記事が、日本工業新聞社の埼玉建設新聞に掲載されました。

 

建設業界の声を代弁№3高力ボルト不足【上】/森山高至建築エコノミストに聞く

2019年4月10日 埼玉建設新聞

 

【まさに緊急事態】

行政はもちろん、銀行・建設業界・一般人など社会全体が早急な理解を--。現在、鉄骨造に欠かせない高力ボルトが不足していることをご存じだろうか。2018年夏ごろから起きた地震や大雨の影響により、高力ボルトの原料供給と製造が遅れだしたことに端を発する。納品が徐々に遅れ、3月時点では10カ月待ちとなっている状況だ。そこで建築エコノミストの森山高至氏へ問題について語ってもらったほか、県内外の建設企業を取材した。業界の声を代弁する形で全3回に分けて緊急連載する。

事態を大変危惧


【倒産もありうる】

 この事態を大変危惧しています。高力ボルトの不足は、さまざまな問題へ波及する可能性が十分にあるからです。例えば、受注したけど納品できない、何とか納めようとして無理をするなどです。最悪のケースは資金回収できず、倒産する業者が出てくるかもしれません。もはや元請けゼネコンが下請け業者に「何とかして」と言うだけで、何とかできる段階ではないと感じています。
 高力ボルト不足の問題は建設業界だけでなく社会全体に波及します。先ほど挙げた事態が起きる前に社会全体へ事実を周知し、世の中の人ができるだけ早く状況を理解しなければなりません。

 

【直前発注が通常/ボルトは生もの】

 高力ボルトは、注文すれば1~2週間ほどで手に入るのが一般的な感覚です。高力ボルトがなければ全工程が遅れるので、下請けは、元請けから「何とかして」と言われ、納品在庫をかき集め始めたのが18年12月から1月にかけてです。最初のうちは、知り合いの業者から融通してもらったり、「メーカーが不揃いでも大丈夫か」と設計や元請けに相談したり、それこそ「何とか」対応していました。
 「鉄骨と同時期に注文したらいいのでは」と思うかもしれませんが、高力ボルトは金属でありながら”生もの”に近いところがあります。高力ボルトには塗料や薬品などの防錆処理が施されているのですが、時間経過とともに劣化してしまいます。劣化によって錆びたり、想定より締まらなかったりすると、規定値を下回る可能性があります。つまり”生もの”のように、なるべく新鮮な高力ボルトが良いのです。
 そういった意味で、すぐ手に入ることと相まって、直前に注文することが一般的でした。

 

【原因は地震・大雨/現在10カ月待ちも】

 前提として社会全体で工場が減少傾向で、高力ボルトの製造会社は近年、余剰在庫を抱えないよう生産調整を行っています。さらに昨年の夏ごろにかけて、原料の特殊鋼を供給する工場が北海道胆振東部地震の被害を受けました。しばらくの間、操業が停止し、原料供給の遅れにつながっています。さらに大阪や広島などで発生した地震・大雨で高力ボルトメーカーの工場が被災し、高力ボルトの製造がしばらく停止となりました。
 供給が遅れ始めた夏ごろは、問屋の在庫で対応していました。しかし10~11月になると「不足している」という話が出てきて、現場では高力ボルトのかき集めが始まりました。発注から納品までの「待ち」もどんどん延びている状況で、年明け1月時点で6カ月待ちだったのが、3月時点で10カ月待ちとなっています。中には注文を受けないケースもあるそうです。

 

【まず情報整理を/銀行次第で不況】

 この事態を把握していない建設会社、設計会社がまだいるのが実情です。ゼネコンなどは、いち早く察知して購買部に対応を取らせています。国の動きとして国土交通省は昨年末に、日本鉄鋼連盟や日本建設業連合会など業界団体へ冷静な対応を要請しました。
 国交省はいわば”買い占め”を止めるよう促した訳ですが、品物がないので、買い占めたくても買い占めれない状況です。むしろ、在庫を抱えている企業は、在庫情報を出して供給する必要があると感じています。さらに言えば、業界全体で間に合う工事・間に合わない工事を整理・情報化し、優先順位をつけるべきだと感じています。
 建て主が我慢すればいいだけの案件もあれば、金融機関の融資が絡む案件もあります。例えば、いくつもの企業が投資したにも関わらず、半年~1年も工期延期となると、金利や家賃設定などの計算が変わり、黒字だったものが赤字になる可能性もあります。その状況で銀行が「何とかして」と言い始めると大不況になるかもしれません。

 

 

 高力ボルト不足について、建築エコノミストの森山高至氏は「深刻な状況が社会的によく知られていない」と話す。施工者が納品できなければ、資金繰りに行き詰まる可能性がある。事態が悪化する前に、建設業界は早急に立ち上がらなくてはならない。行政も非常事態を社会全体に周知することで「担当者の責任ではない」という環境作りが急務といえる。加えて銀行や不動産などへ理解を得ることが肝要となってきそうだ。

 

【約4割が鉄骨造/先手打つ施策を】

 このまま行くと五輪前に建設業界が危ない気がしています。と言うのも現在日本で建てられている建物の多くが鉄骨造です。国交省の統計では、昨年1年間にできた約60万棟の市場規模約27兆円のうち、約4割の約11兆円に当たるほどです。工事もあって仕事も決まっている。しかし納品ができない状況だと、お金が止まるので大変なことになるのではと危惧しています。
 施工者の資金繰りが困難になると、寝耳に水な施主はパニックになってしまいます。騒ぎが大きくなる前に政府はできるだけ早く先手で施策を講じ、情報を開示し、社会全体に事態の深刻さを理解させる必要がある段階だと思います。
 対応が後手に回ると、4月からの仕事が欲しい企業は「ボルトがなく、注文を受けれない」と言えないまま受注してしまうケースが出てきます。すると契約書を元に銀行で融資を受けながら、着工時にボルトがなく完成が遅れることが既に分かっている企業もいるでしょう。

 

【問題周知が急務/担当は責任なし】

 公共工事の担当者は、完成が予定より遅れれば、評価がマイナスになることを恐れます。よって行政は、非常事態を内外に認めて、担当者が責められない環境を作ることが急務です。担当者の責任ではないという状況を作らなければ、評価マイナスを避けるため、「できます」などの報告を挙げ、現場がさらに混乱することも予想されます。
 そのような最悪な事態を避けるためにも、行政は状況を把握すると同時に内外に向け、不可抗力で工期が延びることを周知する必要があります。特に公共施設は庁舎や病院、学校など重要な施設が多いです。よって建て替えなどの場合、既存施設の解体時期を遅らせるなど計画を見直す必要があります。さらに高力ボルトの単価が高騰しているため、工事費の見直しは必須となります。

 

【渋滞に近い現象/緊急融資制度も】

 仮にまだ在庫を抱えている企業があるとすれば、業界を挙げて数を把握して日本全体で優先順位の高いものから順次配給できるか検討するべきです。配給を進める途中で、高力ボルトの生産も間に合ってくると思います。製造メーカーに聞いたところ、現時点では請け負える量を超えているそうです。しかし問題が落ち着いた時を見据え、機械は増設しないそうです。
 また今回の問題は、生産不足の面がありますが、渋滞に近い現象と捉えています。例えば、ボルト不足を察した企業が昨年10~11月ごろ、必要数より多めに発注しているかもしれません。よって業界は、本当に足りないのか現状個数や多め発注数を正確に把握し、国・地方自治体・銀行・一般人など社会全体へ周知を図るべきです。
 工期が延びたり、優先順位の高い工事から外れたりした場合、緊急融資などの制度を設けて救済措置を講じることが必要となります。そのような手立てがないと、業界全体が危なくなると危惧しています。

 

【数社は受注停止/業界は協力のとき】

 高力ボルトメーカー数社からは既にフル稼働でも追い付かないため、受注をストップしたという話を聞きました。また原料の特殊鋼が車業界と取り合いになっています。業界を跨ぐ事案なので、国交省が間に入り、うまく調整する必要があります。今こそ建設業界の川上から川下まで一丸となって協力すべきときです。

 

つづく


「ボルトがない!」で建設パニック⑧

昨日のことですが、以下の記事が出ました。

 

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日刊建設工業新聞ブログ

昨夏以降に全国で顕在化した工事用「高力ボルト」の不足問題が深刻化している。国土交通省は3月、メーカーやユーザーを対象に2回目の需給動向調査を実施。約9割が「工期に影響がある」と回答した。同様に回答したのが83%だった昨年10~11月の初調査時点に比べ、変更や延長といった工期に及ぼす影響が大きくなっている事態が浮き彫りとなった。

 12日に行われた衆院国土交通委員会で、国交省の野村正史土地・建設産業局長が井上英孝衆院議員(日本維新の会)の質問に対する答弁で明らかにした。需給動向調査結果の詳細は集計中という。野村局長は経済産業省や高力ボルトのメーカー、ユーザーのファブリケーターといった関係者と協議し、需給安定化に向けた新たな対策を検討しているとも説明した。

 国交省によると、高力ボルトが不足する主な要因には、全国的な大規模建築プロジェクトの増加に伴う鉄骨需要の増大に、ボルトの生産が追い付かない状況があるという。

 

記事引用ここまで

 

12日の国会で 井上ひでたか議員が国土交通省で質疑された様子は動画でも見ることができます。

井上英孝(日本維新の会) 国土交通委員会 2019.4.12

 

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井上議員:「一連の高力ボルト不足について、国土交通省としては、

現状どのように分析し認識されておるのかお聞かせください。」

 

国土交通省からは、野村土地建設産業局長が登場

 

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野村局長:「えー、まずご指摘のハイテンションボルトですが、

高力ぼるとは、こうりょくぼるととも、こうりきぼるととも呼ばれておりまして、

私はこうりきぼるとでいかせていただきます。」

 

「去年の10月には、こうりきぼるとの不足の問題は把握しておりまして…要因といたしましては、

昨今の(建築における)鉄筋コンクリート造から鉄骨造への工法のシフト、

オリンピック等の建設需要の増大からくる在庫不足の中で、多めの発注等も起きていると認識。」

 

井上議員:「現在の日本の工事においてですね、こうりきぼると、どれくらいの工事において影響が出ているのか、把握されてますか」

 

野村局長「昨年の10月の調査においては83%の業者で工事の遅れの影響が出ている、

本年3月の調査まだ分析中ですが、9割の業者で影響が出ており、

国土交通省ではボルトの工期設定やボルトの早期発注において注意喚起をおこなうとともに、

建設関連団体を通事、需要に関して計画的発注を、供給側に対しては経済産業省と連携し、

安定供給に向けた協力を要請したところであります。」

 

井上議員:「昨年の夏からいえば、10ヶ月くらい経過しており、もう少しスピード感もってですね、

10月に調査して83%、要請して、3月に調査して9割と、要請しただけでは十分な効果が出ないのではないかと、

国土交通省の見解、今度どのようにこの状況を解消していくのか

 

野村局長「3月に…これまでの効果を確認するために二回目の調査をしたところでありまして、

依然として受給は逼迫は継続しておりまして、10月の調査の時点よりも長期化している

なんらかのさらなる対策を講じる必要があると考えてる次第です。」

 

この4月5日は、鉄鋼メーカーやファブリケーター、経済産業省も含めた意見交換の場を設けて、

こうりきボルト受給調査結果の共有、意見交換結果も踏まえながらなんらかの対策ができるのか、

現在、検討しているところでございます。」

 

井上議員:「この答弁を聞いていると、悪化している。気付いたときよりも工期の遅延がひどくなっているし、ボルトの納期も延びてる。

経済産業省にお聞きをしますが、毎月の1万トン程度にとどまり、供給が追いついていない、

原料の特殊鋼線材は必要量の確保も簡単ではない

建設業界の需給逼迫について把握されてるのか、メーカーの増産を考えるべきではないでしょうか」

 

 

財務省の広瀬大臣官房審議官が登場

 

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広瀬審議官:「ボルトメーカーはすべてを合わせましても、月産1万トンということで、10月の調査結果をもとに、

11月26日、国土交通省と連名で安定供給に向けて要請をし、ボルトメーカー各社は工場の24時間稼働、

一部製造の外部委託も進めているときています。」

 

井上議員:「ある程度、ボルトメーカーの数は把握していると、しかしながらファブリケーターのとこに作った数がどえくらいいっているのか、

流通の間にはいっている商社や問屋における数についても、把握の必要がある。

気付いてから、さらに納期含めて悪化するということは看過できない。

オリンピックの後にはですね、万博や大規模な再開発も控えておりますので、非常に大問題と思います。」

 

井上議員:「メーカーは過去の元気の時代のない時代もありますし(急に設備投資は躊躇するでしょう)、製造もフル可動で頑張っておられると、それらのボルトが、どのようにキッチリ市場に流れているのか、のみならず、原因を一日でも早く解明し、早く手を打ってほしいと思います。

同時に、建設現場から必要以上の注文が殺到し、価格も高くなったという話しも聞きます。

3万円上がり、さらに1万円あがったと、これはトンあたりということでしょうが、

増産がままならない、状態であるならば、海外からの輸入ということも考えなくてはならないでしょう。

当然キチンと規格を受けたものでなければならない。」

 

野村局長:「ボルトの場合はJIS規格か国土交通大臣認定を必要としています。

トルシア型こうりきボルトの認可を持つ外国メーカーは韓国のドンア社が唯一でありまして、

JISについては、中国、韓国に3社、ドンア社製の高力ボルトはすでに国内で使われていると確認しております。

しかしながら、ファブリケーターからの重複発注や水増し発注もあると聞きますので、

まずはこの物流の整流化が必要で、今後市場の各プライヤーのふるまい、メーカー増産の設備投資、輸入の増加についても

引き続き調査し把握しなんらかの対策を打っていきたいと考えています。」

 

井上議員:「野村局長、早口でありがとうございます。財務省の広瀬さんもよろしくお願いします。」

 

 

 

というわけで、高力ボルトの問題が初めて国会で議論されました。

 

現状では、調査し把握し調査し把握し把握し調査し、分析しまして、

調査し把握し調査し把握しひきつづき、把握し調査し、把握し把握しているところでございますけれども、

ひきつづき

なんらかの対策を検討し調査し把握し調査し、なんらかの対策を検討しているところでございますけれども、

ひきつづき把握していきたいと思います。

 

という状態あるということです。

 

 

 

 

 

「ボルトがない!」で建設パニック⑨

『週刊 鋼構造ジャーナル』という鋼構造業界誌があります。

鋼構造出版というまさに鉄骨造一点押しの出版社さんですが、その鋼構造ジャーナルでも高力ボルト不足の特集記事が組まれました。

 

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鋼構造ジャーナル記事詳細
2019年4月8日号 NO.1921
●『買い押さえ』の動きでひっ迫感増す/高力ボルト「調達難」の現状
●大城工業(静岡)など計10工場が認定取得/全鉄評
●推定鉄骨需要量は約38・3万㌧/国交省2月着工統計
●「建設技能人材機構」が発足/理事長に才賀清二郎氏が就任
●冨田康光氏が功績賞受賞/「第49回日本溶接協会賞」
●第3工場竣工で披露と神事/石垣鐵工(秋田)
●「鉄骨技術フォーラム18」Q&A/⑨屋外露出鉄骨の糸面取り
●鉄構・関連各社の入社式/横河ブリッジHDほか
●関東版
●中部版
●高力ボルト入手難の影響を懸念/全鉄連・経産省ヒア

高力ボルト「調達難」の現状
『買い押さえ』の動きでひっ迫感増す
需要家側の冷静な対応がカギ
 建築鉄骨や橋梁で使われる高力ボルトの調達難は依然改善されず、
鉄骨需要の先行きにも影を落としている。
高力ボルトの〝枯渇〞がクローズアップされ、納期長期化の問題が急浮上した昨夏以来、
ファブリケーターやゼネコンなどの需要業界内に混乱が広がる一方だ。
スポット発注の場合、ボルト納期は依然6〜12カ月と異例の事態が続く中、
「物件の工期に合わせてタイムリーに購入できない」
ことによる需要家側の焦りと不安から混迷の度は深まるばかりで、
品薄状態の解消の見通しは立っていない。

 

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「盗伐」の真相

「盗伐」って言葉、聞いたことありますか?

とうばつ?

盗み?伐る?

何それ?って感じだと思います。

 

私もはじめて聞いたとき、ああ、タイとかベトナム、ミャンマー、ラオスの話しでしょ?と思いました。

実際、かつては、インドシナ半島では、チークの不法伐採がすごい問題になってました。

 

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当時、そのほとんどが日本向けということで、国際問題にも発展していて、

不法な伐採が原因で山の保水力や地耐力がなくなり、

1988年の大洪水の際には、災害によって多くの村々で数百人におよぶ被害が出て、

タイ政府はチークの伐採を全面禁止にしていました。

 

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山の中を象を使って運ぶんですよ。
象がチークを降ろすときに鼻で持ち上げたり背中に載せたり、足で引き摺ったりするんですが、

木の根元に穴を開けて鎖でつないでいたみたいです。
ある日の斉藤ジムショ

 

当時の熱帯林業に関する研究者による技術情報誌『熱帯林業』(その後『海外の森林と林業』に改称)。

において、研究者の増子博さんの盗伐のレポートが凄いです。


増子博
1941年山形市生まれ。宇都宮大学農学部卒業後、上級職として林野庁に採用され、
本庁、旭川・秋田・前橋・東京・熊本の営林局管内で森林管理業務に従事。
また、国際協力事業団の森林環境専門家としてミャンマー、タイ、フィリピン、ケニアに長期派遣、
および同事業団の国際協力専門員として海外20数カ国で活動。東京大学・宇都宮大学の農学部非常勤講師。技術士(林業)

国際緑化推進センター

 

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山道で「盗伐団」に遭遇…って書いてありますよね。

盗伐の実態を調べることは大変難しいことであり、余り首を突っ込むと生命の危険さえある…とも書かれていますよね。

 

それはですね…タイ北部というのは別名ゴールデントライアングルといいまして、

ケシの一大産地であり世界最大の麻薬密造地帯だったんですね。

 

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このミャンマー、タイ、ラオスが接する山岳地帯はメコン川も流れていますが、

その水運利用にもより、麻薬と、チークの産地と、関わる人達と、出荷方法は完全にカブっていたんです。

 

そして、これら違法な麻薬の収益は、このゴールデントライアングル周辺の様々な勢力の収入源ともなっていました。

犯罪組織というか反政府ゲリラや少数民族、反政府活動家や亡命政府といった面々です。

 

国境はありますが、山の中のジャングルの中の、道なき道をたどるような場所です。

なので、非合法の木材であっても、いやいや禁止されてるタイじゃなくてラオス製だよ、いやいやミャンマーのだよ、

ベトナム軍が基地や道路の工事でやむなく伐採した合法なものだよ、といろんな言い訳が通っていた。

それだけじゃなく、裏では、実は各国政府の軍が簿外収入として取り仕切っていた、とも言われています。

 

私が、20数年前ベトナムやタイに家具や建材の発注やら買い付けに行っていたときも、

タイではチークは伐採禁止になっているににもかかわらず、どこやらから出回っていましたね。

もちろん原木ではなく、フローリングや角材に加工されていましたが。

 

とまあ、それくらい「盗伐」といえば、ヤバイ話しなんですよ。

 

現在でも南米とかアフリカとか、そういった発展途上国や、内戦やら近隣諸国との緊張感の中で、

不安定な政府や、反政府勢力の資金源につながるような、そういうものが違法伐採、盗伐なんです。

 

ちょっとしたコソ泥感覚では実行し得ないはずなんです。

なぜなら、伐採のための工具や重機、運搬のための重機や搬送車両、そして大勢の作業員と運営する組織が必須。

そして、そこまで物理的にやれたとしても、次にはこの違法伐採された木材を捌かなくては、

商社的機能をつかって、市場に持ち込まなくては、流通に載せなければ換金できませんから…

かなり、大がかりになる。

 

今の法治国家の日本で!そんな、ことが!まかり通るわけがない!はず!

と思っていたし、そう思いたい…

 

ところが…なんです。

 

まかり通っているようなんです、盗伐。

山の樹木の盗み。

勝手に他人の山の樹木を伐採して、

どこかに売り捌く。

 

どこだよ!そんなゴールデントライアングルみたいな場所!

隠れてこそこそ樹木伐採し、人目を盗んで搬出できるなんて!

原生林の奥深い山とか、諸島部か、深夜作業で?と思いましたよ。

 

ところが、案外、人里近いところで、白昼に堂々とおこなわれていました。

しかも、そんなに山奥でもないし、無人島でもありませんでした。

 

それは、宮崎県でした。

そして、盗まれたはずの木が、堂々と市場にも出回っていました。

 

そして、宮崎県はそもそも杉の生産で第一位なんです。

また、日南の杉は「飫肥杉」としてブランドでもあります。

 

飫肥杉は江戸時代初期に藩主が藩の財政立て直しのために植林を奨励し、産み出した地域の名産品です。

その木は通常の杉よりも油分を多く含み、水を吸いにくく、軽量で強いいことから造船用として重宝されました。

そんな伝統のある場所です。
 

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天井材とかで使われる幅広で薄く割いても反りにくい「秋田杉」で有名な、秋田県を抜いて、

1990年から、ブッチぎりの1位なんですよね。

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そんな名産品が杉である宮崎で盗伐?ちょっと首をかしげたくなるんですよね…

 

つづく

 

 

 

 

 

「盗伐」の真相②

宮崎で盗伐?というニュース、

昨年の時点で国会でも問題にされていたようなんです。

が、あまり大きな話題になっていなかった。
徐々に報道されるようにもなってきましたが…

 

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西日本新聞 2019年02月17日

盗伐防止へ履歴「見える化」 スギ流通QRコード管理 丸太生産日本一 宮崎県が全国初導入


所有者に無断で木を伐採する「盗伐」に悩む宮崎県は新年度から、QRコードで木材の生産履歴情報を一元管理する実証実験に取り組む。
同県は日本一のスギ丸太生産地。
どの業者がどの山でどれぐらい伐採したかを追跡できる仕組みで抑止につなげる。
林野庁によると、都道府県主導の木材のトレーサビリティー(生産流通履歴)制度は全国初という。
森林所有者や伐採業者は事前に市町村へ「伐採届」を提出することが義務付けられており、問題がなければ適合通知書が交付される。
宮崎県はスギ丸太生産量が1991年から全国1位だが、近年は許可された範囲以上の伐採や書類偽造など、違法行為が相次いで発覚。
いったん流通すると、合法的に切り出した木材との区別が難しく、行政のチェック態勢強化を求める声が上がっていた。
実験ではモデル地区を設け、自治体や林業関係者らが協議会を設立する。自治体はQRコードの入った適合通知書を発行。
伐採から原木市場、製材工場、工務店まで、各段階で流通履歴をデータ入力していく。
所有者らが異変に気づいた場合、QRコードで確認すれば業者名から伐採場所、面積、樹種、切り出した量、在庫量などがすぐに判明する仕組みだ。
県は新年度一般会計当初予算案に関連費1千万円を盛り込んだ。実験後、自治体や宮崎大農学部などが効果を検証する。
宮崎では、戦後早くから植林が進んだことに加え、温暖な気候で成長が早く、多くの森林が全国に先駆けて伐採期を迎えている。
県山村・木材振興課みやざきスギ活用推進室は「流通履歴を『見える化』し、行政や林業関係者が互いにチェックすることで盗伐がやりにくくなる。
将来的には県全域に広げたい」と話している。

 

記事引用ここまで

 

ふ~ん、なるほど、盗みを抑制させるために、一本一本の木に、タグかチップか付けて管理して対策ね、

ふ~ん、、ちゃんと対応してんのね、ってこの記事をパッと見ただけでは思ってしまう、むしそう思わせるように書いている。

 

ちょっと待て、この記事、ほとんどの人が林業とか山のこととか知らないから、

適当に綺麗事書いておけばいいだろ?って、
しかも、盗伐を取り締まるのではなく、「QRコードで管理する実験」をおこなう?

 

所有者らが異変に気付いたときにQRコードで確認すれば…って、

所有者らが異変に気付いたときっていうのは盗まれた後なの!しかもそのQRコード誰がどうやって付けるんだよ?

一本一本の樹に山の中に入ってつけるのか?その費用はどうするんだ?
それに盗んだ後そのコードなんか剥がせばいいだけでしょ?

 

万引き犯人がタグ切って質屋やブックオフに持って行かれたら終わりでしょ?

なんで、万引きの現行犯で捕まえないんだ?

って疑問なんです。

 

当然、盗伐なんてやってたら、即、その場で逮捕!って思いますよね。

ところが!その山の持ち主が、盗伐の現場を目撃して!こらー!!何やってんだ!って警察に通報しても、

警察はなんにもしないんだそうなんです。

 

この件で現地に取材をされているジャーナリストの横田一さんの動画があります。

【横田一の現場直撃】宮崎の盗伐/愛媛、大洪水の原因 20181211


横田一さんといえば、

今村復興相に原発事故の「避難者は自己責任!」と言わしめ、

小池都知事の希望の党を、「排除」で瞬殺せしめたという意味では、


あの圧政で民を苦しめた始皇帝暗殺で中国の歴史に名を残した荊軻も真っ青という、

小池百合子の首相への野望を粉砕したという意味では張良、

本人自らの言葉で鉄槌を小池の乗る車に投げつけたという意味では滄海力士、

一人二役で実際に希望の党を雲散霧消させてしまったという実績をもつ正真正銘のアサシン。

 

とまあ、私はネットのニュース番組でお目にかかったことがありまして、実際にお会いすると理系の研究者か、

気の良いエンジニアって雰囲気なんですが、

 

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なぜか、メディアに登場すると、サングラスかけられています。

 

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その横田さんから、盗伐の現場の状況を教えられたんですけど、この山の上にある重機と転がっている丸太。

これ、全部、他人の山に勝手に入って樹を切ってるところなんだそうです。

 

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実際に、盗伐団と出っくわしているそうなんですが

 

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樹を勝手に切るだけでなく、搬出するための道路まで、勝手に作っている。

他人の山なのに。

 

で、現行犯で警察呼んでもなにもしてくれないそうなんです。

 

なんで!って思いますよね。

実際に山の持ち主の方に私も会ったのですが…

 

犯人が「間違って切ったものであって…、無断で切る気もなかったし…」といえば

 

ああ、

間違って切ったのじゃったら、そらてにゃわんねえ。
悪気はなかったんだから。
じゃあいうわけでおとがめはなしだね。

 

ということで、リリースなんだそうです。

 

はあ?って、アゴが外れそうになるくらいに、驚きました。

 

つづく

 

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑦

だいぶ、間が空いてしまいました。

ここんとこ、メルマガなんかを発行し始めてしまったがために、

文章を書くならメルマガを優先にしなきゃ、その前に依頼されている雑誌の原稿や書籍の原稿を優先しきゃ、

ということで、ブログに書かなきゃいけないことはたっくさんあるんですけど遅くなりました、すいません。

モダニズムの名作がまたしてもピンチ!世田谷区役所を壊すんじゃない、という話しをします。

 

その前に、建築家の前川國男さんの続きです。

 

前川さんは、

こんな、雰囲気。

映画監督みたい。

はい、カットー!!と俳優に指示を出してそうなところ。

 

田舎の厳格な校長先生みたいなところと、ハイカラなところが同居していますね。

 

 

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新潟のご出身ということですが、お父様が内務省の土木技官であったことで、

東京の小中高校を卒業されて1928年(昭和3年)に東京帝国大学の建築学科から、パリのル・コルビュジェの元に、

留学ではなく就職されています。

その後、1930年に帰国され、レーモンド事務所を経て、ご自分の事務所を開設。

 

なぜか、青森県の弘前にて、我が国最初のモダニズム建築ともいわれる、

木村産業研究所(建物は現存し、弘前こぎん研究所として使われている)を、27歳でサクっと設計完成されています。

この建物は登録有形文化財としても登録されています。

 

1932年(昭和7年)完成です。

日本初のモダニズム、文化財、と、聞くと、どんな建物なんだろう…とワクワクしますが、

 

 

 

 

こんなんです。

 

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普通?

 

 

 

って思うでしょう。

 

 

今の人達、現代の我々から見れば、普通過ぎる、公民館過ぎると…

 

違うのです。

当時の弘前の街並みといえば、まだこんな風景です。

日本中、こんな感じだろうと思いますが。

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瓦屋根が並ぶ街並み、素材も板張りか漆喰か、灰色から焦げ茶か黒い色の素材です。

まあ、いってみれば玄米ご飯と根菜類の精進料理のような、戦前までの日本の原風景ですね。

そのような時代に、前川國男の処女作が出来あがっています。

 

つるんと

真っ白な

ディテールのない

平滑な面と直角で構成された

モダニズム建築が

突如立ち上がったわけですから

 

 

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小さな建築ではありますが、ル・コルビュジェから受け継いだ建築の遺伝子、そして後の前川國男の原点の全てが詰まっています。

 

 

 

ちなみに、その頃のル・コルビュジェといえば、

40代で、油の乗りきった頃、小住宅から後の大型建築や公共建築に移行しようか、という頃です。

完成していたのは住宅作品が多いですが、事務所では大型建築の依頼や設計が増えていた頃です。

 

 

ジートルンク

 

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サヴォア邸

 

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マンドロウ邸

 

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今から90年近くの前の建物ですが、

現代の建築デザインも未だにこのコルビュジェの初期作品の周辺をウロウロしています。

手前の自動車のクラシックな(当時の最新の)デザインと比較してみれば、

建築の方が際だって、その斬新さが分かりますよね。

 

 

つづく

 

 

「ボルトがない!」で建設パニック⑩

「ボルトがない!」で建設パニック⑨

「ボルトがない!」で建設パニック⑧

「ボルトがない!」で建設パニック⑦

「ボルトがない!」で建設パニック⑥
「ボルトがない!」で建設パニック⑤
「ボルトがない!」で建設パニック④
「ボルトがない!」で建設パニック③
「ボルトがない!」で建設パニック②
「ボルトがない!」で建設パニック

 

昨年の12月から書き続けている「ボルトがない!」シリーズですが、

半年経過しても、さっぱり事態は好転していません。

 

まず、このボルト不足問題を簡単におさらいしておくと、

 

昨年の夏ごろ、2018年の8月くらいから、工事現場において

「注文していたボルトの納品が遅れる?」「数がそろわない?」といった声が聞かれるようになった。

慌てて、数社に問合せたり別のところに注文出したり、なんとか間に合わせた…という現場が増えてきた。

通常、ボルトは鉄骨工事の組み立て(いわゆる棟上げ)の予定日が決まってから注文しても十分間に合うものだった。

2週間もあれば届く、商社の在庫から翌日出しも可能。

なので、「ボルトが足りない?たまたま注文が重なっただけでしょう?」と通常どおりの受注で動く、楽観論業者と、

「もしかして、次も足りない、間に合わない、なんてことが無いように早めに余計に発注しておこう」という心配性の業者と、

「現場はいくらでも続くんだからドバーっと注文しとこうぜ」という、大雑把な業者とに分かれた。

このころに国土交通省は調査を開始してます。

2018年の秋口になって、「やっぱ足りない」、「注文しても4~5か月と言われた。」とか、

「やべー!!鉄骨の建て方」の予定日が決まらなん!」、「か、か、搔き集めろー!!」とか

「メルカリで相場の4倍で買っちまった…」とかいう声が聞こえるようになり

2018年の11月末に全国鉄鋼工業協会から「緊急事態宣言」が出されて

2018年の年末、まさかのボルト注文停止といった話も出てくる。

2018年12月に国土交通省から調査結果、「ひっ迫」と公式発表。

2019年1月、ボルトの納期半年という声が聞こえてきて、

2019年2月、状況を憂いた有志でロビー活動開始。マスコミも取り上げ始める。

2019年3月、公共事業の中止案件も出始める。ボルト納期が9か月という話になる。

2018年4月、国会で質疑、国土交通省対策検討と発表

2018年5月、国土交通大臣が記者会見


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「高力ボルト」不足 過剰発注の可能性で国交省が要請 NHKニュース
2019年5月17日 13時09分


東京オリンピック・パラリンピックの開催や都心の再開発による建設需要の高まりから、高層ビルや橋などに使われる「高力ボルト」と呼ばれる部品が不足している問題で、国土交通省は建設会社などがボルトを過剰に発注している可能性があるとして、必要な分だけを発注するよう要請しました。

「高力ボルト」は鉄骨を接続する際に使う強度の高いボルトで、建設需要の高まりを背景に全国的に供給が追いつかず、工事に遅れが出るなどの影響が出ています。

国土交通省が去年10月に続き、ことし3月にもボルトのメーカーや建設会社を対象にアンケート調査を行ったところ、不足が深刻な状態は続いていて、通常なら1~2か月程度の納期が8か月程度まで長期化していることが分かりました。なかには「工事の受注を取りやめた」と回答した会社も8%ありました。

不足の原因を詳しく分析すると、建設会社などが工事の受注が決まる前に先行してボルトを発注したり、必要以上の数を発注したりして、発注そのものが過剰になっていた可能性があるということです。

このため国土交通省は建設会社などに対し、ボルトを使う工事を具体的に明記するなどして、必要な分だけを発注するよう要請しました。

石井国交相「実需以上の注文が膨れ上がっている」


これについて石井国土交通大臣は、17日の閣議のあとの記者会見で「高力ボルトの納期の遅れから市場が混乱し、重複発注や水増し発注などを誘発して、実需以上の注文が一時的に膨れ上がっていると考えられる。ボルトの需要、供給、流通の各段階の事業者は、不確定要素が高い発注を避け、必要な分を必要な時期に注文するというルールを徹底していただきたい」と述べました。

 

引用ここまで

 

う~ん、、、どうなんだろうか、この対応。

遅きに失しながら、大臣に危機感がまったく足りない。まだ、業者のせいにしようとしている。

 

そして、国土交通省としての対応というのが…

 

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「国土交通省は過剰発注を防ぐため、建設業界の団体などに使用する工事などを明確にした統一の発注様式の利用を促す方針」

 

まず、問題点の1

過剰発注と決めつけている。

発注数と現場数の照会したうえで言ってるのか?ならばエビデンス出せ、調査書類を出せ

 

次に問題点の2

建設業界の団体に向かってものを言ってる。

業界団体に通達してうまくいったことありましたっけ?国土交通省がいいわけできるだけで、業界団体じゃ強制力ないよ。

 

次に問題点の3

注文用紙の書式を配布するだけの対応。

この発注様式でいったい何が改善するのか…、業者は架空の発注をしていたというのか、ならば、むしろ、今後は。間に合った工事から、

ボルトキャンセルの山になるはずだが、そういう話は全然聞いていないぞ。

 

 

つづく

地銀を殺すな

これ、最初は

「地銀を消してはいけない」ってタイトルで書こうと思っていたんです。

ですが、なんかそうじゃねえ、伝わらねえ、今の状況。

 

どう書くか、「地銀再建をめぐって…」とか、なんか政府諮問委員会の効き目のない企画書っぽい。

または、「消える地銀、消えない地銀」元銀行員の新書のタイトルかよ。

「地銀再生」、掛け声だけだよねえ。

 

と、地銀をどうすんだ?これからどうすんだ?と考えていましたら、脳内に響いてきたんです。

友川かずきの歌が…、

 

トドを殺すな


北海道の空と海の蒼

かき分けるように生きてゆく動物達

役に立てば善だってさ役に立たなきゃ悪だってさ

誰が断を下したんだよ

トドを殺すな

トドを殺すな

俺達みんなトドだぜ

おい撃つなよ

おい撃つなよ

おいおい俺を撃つなよ

 

トドを殺すな/友川かずき

 

 

まさに、

 

利益を出せば善だってさ利益を出せなきゃ悪だってさ

誰が断を下したんだよ

 

という状況

 

なので、このシリーズは「地銀を殺すな」にしました。

 

 

 

つづく


とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑧

前川國男さんについてでした。

 

この人は、戦前にフランスのル・コルビュジェのところに入所した初めての日本人でした。

1928年、昭和3年、前川23歳のことです。

この頃に出来上がったばかりの、ガルシュのスタイン邸を見ていると聞きます。

 

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その前川ですが

 

つづく

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑨

恐れていたことですが…
とうとう壊し始めました、日本が誇る稀代の建築巨人、菊竹清訓の名建築を!

 

菊竹さんの解説をするために、日本の近代建築の全貌を前提として、前川国男さんの解説をしているうちに、

とんでもない事態に至ってしまいました!

 

菊竹清訓の凄さを、このブログを読んだ日本中の人々が、その凄さを体感する前に、本物が壊され始めている。


ナウシカのオーム?と話題に 旧市民会館の解体始まる
神谷裕司 2019年7月24日10時00分
 

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存廃で揺れた旧都城市民会館(宮崎県都城市八幡町)の解体工事が23日、始まった。仮囲いや外部足場の設置から始まり、管理棟・ホール棟の解体や整地を行う工事は、来年3月中旬まで続く予定。跡地の利用方法は、まだ決まっていない。

「革新的」評されるも…ナウシカのオーム?苦渋の解体へ
 会館は、戦後を代表する建築家の一人、故・菊竹清訓(きよのり)氏が設計し、1966年に完成した。独特の外観を持ち、「メタボリズム」建築運動の代表的建造物とされる。2007年に閉館。市民らの間で保存運動も起こったが、老朽化などを理由に今年3月の市議会で解体が決まった。解体工事費は1億5660万円。

 市は解体に当たり、「会館の記憶を伝承する」として、3件(模型、映像記録、記録誌)の「メモリアル事業」を実施する。

 映像記録と記録誌について市は、会館の保存活用を訴えていた日本建築学会と業務委託契約を結んだ。模型制作にも学会が協力する。記録誌の監修は、解体計画停止を主張する文書を国などに送ったイコモス(国際記念物遺跡会議)が行うという。(神谷裕司)

 

朝日の記事ここまで

 

 

これ、壊しちゃうの?

うわー、、もったいねえ。

もったいないどころか、都城で唯一の有名建築作品じゃないですか!

都城だけじゃなく、戦後の日本発の建築運動「メタボリズム」の代表的作品じゃん、世界的に有名じゃん、

 

それ、壊すか…普通…、と思ってましたら、朝日の記事によればすでに壊し始めている!!!

 

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ユンボが入ってんじゃん。

解体工事は約8カ月、費用は1億5000万円。

 

しかも、跡地をどうするかも決まっていない…。

ならば、放っていけばいいじゃん、徐々に廃墟化していくかもしれないけれど、それまでずっと置いておけばいいんだよ。

 

菊竹さんの建築の真価が世に普及するまで、後数十年かかるんだから、

 

菊竹さんってそういう人じゃない?他人よりも4歩先行ってる人じゃない?

 

売れっ子の表現者は他人より1歩先を行くっていいますよね、でその1歩先行くスター達が尊敬するのは2歩先を行く天才です。

その歩幅の中で、4歩も先を行くと成功するのかしないのか、評価させるのかされないのか、誰にもわからない領域です。

 

菊竹清訓という人は、まあ、そういう人なんです。

 

表現がぶっ飛んでいる。

美学が偏っている。

特殊解過ぎて前例がない。

 

にも、かかわらず、一品生産の建築で社会を変えようと試みる。

建築にかかわる社会的要請を建築的統合により解決すれば、

社会変革を起こせると考えながら、建築の細かな部品に至るまで構想する。

 

 

その菊竹清訓作品の中でも、まあ、もっともわかりやすいのが、スカイハウスに次いで、都城市民会館だったといってもいいでしょう。

 

この建築を見るためだけに、多くの人が都城に行ってたんですよ!

 

それだけの値打ちがあった。

 

そもそも、都城に史跡あんのかよ!と

 

あるにはあるが、領主館跡、県庁跡、明道館跡、跡、跡、跡、

跡ばっかじゃん。

全部、跡じゃん。

 

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そもそも、都城(みやこのじょう)市の地名に元になっている、島津の北郷氏の居城である「都之城」。

その「都之城」さえ!

 

城マニアの間では、残念で有名なんですが、

 

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この「都之城」ちゃんと残していない!

破壊しまくっている。

 

九州特有の城の特徴である、空堀と水堀が多数組み合わせられているはずなんですが、

本丸以外は、

曲輪が住宅地やマンションになっちゃっています。

 

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なんだかなあ…

都城、わかんないのかねえ、自分とこの地域財産の価値が

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑩

こんな建物があります。

 

こんな素晴らしい建物が壊されようとしているんです。

 

JR釜石線の遠野駅です。

 

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なんだか、懐かしい感じのする駅舎ですよね。

 

まず、横長い寄棟の瓦屋根が、昔の学校みたい。

そして、窓割がリズミカルで窓の桟がカワイイ、だから、ホテルというか旅館みたいでもある。

 

これ、みたいじゃなくて、実際にホテルだったんです。

駅舎がホテル、なんて、まるで小さな東京駅ですよね。

 

全国の駅舎を探訪されてる歩王(あるきんぐ)さんのブログをご覧ください。
 

[プロローグ]3月14日がラスト!フォルクローロ遠野に泊まってきた。

[エピローグ]ついに閉館…フォルクローロ遠野に泊まってみた。

 

マジ、素敵なたたずまいだったんですよ。


▼歩王さんのブログ記事より
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フロントのカウンターがお洒落ですよね。
遠野物語の玄関口である遠野駅が、ちょっとレトロモダンで欧州調なのが益々素敵です。

 

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眼下を通る列車を眺めながら、鉄道好きなな人ならタマランでしょうねえ。

歩王さんが書いておられるように、この釜石線は別名「銀河鉄道」とも呼ばれておりまして、

それは、「銀河鉄道の夜」を書いた宮沢賢治の故郷である花巻と釜石を結ぶ列車だからなんです。

 

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この地図にあるように内陸部の花巻から海岸まで、90キロの道のりを約2時間で結んでいます。

これ、行ってみるとわかるんですが、何かですね、日本を横断するかのごときなんです。

 

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こういう風景がずっと続いています。

山に囲まれた盆地のような平野をずーっと走ります。

 

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なんにもない、というか、田畑がずーっと広がって、遠くに山がずーっと見えている。

線路の両脇が田畑のあぜ道で、家はみな山裾に固まって並んで建っているんですね。

 

この釜石線は本当に素晴らしくて、日本の国土の美しさをと気づかせてくれる路線のひとつです。

 

同様に静岡県から富士川を遡行して山梨県の甲府に至る美延線と、近鉄の伊賀越えで伊勢に出るルートも素晴らしいですよ。

 

 

こんな2両編成で、海に向かって走り続けます。

 

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最近は、本当に銀河鉄道にSLも走らせているみたいですよ。

 

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SL銀銀河アーカイブ JR東日本盛岡支社

 

この、釜石線の中間点に位置するのが、遠野なんです。

 

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑪

「遠野オフキャンパス」という活動に取り組んでる若者と建築家がいます。

 

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その人の名は安宅研太郎さん

安宅!

 

戦国好きならピンっときますが、三好長慶の弟、安宅冬康

歌舞伎好きならピンっときますが、弁慶、義経の勧進帳の安宅の関

信長好きならピンっときますが、九鬼水軍建造の大型戦艦の安宅船

昭和の歴史好きならピンっときますが、三井、三菱、岩井と並ぶ巨大商社の安宅産業

 

どんな人かなあ~っと、気になっておりました。

 

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アタカケンタロウ建築計画事務所

 

いろいろな建築設計をなさっていますが、もちろんそのデザインも現代的で華奢で繊細な綺麗なものですが、

建築設計以外に、農業法人やら地域おこしの組織づくりやら、いろんな学校でも教育に携わっていらっしゃいますが、

学校で座って授業してテストして採点してということよりも、生徒たちと一緒に外に出て社会活動に取り組むような人です。

 

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生きることと建築することを一体で考えるようなお仕事をされています。

 

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本来、建築とはそうあるべきなんですが、

現代社会の、特に都市では、稼ぐことと建築が一体だったり、金融商品のための建築だったり、して悔しい限りなんですが、

 

そういったことに真っ向背を向けているわけでもなく、私のように目の前の問題に激熱になることもなく、

もっと、長い時間をかけて、地域に根を張って、地に足をつけて、肩の力を抜いて、

確実な建築デザイン活動に、落ち着いて取り組んでいる、若いのに偉いな~って人です。

 

新宿の曙橋に「合羽坂テラス」という、知る人ぞ知る日本の近代建築の名作があるのですが、そこに事務所がありまして、会ってきました。

 

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▲建築家:稲冨昭さん設計の合羽坂テラス

 

なぜか?って

それは、遠野のことを教えてもらうためですよ。

そして、遠野駅舎のことについてもいろいろ聞くことができましたよ。

 

そしたら、凄いことが分かったんです。

遠野駅舎はやはり、建築としてタダモノではなかったんです。

 

まるで、この釜石線を象徴する駅として、銀河鉄道のために準備された、宮沢賢治や佐々木喜善の交流を具現化したような建築でした。

 

つづく

 

 

 

とにかく築年数が経過した建物は地域資産になります。⑫

遠野の駅舎がどうもタダモノではないぞ…の続きです。

 

前述の安宅研太郎さんは、生徒さん達と遠野の街づくりに取り組んでいるだけでなく、

遠野とそこでの活動、オフキャンパスの情報発信もされています。

 

『HEii』という機関紙です。

 

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なんだかですね、そのまま書店に並んでもいいようなプロ顔負けの雑誌です。

エディトリアルデザインがいいんでしょうね。

安宅さん自らが編集とデザインをなさっているそうです。

 

やはりですね、デザインなんです。

世の中にはさまざまな活動があります。

その中には大変立派で意義あるものも多いのですが、

活動する方々の思いや真剣度が高ければ高いほど、

びっしりと文字原稿で埋め尽くしたような配布物を作ってしまいがちなんですが、

それではですね、誰も読まないんです。

読めないと言ってもいいかもしれない。

 

情報や報告はあくまで素材なので、その素材をどう料理するか…によって、美味しさに差が出るように、

きちんと料理されていないと、受けての頭に入っていかない、読み取れない、印象に残らないんですね。

 

活動報告もその内容もどうデザインされるか、によって伝わる内容にも差が出るんです。

 

小さな生真面目な活動であればあるほど、ちゃんとした立派な活動であればあるほど、

絶対にデザインが必要であり、デザイナーの質が活動を決めるといっていいほど大事なんです。

 

安宅さんのように、地域活動をデザインしている方に、

もう30年来の友人なんですが、兵庫県の灘区のナディストこと慈(うつみ)憲一さんがいます。

naddist

彼は、阪神大震災をきっかけに、東京から故郷に帰り、

兵庫県灘区を盛り上げる活動をもう四半世紀にわたり取り組んでおられます。

ナダタマ

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さまざまな企画と配布物出版物は、いずれも地元の街を連動した体験企画になっていて、

今でいう『ブラタモリ』のような企画をたった一人で始めて、今ではたくさんの仲間と共に、神戸の街を盛り上げています。

 

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慈さんは、町おこしとかいわず、「まちあそび」と呼んでらっしゃいますね。

おもろい、ことが大事…と

 

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確かに、その企画もスノッブだけど優しさがあって、知的でユーモアがあって、子供からお年寄りまで、

誰でも参加したくなるような、参加可能なとこと、それをガイドする慈さん自身のキャラクターが一番の魅力なんですが、

 

やはり、その信頼を、イメージを、企画のブランド力を生み出しているのは、表現力とデザイン力なんですね。

 

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これらのデザインはすべて、慈さん自身が手掛けています。

 

これは、今年の夏休み企画の摩耶山登りのポスターです。

 

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デザインというのは、それまでのその人が経験した知的経験のすべてが現れますし、

同時にそういった教養力はデザインの力で付与することができるんですね。

 

神戸の三宮駅にこのポスターが張り出されているらしいのですが…(慈さんのFaceBookより)

パルコの広告かと思いました。

 

こうした場所に登場しても、大企業とそん色のない力を持っていますよね。

 

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デザインというのは、小さな組織でも大企業と対等に渡り合える武器のひとつなんです。

だから、デザインはとても大事なんです。

 

 

そういった意味では、安宅さんの遠野での活動も、デザインの力が十二分に発揮されていることがわかりますね。

 

HEiiは、平易と読むんでしょうかね。

遠野の自然や遠野の生活文化を、町を、建築を通して解読していくような内容です。

どの号もですね、大変な力作なんですが

 

 

その中で、ちょっと私の目を引いた特集がありました。

 

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マンサード屋根の建物が異様に多い…という

「マンサードリサーチプロジェクト」という記事です。

 

つづく

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