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東京オリンピック2020を黒字化する方法4

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新国立競技場の方向性について河野太郎先生からご報告がありました。

以下河野先生の公式ブログより抜粋。


自由民主党の新国立競技場見直しプラン

http://www.taro.org/2015/08/post-1627.php

自民党の行政改革推進本部と内閣・文科両部会でまとめた新国立競技場の見直しプランです。

自民党の政調審議会と総務会の了承をいただき、正式に自由民主党の見直しプランとなりました。

これを首相官邸で、総理及び五輪担当大臣に提出しました。五輪担当大臣の下、このプランに基づき、責任を持って見直しが行われることになります。

--------------------------------

基本方針
新競技場は「白紙」から考える。
オリンピックのために新競技場を建設する場合は、2020年初頭までに完成させる。
コスト意識を持ち、建設費とその積算根拠と多様な財源を明確に示すとともに民間活力を生かした計画を実行する。
東京都のスポーツクラスター構想や神宮外苑まちづくり計画と一体化した計画をつくる。


何が必要か
オリンピックのために新競技場に必要な要素は主に開会式・閉会式、陸上競技、サッカー等の三つである。 


ゼロ・オプション
現在の我が国の財政状況を考えれば、たとえオリンピックといえども無駄なコストをかけることは避けなければならない。

新競技場に必要な三要素、開会式・閉会式、陸上競技、サッカー等のうち、陸上競技とサッカー等には駒沢競技場の改修、味の素スタジアムの活用といった代替案がある。

残る開会式・閉会式に関しては、現状では6万人収容のスタンドという条件がある。しかし、オリンピックの施設にかかる費用が負担となり、招致を辞退する都市が続出するなかで、新しい日本を世界に印象付けるためにも、スタジアムという閉鎖的な空間から飛び出す新たな開会式のあり方をIOCと協議するべきである。

数百億円の費用を削減できることを考え、政府は真剣にゼロ・オプションを検討すべきである。


競技場をつくる場合
オプション1
国立競技場跡地に、6万人のスタンドを持つ天然芝の陸上競技場・球技場兼用スタジアムを建設する。屋根は観客席を覆うものとする。陸上競技のサブトラックは仮設とする。

オプション2
国立競技場跡地に開会式、閉会式とサッカー等のための6万人のスタンドを持つ球技場を建設し、オリンピックの陸上競技のために駒沢競技場を改修する。

陸上競技場としてオリンピックに必要なのは3万人規模のスタジアムであり、常設のサブトラックを持った第一種の競技場が東京にできることがオリンピックレガシーとしてもふさわしいと考えると、駒沢競技場を改修し、3万人規模のスタジアム等、オリンピック用に整備すべきである。オリンピック後は、東京に、世界陸上も開催することができる合理的な大きさの陸上競技場が残ることになる。

常時利用可能な陸上競技場を国立競技場跡地に建設することは、サブトラック用地がないため難しい。仮にオリンピックのために仮設のサブトラックを建設したとしても、オリンピック後は陸上競技場として使用することはできない。

陸上競技用のトラックがある競技場では、ピッチとスタンドに距離ができるため、球技の観戦のためにはベストとは言えない。また、6万人のスタンドでは陸上競技としては大きすぎることになる。

開会式、閉会式とサッカー等のための6万人のスタンドを持つ球技場の新設とオリンピックの陸上競技のための駒沢競技場の整備は合理的な選択肢である。

サッカーのワールドカップ招致を視野に入れた8万人収容のスタンドの要求があるが、サッカー大国ブラジルでさえ、スタジアム建設を巡り、国内で大きな反対が起きた。現行のFIFAルールではワールドカップを招致することができる国は限られてくる。そうした現状に鑑み、日本が再度、ワールドカップを招致しようとするならば、現在のFIFAルールの変更を協議したうえで、既存の施設の活用を考えるべきである。

また、コンサート等イベントのための屋根の要求もあるが、基本的に天然芝と全面屋根は両立しない。また、遮音のための屋根を可動式にすることは現実的ではない。オリンピック後に競技場をイベント等に使用することは考慮すべきだが、全面屋根は合理的ではない。


どうつくるか
オプション1(民設民営)
国は土地を提供し、民間事業者が新たな競技場を含む施設を建設し、一定期間、管理運営をするものとする。オリンピック後は運営管理には国費、totoの売り上げを投入しない。

オプション2(民設民営+国庫補助)
国は土地を提供するとともに建設費の一定額を負担する。民間事業者が新たな競技場を含む施設を建設し、一定期間、管理運営をするものとする。オリンピック後は運営管理には国費、totoの売り上げを投入しない。

オプション3(公設民営)
国は新たな競技場を建設し、オリンピック終了後の運営については、民間事業者の知見を活用した運営体制を整備する。そのために、早急にオリンピック後の活用を考慮したビジネスプランを公募する。公設の場合、日本の設計・建築業界の総力を挙げたコスト削減のための最大限の努力が必要である。オリンピック後は運営管理には国費を投入しない。

いずれの場合も、オリンピックのレガシーを後世に残すべきである。神宮の環境を保全し、日本の文化を発信するために、木材等の多様な資材を利用したり、大規模災害時の防災拠点となったりすることを考慮し、設計および都市計画の専門家による審査を経る必要がある。建設コストを抑えると同時に、その競技場をオリンピック後にいかに多くの国民が活用して利益を生み出すか、あるいはコストを最小限にするかということが重要であり、単なるデザインのコンペではなく民間活力を十分に生かしたビジネスプランとそれに基づいた設計を競わせるべきである。

JSCが名義上、発注者等にならざるを得ないかもしれないが、今後の設計、建設、管理運営は、JSCではなく関係閣僚会議が責任を持つ体制をとるべきである。その上で、オリンピック後の管理運営については、JSCからハード部門を切り離す必要がある。

以 上

抜粋ここまで

明快です。

そして、ついに出た、駒沢オプション。
駒沢かあ。

感慨深いです。

なぜなら、過去の東京オリンピックでも常に駒沢会場はダークホース、スーパーサブ、最期の最後は駒沢頼み。
といった場所なんですね。

過去のオリンピックといっても1964だけではありませんよ。
1940幻の東京オリンピックでも外苑会場でもめまくって、最終的に駒沢だったからです。

1940TOKYO計画とはこんなんです!







設計者は岸田日出刀(きしだ ひでと)1899年2月6日 - 1966年5月3日)

私は学生の時分、近代建築の歴史を調べているときにこの人の名前を発見して、
The Sword of rising sun. 日の出の刀と書いて、ひでとと読む。
何やった人かどうかは置いといて、なんてかっこいい名前なんだ!と思いました。

この岸田日出刀って人はどうい人かというと、

ひとことでいえば、
戦前戦後を通じた日本近代建築界のゴッドファーザー。

雰囲気でいえば、
日本建築界の大橋巨泉。

その変遷を含め今の若い人向けに言えば、
日本建築界の秋元康。


そんな感じです。






文学的才にも秀でておられ、保田輿十郎の「日本の橋」を彷彿とさせるような非常に格調の高い「壁」、「扉」、「窓」、「甍」、「縁」といったエッセイ集シリーズもあれば、
「過去の構成」とドライなタイトルを付けた伝統建築の写真集等も出されています。

こう、純粋でナイーブで聖職者的傾向の強い建築家達の中で、
この岸田日出刀だけはちょっとデーモニッシュであり、モダンであり、ニヒルでもあり、どこか倦怠感や諦念を感じさせるところもあり、精緻でありながら破格な感じ、豪奢でありながら簡素を愛するようなところに大変興味をもちまして、
私は20代の後半ごろから岸田日出刀マニアと化して、古本屋さん等で岸田日出刀著作を見つけ次第購入してましたので、その装丁もすばらしい「壁」なんかは、結果3冊も所有しております。

その岸田日出刀が紆余曲折あって、駒沢にオリンピック会場を求めていった過程と現在の新国立競技場のもめごとは、80年の時を超えて、鏡写しのようにシンクロしているんであります。

つづきはまた後程書きますね。


新国立競技場は本当に白紙見直ししてるのか?1

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更新が遅くなってすいません。

オリンピックがらみの諸問題
いやあ、この一ヶ月間いろんなことがありましたね。

新国立競技場計画の白紙見直し

新国立競技場整備経緯検証委員会の設置

新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会の設置

遠藤五輪大臣によるアスリート・競技団体等と遠藤大臣との意見交換

内閣府の新国立競技場の整備計画の再検討推進のページ
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/shinkokuritsu_saikento_suishin.html

一方、ザハ・ハディド氏の事務所から公開された提案ビデオ

そして、俄かに話題が沸騰した五輪エンブレム問題

そのエンブレム問題は本日終結したようですね。

取り下げ、再公募となる見込みのようです。

同時に、本日、新国立競技場整備事業の再募集内容も発表されました。


新国立は費用・工期重視 JSC、業者公募を開始

2015年9月1日 東京新聞夕刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015090102000252.html


二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の新たな整備計画で、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は一日、入札事業者向けの募集要項を公開し、公募を開始した。旧計画の工費が高騰して批判を浴びた反省や本番に間に合わせる必要性などから、コストと工期を重視した案を優遇する内容になっている。

 要項によると、事業者が出す技術提案書を点数化して審査する。計百四十点のうち「事業費の縮減」と「工期の短縮」に各三十点、「維持管理費抑制」に十点と、この三項目で点数の半分を占めた。耐久性に関する基準では「百年間大規模な修繕を行わずに使用できるものとし、維持管理コストの縮減を図る計画」を求めている。

中略

 デザインと設計・施工を一体で公募し設計や見積もりについて交渉をしながら契約額を決める「公募型プロポーザル」と呼ばれる方式で実施。十一月十六日が締め切りで、建築などの専門家七人による審査委員会が評価し、十二月に事業者を選定する。来年一月に設計の委託契約を結び、同年十二月をめどに着工する。

引用ここまで

JSCから新国立競技場整備事業の発表もありました。
http://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu//tabid/711/Default.aspx

今度の募集要項はかなり細かく突っ込んだ内容のようですがですが、
要は、計画の方向性にまで応募者からの判断、提案を期待する、といった内容のようです。

上記、東京新聞の記事中にもありますが、評価項目を明記し点数化する、ということのようです。

なるほど

確かに、これは一理ある。

これまで、審査過程や審査内容がよくわからない、ということが問題視されていたわけです。
審査員の投票が多かったから、、、といった説明だった。

では、審査員の頭の中はどうなっているのか、、何をもって一票なのか?は専門家でもわからない、ましてや一般の方々には皆目見当がつかない。

どの案のどの部分をどう評価しているのか?が見えなかった。

で、結果だけを受け入れろということになっていた。

それを点数化するという。

確かに、たとえば我々がスポーツでただ単純にタイムを競うとかだったらわかりますが、新体操やフィギュアスケート競技を見ても、大きな失敗とかは見てわかりますが、どの選手の演技も皆凄いように見えて、誰がどこがどのくらい凄いのかはよくわからないですよね。

審査員による評点がその場で発表されて、芸術点だ技術点だとか言われると、なんとなくわかってくる、違いが見えてくる。

そういった効果は期待できる気がします。

この応募案の9つの評価項目というのが一体どういうものなのか?JSCから発表された資料を紐解いてみたいと思います。

というわけで、読みました。

結果。

計画の規模等なにも変わってはおらん!!

というのが結論ですね。

特に13-1、業務要求水準書の14ページ。
規模についてだ。

トータル19万4400㎡
5万8806坪

比較してみると
ロンドン五輪メインスタジアムで10万8500㎡(3万2821坪)
アテネ五輪メインスタジアムで12万7000㎡(3万8417坪)
なんですよ。

あいかわらず1.6~1.8倍のブッチギリの大きさなんだよなあ

しかもだ!
この部分

面積の許容範囲について設計者側の自由裁量を禁じている。

これでは、ポストオリンピックも考慮しての提案
例えば
「最初は小さく作り、後ほど大きくも機能アップもできる提案」とか
「観客席だけじゃなく商業施設やホテルも入れる」とか

そういった可能性を封じてしまっているじゃないか。

ただのデカイ鍋のようなものになってしまう可能性ですよ。

所詮、設計者とか建設業者は言われたことしかやならない傾向にある、コンペの要望に異議申し立てを含めた批評性の提案をするような建築家は、かつての東京都庁コンペであえて低層化案出すような根性あるのは磯崎新さんみたいに、一握りなんだよ。

続いて収容人員についてだけども

6万8000席。
まあ、仮にそれはいいとしてもだ。

6万8000席分として観覧機能8万5300㎡の中でまとめるなら、まだわかるが、
このVIP席をホスピタリティ機能1万7100㎡として別枠になっている。


そのうちVIP席が1500席?
その面積配分が1万7100㎡
なんだそれ?
一人あたり11.4㎡、3.45坪、約7畳。

単純比較は出来んと思うが、大相撲の升席でこんな感じだ!

1.35メートル角。1.82㎡(0.55坪)、約1畳。

それがVIPひとり7畳っていうとこんな感じになる。

どうなんだ?この大前提。
しかも5%しか減らしちゃいかん、というJSCからの指令は!


既にまた大間違いをやらかしちゃいませんかねえ。



ただし!今回国土交通省の技官が加わったということで、要項の資料関係が的を得たものになってきております。
特に!なんと!既存杭の位置と深さの資料があった。それによれば杭長さは9メートルくらいみたいでした。
同時に、地盤汚染調査書類もあった。
ちゃんとしてんじゃん。

ということで、次々と紐解いてみたいと思います。

新国立競技場は本当に白紙見直ししてるのか?2

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新国立競技場計画白紙見直し!といわれているが本当にそうなのか?
とその内容を精査してみようの続きです。

中身はここに置いてある

JSCからの新国立競技場整備事業

http://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu//tabid/711/Default.aspx

物凄いいっぱい資料があるように見えますが、提出書類フォーマット書類がざざーっとあるのと、参加資格者についての法的記述やルールの同じことを繰り返し書いてあったりするだけです。

重要なの書類は3.と13.です。

しかし書類3.は基本理念や方針の宣言といった内容で中身ではない。


1.本計画の基本理念は、以下のとおりとする。

(1)アスリート第一 世界の人々に感動を与える場として、すべてのアスリートが最高の力を発揮できる競技場とする。
(2)世界最高のユニバーサルデザイン 車椅子使用者、障害者、高齢者、子供連れ、外国人など、誰もがオリンピック・パラリンピックを円滑に楽しめる競技場とする。
(3)周辺環境等との調和や日本らしさ わが国の優れた伝統や文化を世界中に発信し、内外の人々に長く愛される場として、明治神宮外苑の歴史と伝統ある環境や景観等と調和し、「日本らしさ」を取り入れた競技場とする。

2.スタジアムの性能

(1)スタジアムの性能(スペック)は、上記の基本理念を前提として、
できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を策定する観点から、別紙1のとおりとする。
(2)スタジアムの整備に当たっては、周辺地域の環境や景観等との調和を図り、「日本らしさ」に配慮するとともに、地球環境、大会後の維持管理等を十分考慮するものとする。
(3)上記以外に必要な性能については、事業主体である独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」という。)において、技術提案等審査委員会の審議を経て、適切に設定するものとする。

別表1というのがこちら


3.工期

(1) 新国立競技場の完成が大会に確実に間に合うよう、工期の期限は、平成32年(2020年)4月末とする。また、国際オリンピック委員会(IOC)等の要請を踏まえ、同年1月末を工期短縮の目標とした技術提案を求め、工期を極力圧縮するものとする。
(2)事業主体であるJSCは、整備期間を極力圧縮するため、設計・施工を一貫して行う公募型プロポーザル方式(設計交渉・施工タイプ)による公募を行うものとする。

4.コストの上限 (別紙2参照)

(1) 新国立競技場のスタジアム本体及び周辺整備に係る工事費の合計額(施工前に先行実施する予定の関連工事を含む。)は、上記2.及び3.を前提として、1,550億円以下とする。なお、賃金又は物価等の変動が生じた場合の工事請負代金額の取扱いについては、公共工事標準請負契約約款(昭和25年2月21日中央建設業審議会作成)第25条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)に準ずるものとする。
(2)上記(1)の工事費とは別途必要となる当該工事に係る設計・監理等の費用は、40億円以下とする。
(3)事業主体であるJSCは、
工事費の縮減に関する技術提案を求め、最大限のコスト圧縮を目指すものとする。

そして別表2というのがこちら

新聞報道を含め、この大枠しかわからなかったわけです。

が、書類13を見てわかってきたのが、

以前検証してみたスタジアム面積早見の極意
新国立競技場計画の金額はどのように決まるか?

でも明らかなように、観客数6万8000人であれば6万8000㎡でイケルにもかかわらず、まあ2割増しくらいなら、ゆったり感もあっていいかもという8万㎡をさらに大きく上まわる、
観客席8万5300㎡という面積しばり。

さらに、VIP席として1500人分にもかかわらず1万7100㎡の追加面積。
一人あたりに直すと11.4㎡、これは3.45坪、つまり約7畳。
一人あたりですよ。

大相撲でいうところのVIP席、升席と比較してみた場合、こうでした。

升席はこの4人分を2名で利用するわけですが、
VIP一人あたり7畳というのはこんな感じになるわけでした。

だから、68000人といってはいるが、1500人は別枠なのだから、スタンドの観客数は6万6500人なんですよ。

それ以外の面積配分は設計者で自由に設定してレストランとかカフェに出来ないような募集要項になっている。

こりゃあれだね、JSCは見直し前の2012年の募集要項を流用したんじゃないのか?


といった疑問が湧いてくるのでした。

ここまでは前記事のおさらい

というわけで、VIPスペースがどのようであるべきか?なのですが

おそらく、新国立競技場を多目的スタジアムとして考えた場合にお手本にしていたであろう、以前からご紹介しているイギリスのウェンブリースタジアムのVIPルーム、PRIVATE BOXESを見てみましょう。
https://clubwembley.wembleystadium.com/ClubWembley/PrivateBox

要人の方でしょうか


VIPでビジネス会議をおこなっているようです。
20人くらいの小会議室といった広さ

この部屋はざっと30畳くらいはありますね。

おそらく、新国立競技場計画が始まった当初からJSCや文科省、東京都もサッカー関係者に連れられて、ウェンブリーを視察していると思うんですね。

で、上の写真のような
PRIVATE BOXESに案内されて、非常に感激しているんだと思います。
わかります、眼下にピッチを見下ろすこのウェンブリースタジアムの
PRIVATE BOXESで試合見たら誰だって感激すると思います。

こんなルームの中でワインとか飲みながら、クイーンやU2のコンサートを見たら、そのハイソ感というか富裕層空間に感激するでしょう、初めてのときは。


ただ、ロックとかサッカーファンっていうのは、そういうハイソなものを果たして求めてるかなあとは思いますがね。


実際にこれらのVIPスペースは、ちょうどホテルのスイートルームのような感じで準備されています。
60~100㎡、3~4LDK分譲マンションくらい。
平均で80㎡としてみると、1万7100㎡あれば210室とれます。
1500人を210室で割ると、7.142・・約7人

段面的には、ちょうど上部スタンドとの境目に位置しています。

VIP席の割り振りですが、VIP中のVIPと思われる偉い人をVVIPとして別枠計上してあります。

VVIPを150人
VIPを1350人
と書いてありましたから

VVIP用に120㎡を30室なら3600㎡、
残り1万3500㎡をVIP用に60㎡で取ると225室、
1350人なら1室あたりは6人です。

3LDKのマンション同等面積を6人で占有かあ、、、

そんなに必要なのか?


続きはまた加筆します。




新国立競技場は本当に白紙見直ししてるのか?3

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新国立競技場計画白紙見直し!といわれているが本当にそうなのか?
その内容をどんどん精査していきたいと思います。

中身はここに置いてある

JSCからの新国立競技場整備事業

http://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu//tabid/711/Default.aspx

このうち、重要なのは書類13です。

VIP面積について
新国立競技場は本当に白紙見直ししてるのか?2

で加筆する予定ですが、その前に建物形状についてこんな指示がありました。

高さ70メートル

「以下」を付けてはいるが、あいかわらず70メートルを堅持。

あれだけ、皆に怒られているのに、こいつらはまだわかっていない!

東京都の都市計画変更の理由づくりがあった為と思いますが、既に、有識者達の真の狙いであった外苑再開発計画の布石たる高さ制限を変更することは出来ているわけだから、こんな記述はなくし元の旧国立競技場並みの35メートルとか、せめて元の照明塔並の高さくらいまでの50メートルとかにするべきところを「70メートルのまま」。

おそらくですね、ここを低く記述してしまうと、都市計画変更の理由づくりまで遡って責められることを憂慮した役人的発想と思います。

これもですね、おそらくJSCと有識者が2012年の頃から視察を繰り返していたであろう、イギリスのウェンブリースタジアムと比較してみましょう。

ウェンブリーで象徴的に造られ屋根の端部の安定と開閉時の挙動を抑えるために設置された自転車タイヤのスポーク機構を持つアーチは130メートルもありますが、スタジアムは50メートル以下に納まっている。

観客席部分だけなら35メートルにも納まっている。

設計応募者も今度は70mにはしないと思いますが、であるならJSCの募集要項における要求水準における建物形状の高さについては、以下のように記述するべきでしょう。

「建物の最高高さは、都市計画変更を経て外苑西通りの地盤面(TP+24m)から70mまで可能になっているが、できるだけ高さを抑えるように配慮した計画とする。」

こう書いとくべきじゃないのか?

そうじゃないと、建設屋さんっていうのは言われたとおりにやるし、建築家っていうのはルールの裏かいたり、網の目をくぐろうとする傾向にあるから、結局のところ、高さ69.9mとかの案を出してくるぞ。

それとも、JSCは結局70mギリの建物を望んでいるのか?というお叱りを受けることにはなりませんかね。

また後ほど加筆します。



新国立競技場計画は本当に白紙見直ししてるのか?4

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ここまで、新国立競技場計画の白紙見直しをチェックしてきているわけですが、

JSCからの新国立競技場整備事業
http://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu//tabid/711/Default.aspx

1.ドでかい面積と、その上限を制限するのは分かるが減らすことを推奨しない間違い。
2.高さ制限を70メートルとして、より低く抑える提案を推奨しない間違い。

これらについてJSCおよび文科省および内閣府は

面積は上限を+5%ととし、より合理的に機能を満たし面積を低減することはかまわない。
高さについては、70メートル以内まで計画可能だが、より低くすることを推奨。

と、今すぐ募集要項をアップデートする必要について提案してきました。

続いてなのですが、旧計画のころから問題視していた都市計画許可に含まれていた、土地活用方法の問題です。

これまた書類13の中に次のような記述

「本事業での整備内容」とありますね。
資料4とも書いてあります。
では、その資料4とはどういうものなのか?こういうものです。

なんだ?この西側の茶色に塗られた部分は!
これって、以前から「やめろ、やめろ」と言い続けている「人工地盤」じゃねえか!
参考:新国立競技場の基本設計は出来上がっていない!④



なにか「立体都市公園」だよ
これのどこが公園なんだ!



外苑西通りが死んじゃうから、この土地のかさ上げはやめなよ。
って言い続けているのに!まだ分かってない!
どころか!以前の都市計画許可がもったいないのか、それとも書類作成をさぼったのか、それともこの都市計画許可にこだわっている東京都の職員でもいるんでしょうか?

ここはひとまず見直しなんだから、「立体都市公園」として都市計画の許認可は取れているが、この資料を活用して計画するかどうかは応募者任せにする!が正解だろう!

そして!今現在も立ち退き問題で揺れる住宅地と明治公園をつなぐデッキも「旧計画を踏襲」と書いている。

はい、この人工地盤の資料も必須から参考にすぐ記述を変えなさい。
そうでなければ、また新規計画の人工地盤の許認可で苦労することになる、そうでないないなら白紙見直しといいながら旧計画図で許認可チェックをこっそりやっていることがバレバレになりますよ。

そうではなくて、ただ単純に、もし、これまでの許認可の資料を活用したいなら、そもそもの日建設計が作成したというここまでの設計図資料も検証委員会に全部公開しろ!税金から設計料支払っているんだから、白紙見直しなんだから、もはや守秘義務もなにもないだろう。

ということで、人工地盤が残ったままでは、「白紙見直し」とはいえないのではないか?という第三の問題点を指摘しておきます。



新国立競技場計画は本当に白紙見直ししてるのか?5

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JSCからの新国立競技場整備事業
http://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu//tabid/711/Default.aspx

新国立競技場計画が実質見直になっていないんじゃないか?の続きです。
設計条件には3つの問題点が残っているということでした。
それは、

1.面積条件に±5%としているため、コンパクト化した設計が出来ない。
2.高さ制限を70メートルに引き上げたまま
3.外苑西通り沿いに人工地盤を設定している。

結果として予算1550億円以下に抑える可能性が断たれてしまう可能性でした。
さらには、合理的設計に伴うデザイン性の確保も難しいのではないか?という予測です。

それらに加えて、あらたに浮かび上がってきた第4の問題点があります。
それは、もしかしたらコンペ応募者が居ない、という事態です。

今回の応募条件は「デザインビルド方式」というものでした。
これは、設計案が出来上がってから施工者を入札で選ぶのではなく、あらかじめ設計+施工者でチームをつくり応募する。

そのチームが選ばれた時点で設計から施工まで一気通貫で仕事を進めることが出来るので、検討に出戻りが少なくなり、作業時間短縮や施工の合理化が出来るという。

以下のような資料をJSCが公開しています。




応募者は「設計+施工+施工監理」でチーム作るか、「設計施工」を一社でやれること、というものです。


そのときの応募者資格としては以下です。


重要な部分を抜き出すと、ここです。


観客席数15000以上のスポーツ観戦施設の実績か、観客席数1000人以上のホール等(映画館や劇場含む)1万㎡以上の施設。

この条件設定だと、たとえば素晴らしい住宅デザインをおこなっているような建築家、ホスピタリティ溢れる病院建築の実績のある建築家、下記の表にある建築学会受賞建築家でも、この施設経験はちょっと厳しいんです。



が、この設計実務経験については設計JVを組めばなんとかなる感じなんです。というのも、大型商業モール施設の設計等をガンガンやってるような建築事務所もけっこうありますから、そういった先輩、後輩、友人、仕事仲間でチーム組めばいいわけです。

なので、今回の応募条件は前回のような「プリッツッカー賞受賞者」みたいな、世界でも十数人しかいないような縛りはなくなってオープンに近いと思っていた。
今度はもっとたくさんの提案が集まるのではないか?と期待していたと思うんです。
しかも、この二年間で世の中の人も建築に感心が沸いているところですから、新国立競技場の新応募案はどんなのが来るんだろう、と前回以上に国民の耳目を集めています。

施工会社の候補として考えられるのは、
ヘビー級の大手ゼネコンとして次の5社。

大林組
鹿島建設
清水建設
大成建設
竹中工務店

続いて準大手ゼネコン12社

安藤・間
奥村組
熊谷組
鴻池組
五洋建設
東急建設
戸田建設
西松建設
長谷工コーポレーション
フジタ
前田建設工業
三井住友建設

そしてジュニアヘビー級の中堅ゼネコン24社

青木あすなろ建設
淺沼組
イチケン
大本組
北野建設
新日本建設
錢高組
大豊建設
大和小田急建設
鉄建建設
東亜建設工業
東鉄工業
東洋建設
飛島建設
ナカノフドー建設
ピーエス三菱
福田組
不動テトラ
松井建設
村本建設
名工建設
矢作建設工業 
ライト工業
若築建設

「果たして!これらの施工会社がどのように合従連衡してくるのか!本命と言われる大成建設に対し!鹿島、清水、大林がどの建築家と組み!どんな提案をしてくるのか!一方準大手同士でタッグを組んでくることも考えられます!山本さん、これは楽しみな一戦になって来ましたねえ、、」

と脳内で古館伊知郎をやっておりましたが、

なんと!大変なことになってきました!

どうせ大成建設がどうせ取るんだろ?と他のゼネコンが応募を辞退しまくりで、設計デザイン会社は多々あれど誰も応募出来ない事態に。

間接的な談合状態で大成建設オンリーに事実上決定か?

大成ありきコンペに噛ませ犬を演じる余裕はない!とのこと。

JSCデザインビルドコンペ方式が裏目。

競争力の働かないコンペにより事実上談合状態、新国立競技場見直し失敗へ!

なんだよ、建築のオリンピック前哨戦が見られると思っていたのに、、、
始めから負けると決まってるものに応募したくないっていうその根性はどうなんだろう。

もしくは、昔からの習慣で
「大成のオジキが出るんでしたら、あっしらは遠慮しときますさかいに、、、」

といまだに、深作欣二ワールドなんでしょうか





東京新聞でも記事が上がっています。

「新国立」建築家ら不満 条件厳しく応募に壁
2015年9月13日 朝刊

二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の事業者の公募で、建築家の間で「応募したくてもできない」という不満が広がっている。今回は設計と施工を一体で募る方式で、ゼネコンと組まなければ応募できないからだ。施工できるゼネコンも限られており、関係者の間では「このままでは二、三の案しか出ないのでは」と公募を危ぶむ声が漏れる。(森本智之、山口哲人)

 「組む相手が見つからない。他にも困っている建築家は多いと思う」
 二〇一四年に「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受けた坂茂(ばんしげる)さんは憤る。強度を高めた紙の管を用いた「紙の建築」で国際的な評価が高い建築家だが、今回の公募には参加できそうもない。

 旧計画のデザインコンペに参加した建築家の遠藤秀平・神戸大教授も「ゼネコンにラブレターを書いているが『難しい』と。案はできているのに、今のままでは99%無理」と嘆く。

 事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が今月一日に始めた公募では、二〇年一月の完成を目指し、設計からデザイン、施工まで一体で応募することを条件とした。旧計画のコンペで条件とした、著名な賞の受賞実績などは見送られたものの、建築家からは「前回以上に条件が厳しくなった」と言われる。今回は工事の難易度から、施工できるのは大手ゼネコン五社(大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店)と準大手の数社だけとみられている。

 その上、ゼネコン側には模様眺めの空気も漂う。大手のある幹部は「工費上限の千五百五十億円を守るのは厳しい。うちも本気で取りにいくことはない」と吐露。応募するゼネコンが少なければ、マッチングの可能性はさらに減る。

 ゼネコン一社で何案も応募できるなら、いろいろな建築家と組めるが、一社当たり一案しか応募できない仕組み。公募は十一月十六日までだが、前段階として、参加資格者を確定するための申請があり、今月十八日に期限が迫っている。

 日本建築家協会の芦原太郎会長は「『困った』という声は(坂さんら以外にも)何件かきている」と説明。「ゼネコンと組めたかどうかだけで、審査の前段階でいくつもの可能性がつぶれることになる。数が出ないと競争にならず、公平でオープンなコンペにならない」と懸念する。

 JSC広報室は、今回の公募方式を見直す可能性について「ルールとして決定された入札条件。既に公募も始まっている」と否定している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015091302000135.html



ヘーベルハウスがどう強いのか質問がきました。

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鬼怒川の堤防決壊は大変な災害になっています。
今なお行方不明の方々もいらっしゃる事態に大変心が痛みます。

河川の自然堤防の一部が削り取られていたとか、避難警報が遅れたといった事情も徐々に報道されつつありますが、

今回の報道の中で話題になっているのが、濁流の中で白い四角な建物が健在であったことです。

その住宅がヘーベルハウスらしいのですが、昨日から私のところ友人知人からも「ヘーベルハウスって強いの?」とか「ヘーベルって何が違うんですか?」という質問が寄せられていますので、解説です。

ヘーベルという会社が造っている住宅だから「ヘーベルハウス」と思っている方が多いのですが、「ヘーベル」は会社の名前ではありません。
この住宅を供給しているのは旭化成です。

以前、ハウスメーカーについて書きましたが、積水ハウスとは実は兄弟です。
参照:ハウスメーカー番付
参照:ハウスメーカー番付の上位はチッソ部屋出身力士


「ヘーベル」とは、壁に使われている建材の名前です。


ドイツのヨーゼフ・ヘーベルが1920年に起こした会社です。

そして1942年にALC(Autoclaved Lightweight Concrete)と呼ばれる軽量気泡コンクリートの製造を開始しています。



軽石のように細かな気泡を含んだコンクリート板を建物の外壁にすること思いついたわけです。
このヘーベル社のマークをみていただければ分かるように、




人が「うんしょっ」と板を持ち上げているように見えます。
それが特徴です。
コンクリートの板でありながら水に浮くくらいに軽いのです。

大工さんで持ち上げられるんです。

なので、海外では木造建築の外装にALCを使ったものもあります。


軽いので人の手で運ぶことが出来、発泡しているので釘も打てるというのが特徴です。
長板で一発で、防火性能をもった外壁工事ができるということで、重宝されているようです。

私は木造で集合住宅を造るときに床の遮音性能を上げるために、床に敷き込む仕様によく使いましたが、
日本では木造との組み合わせはあまり聞きません。

ドイツのヘーベル社はこの板だけを造っているわけではなくて、様々な建物を建てている建設会社です。
http://www.josef-hebel.de/start.html

このヘーベル社が開発したALC(Autoclaved Lightweight Concrete)と呼ばれる軽量気泡コンクリートを日本に導入して鉄骨の骨組みに組み合わて家づくりを始めたのが旭化成という会社です。

ヘーベル板と鉄骨の組み合わせは、現在日本国内の鉄骨の小規模ビル建設では普通の工法ですが、住宅でそのビル同等の構造スペックにしたうえで、「ヘーベルハウス」というブランドにしたのです。

つまり、「ヘーベル板」が強いのではなく、鉄骨ALC構造というビル並の二階建て住宅を、部材の工場製造によりプレファブ化したわけです。

そのため、各住戸ごとに構造計算に基づき設計がなされているという点が、ヘーベルハウスは強い、と言われている由縁です。

この写真はよくある鉄骨ALCのビルの現場ですが

使われている鉄骨は重量鉄骨のH構や角パイプです。
壁材料がALC、「ヘーベル板」と同じものです。
こちらの通常鉄骨材の方が肉厚で接合方法はかなりガッチリしていますね。

特に「ヘーベルハウス」ではなくても、街の設計士さんのところで「鉄骨ALC構造の家」でお願いすれば同等以上の構造強度の家は建つのです。

一方、ヘーベルハウスの構造部材はシステマチックに規格化されています。


梁に丸い穴が開いているのはF1車や、ミニ四駆でやるみたいな肉抜き軽量化してありますが、その後の設備配管や配線の通り道のためでもあります。

ヘーベルハウスは、規格化により現場作業量を減らす工夫をしているので、近所であっという間に建っているのを記憶されている方も多いでしょう。

ハウスメーカーとして商品規格を進めて、工業的モダニズム的デザインでブランディングした結果、「ヘーベルハウス」は独自の位置を確立していますよね。

そんな、どちらというと無骨系のハウスメーカーですが、ゆるきゃらが有名です。

ヘーベル君です。

このヘーベル君の「ハーイ」の声が、かつて佐野元春さんとコラボレーションされていた佐藤奈々子さんなのは、ちょっとしたトリビアです。



新国立競技場はSTOP!駒沢へGO!1

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新国立競技場のモメ事で、神宮外苑ばかりが話題になっているわけですが、東京のかつての郊外、今ではもはや都心と言われる駒沢にもオリンピック競技場があります。

しかも、外苑よりも広い。

外苑はこんな感じ


そして駒沢です。


しかも!この駒沢競技場、特撮のメッカです。

ウルトラQ、仮面ライダー、キカイダー、がんばれロボコン、ウルトラマンタロウ等々昭和の特撮ヒーローもので何度となく登場しています。

それもそのはず、この駒沢運動公園はですね、緑溢れる公園というよりも、どこか宇宙的なSFチックな香りが漂っている。

南米のブラジリアみたいな未来感覚でスペイシーな空間なんです。

建築物単体だけでなく全体のランドスケープデザインが秀逸です。



この入り口階段から施設の上部がのぞくアングルはいろんなヒーローの戦いで見覚えがありましたが、始めて現地に行ったときもこの階段からの風景は思ってた以上に未来でした。


メインの陸上競技場のデザインなのですが、曲面が巨大な爪のようにも花弁のようにも見えますが、このキャノピー(覆い)が宇宙船のような印象を生み出しています。

そして、この五重の塔のようにも、宇宙と交信しつつレーザー光を発しそうなタワー


この見え方だけで、実にワクワク感をそそるのですが、実はこれらのデザインアイテムは人の目線からの見え方を的確に捉え、実に上手くコントロールして出来上がっているのです。

施設を俯瞰でみるとわかりますが、全体の配置計画では競技場のキャノピー(覆い)も全体を覆っているわけではないし、タワーも視線で感じるほど巨大なものでもない。


にもかかわらず、施設景観の未来的印象を強く意識させて、建築のキャラクターを高めています。

これはですね。
伽藍配置です。


伽藍配置というのは仏教寺院の建物の配置の様式のことです。

仏教というのはインドでは宗教というよりも、思索によって宇宙の原理を極めようというような大学や研究所みたいなところでしたから、中庭を中心に僧房が取り囲むという今で言う大学のキャンパスみたいな構成をしていたんですね。
その建築形式を精舎といいます。

それが日本に伝来するに及んで、精舎の核施設部分を抜き出して先鋭化し抽象化した結果、日本独特の伽藍配置が生まれました。

回廊の中に、整然とキチっと塔と金堂を配置してあるわけですが、この配置が結構、微妙でして必ずしも中心軸を通してなかったりします。

法隆寺の配置はこうなっています。


なんか、ニコニコ動画みたいですが

俯瞰の写真です。



この伽藍配置の効果ですが、この回廊に囲まれた内部に入ると、仏教を解さない人であっても、ここが一つの現世から隔絶された別種の空間なんだということがひしひしと伝わってきますよね。

と、同時に金堂と塔の存在は、建物というよりもこの回廊内に配置された彫刻のような、いわば建物が二尊の仏像のようでもあり、オブジェクトと化しておりますが、この伽藍空間の中心めいたものはありません。

むしろ、何者かの不在を表現し、何者かの降臨を待っているかのようでもあります。


そのような、いわば建築物の配置の妙技。
空間の空白を最大限に活用しながら、ひとつの清廉潔白な白州の広場みたいなものを、駒沢競技場の設計デザインでは現出させてあります。


しかも、そのときに身振りの大げさな建築物でも、異様な形式を持った異物でもない、むしろほんの少し、ごく一部を触っているだけにもかかわらず、駒沢競技場にはどこか異界の、永遠に未来を待ち続けているような、独特のSF的な雰囲気を醸し出している。

最小限の操作で最大限のデザイン的効果を生み出している凄い仕事です。

これらの施設を設計した建築家は芦原義信さんです。



一見、ホンワカした優しそうな小学校の校長先生みたいな雰囲気ですが、もっの凄くシャープで理知的な建築デザインをされる方です。

一方、堂々と建築の美しさ、街並みの美しさ、について語る。
プロポーションについて語る。

そして、それを会得するにはどうすればいいか、を平易な言葉で論理的にみんなに教えてくれる、そんな先生ですね。

有名なところでは銀座ソニービルがあります。


芦原先生は建築や街並みの美的価値について大いに語られていますが、単体の建築のみがそれらの中で、独善的振る舞いをとることを潔しとしません。

同時にいわゆる現代美術のコンセプチャルな詭弁的解釈、建築家内々だけの詭弁的解釈を建築には持ち込まれませんでした。

そのため、この20年ほどは建築教育や建築雑誌上では、その存在感が忘れられている感があります。
若手建築家の知識上からもスッポリと抜け落ちている。

よく、戦後の日本の建築家とその系譜を語る建築評論家や雑誌がありますが、芦原先生に関してはその系譜からももれていたりする。

ところが!ですね。

芦原先生は、帝大→海軍→坂倉事務所→マルセル・ブロイヤーの事務所を遍歴されて、独立されたという輝かしい経歴をお持ちです。

そして、大学、様々な種類の建物を設計されていますが、高速道路のSA等の社会資本系のお仕事も数多くあり、知らず知らず芦原先生設計の建物の前を通り過ぎていた!なんてことがよくあるはずです。

代表的なお仕事はこちらの芦原事務所のHPに掲載されていますね。
http://www.ashihara.jp/da/html/work0101j.htm

戦後の日本建築界の中で、その土台を築かれたような方です。

特に!戦後復興のただ中でモダン建築と日本の伝統をいかに融合していくか、もしくは日本建築の精神文化を現代の技術でいかに表現可能か、に腐心した方ですね。

特に1967年のモントリオール万博日本館にその意気がよく現れています。


コンクリーとの梁を校倉状に積み上げて、高床式にしたパビリオンです。


無骨でありながら、コンクリートしてはギリギリの断面による横ラインだけで構成した抽象的造形ですね。


現代の建築家では北京の鳥の巣を設計したヘルゾーグ&ムーロンのように、建築固有の構成方法から離脱して、三次元のドライな立体操作だけで構築しようという現代美術やミニマルアートに通じるものですが、

芦原先生の場合は、そのような無国籍で実験的なものではありません。

これは正倉院ですね。


校倉造りです。


以上のように

芦原先生は、高度成長期の日本の社会が置き去りにしてしまいそうであった「建築や街並みの美学」に、「日本らしさ」をどう接ぎ木していくか
を真摯に考えておられた。

丹下健三氏や、黒川紀章氏のような派手な言動こそ控えられいたためか、いわゆるマスコミの寵児にはならなかった人ですが、戦後の日本の建築界で連投に次ぐ連投、先発から抑えまで大車輪のごとく活躍された、もう一人のエースだったのです。


その先生が設計したのが、駒沢競技場なんです。



外苑新国立計画は凍結し駒沢競技場の活用へ2

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先日来からの懸念事項が東京新聞に続き記事になりました。

懸念していた新計画に応募が1案か2案しか来ないのでは?というものです。


この件では、JIA(日本建築家協会)の芦原太郎会長、筒井信也専務理事ともお会いしまして、デザインビルド方式が昨今地方の公共施設でも増えてきており、公共入札における設計施工分離体系を脅かすものであり、危機意識を持たねばならん、というお話をお聞きしておりましたが、昨日意見書が提出されたようですね。



日本建築家協会、新国立競技場コンペで意見書
2015/9/15 19:26 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HMH_V10C15A9TJC000/

日本建築家協会(東京・渋谷)は15日、整備計画が仕切り直しとなった新国立競技場の設計や建設のコンペを巡り、「十分な競争原理が働かないことが考えられる」などとする意見書を発表した。整備計画再検討のための関係閣僚会議や日本スポーツ振興センター(JSC)に提出した。

今回は設計と建設が一体のチームを募集しており、意見書は「建設会社と組めない建築家の応募が難しい仕組みになっている」と問題点を指摘した。価格の透明性を確保する手立てをとることや、積極的な情報公開が必要とした。建設予定地の神宮外苑の周辺環境に配慮した計画案を選ぶことも求めた。


新国立競技場計画は本当に白紙見直ししてるのか?5

での予測どおりになってしまうとしたら、もしかしたら、2年間設計やっていたと豪語するデザイン再挑戦宣言のザハ+日建設計チームですら応募が出来ないかもしれない、ということです。

どうなってしまうのか?

ちまたの噂によれば、これまで建設受注予定でいた大成建設が資材を抑えているから、サブコン(下請け業者群)を抑えているから、他のゼネコンは元より、準大手ゼネコンでは早々に退散しているとかの、もっともらしき言説が飛び交っておりますが、、

大成建設も日本のゼネコンの横綱なら、横綱相撲を目指すなら、ここは一丁、「日本の建設業オールジャパンで考えるのだから、いずこのゼネコンがコンペに勝って頭になっても施工支援します!みんなどんどん応募して来い!」ぐらいのことは言って欲しいところです。

一方、大成建設意外で唯一応募可能性があると言われているのが、竹中工務店です。
戦国ゼネコン 竹中藤兵衛 巻の1
維新ゼネコン 竹中藤右衛門 巻の2

以前も竹中工務店について解説ましたが、果たして竹中工務店が火中の栗を拾うかどうか微妙なところだと思います。

と心配しておりましたところ!もしや名乗り出る?むしろ出て欲しいというニュースがありました!

それは!ガンバ大阪スタジアムがついにお披露目されたらしいのです。


直線主体で構成された外観


おおー!見事に完成している。


観客席とピッチが近い!


スタンドの傾斜角も最適化している。


ピッチの芝生がそろった予想図

本当に2年で建設したんですねえ。

このスタジアムは建設費用が寄付中心であったため、費用をどこまで抑えられるかが勝負だったようなんですが、費用対効果を超えている。むしろ一番立派なスタジアムなんではないでしょうか

その秘密はですね、徹底した現場作業の省力化だったんです。

建設通信新聞という業界紙でその辺を詳しくレポートしてあります。
ちょっと専門的な内容ですが、素晴らしい記事です。

引用ここから

【現場最前線】基礎の90%をプレキャスト化! 省人化徹底で挑む吹田市立スタジアム
http://kensetsunewspickup.blogspot.jp/2014/11/90.html


大阪府吹田市の千里万博公園内で、4万人を収容できる(仮称)吹田市立スタジアムの建設が進められている。この現場では、竹中工務店の設計施工案件であることを生かし、両部門が連携して着工の1年以上前から現場作業を極限まで減らすための検討・実験などを繰り返し、基礎のプレキャスト化を実現。以降の工程でも徹底した省人化を図っている。
 このプロジェクトは、国際サッカー連盟や日本サッカー協会の新基準を満たすサッカー専用スタジアムを建設するもの。サッカー界とガンバ大阪、関西財界で構成するスタジアム建設募金団体が事業主となり、法人と個人の寄付で建設費を賄う「みんなの募金でつくるスタジアム」としても注目を集めている。

規模はRC・S造6階建て延べ6万6355㎡。500kWもの太陽光発電や雨水利用などの環境配慮技術だけでなく、スタジアムピッチ照明はLED(発光ダイオード)を採用して大幅にエネルギー使用量を削減するなど、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)Sランクの「エコ・コンパクトスタジアム」を目指している。
 事業費は約140億円で、工期は約22カ月。在来工法ではこれらの条件をクリアすることが難しく、さらに建設業界では職人不足が深刻化してきている。そこで同社は中野達男総括作業所長が発案した基礎のプレキャスト化をはじめとする省力化に挑むことにした。

フーチングPcaおよびPC梁の設置状況

ことし5月に終えた基礎工事では、同社保有技術の「竹中式杭頭半剛接工法」をベースとし、工場製作したフーチングを杭頭にかぶせて接合材となるコンクリートを流し込んで一体化させる方法を採用。このコンクリートの配合も実験により、「36ニュートン、スランプ21cmでもポンプで圧送すれば密実に充填できる」(松尾享作業所長)ことを確認して使用した。
 そして、工場製作するフーチングや基礎梁は接続部分の鉄筋にスリーブ継手を始め、ジョイントに必要な材料を工場で事前にセットし、現場で簡単に接合できるように工夫。さらには平板ブロックでフーチングの荷重受けを兼ね、位置決め用墨だし板としても採用することで、床付け面の捨てコンクリート打設をなくした。
 こうした省力化を積み上げた結果、基礎全体の約90%をプレキャスト化することができ、これに伴って在来工法では1日当たり360人を要する作業員数を「50人ほどに抑えることができた」(松尾所長)という。


現在進めている地上躯体工事でも可能な限りのプレキャスト化とジョイント部の工夫などを徹底している。柱鉄筋は地組みするものの、その時に鉄筋がズレないようにテンプレートで固め、その鉄筋を所定の位置に立ててから、一体型に組みあがったシステム型枠ですっぽりと覆ってコンクリートを打設している。


 こうした工事を進めるとともに、現場内の「サイトPC工場」では、日々の作業から発生する細かい修正なども反映させながらさまざまなコンクリート部材を製作。4階のVIPフロアを挟み5階から立つ上部スタンドは3分割して製作したPC部材を地組みヤードで一体化し、総重量50-80tにもなる大型プレキャスト部材を揚重・取り付けすることで、工期短縮・省力化と高所での危険作業の排除を図っている。この揚重作業には日本に数台しかない超大型のドイツ製クレーン(リープヘルクローラー)を予定している。

 4万席すべてに屋根がかかるサッカー専用スタジアムとなり、観客席とフィールドが非常に近いことで、ダイナミックな臨場感を演出している。日本最大のVIPフロアをもち、約2000席のバルコニー席も併設する。「多様化した観戦スタイルにも対応できるサッカー専用スタジアムとして日本でのスタンダードを目指している。また、災害時は、吹田市の防災拠点及び避難所としての活用も予定している」(大平滋彦大阪本店設計部設計第5部長)。

 松尾所長は「既に寄付金の額は132億円を超えたと聞いており、今後も無事故・無災害を続け、皆さんのこうした思いをしっかりと形にしていきたい」と語る。

引用ここまで

「エココンパクト」という建物コンセプトが解説してありますが、屋根の太陽電池とか緑化とかいった子供だましの技術ではなく、ここで試みられている建設業での最大のチャレンジはですね。

「基礎のプレキャスト化」です。

これは凄いことなんです。

基礎というのは地面の上に最初に置かれる板というか梁というか、建物を支える基盤となるものです。
地盤が良ければ直接基礎といって固い地盤の上に置く、地盤が悪ければ固い地盤まで杭を打ってその上に置く。

置くといっても、建物全体に広がる広大な面積を持つ部分ですから、普通は現場打ちコンクリートになるんです。

現場で「墨出し」といって位置決めをし、杭打ちをして、その上に真っ平らな面を作るために「捨てコンクリート」を打ち、再度「墨出し」をして、そこに鉄筋を敷き詰めて、基礎梁の鉄筋をセットして、型枠を組んで、コンクリートを流し込んで、さらに鉄筋と上部構造とアンカーして、型枠組んで、コンクリートを流して、

と、一般住宅でもこの繰り返しの現場作業を経るんですね。
工期は天気にものすごく左右されます。

精度も現場で何度もチェックし続けないといけません。

上記記事で一番凄いのはここです。

工場製作する基礎梁はジョイントに必要な材料を工場で事前にセットし、現場で簡単に接合できるように工夫。

さらには平板ブロックでフーチングの荷重受けを兼ね、位置決め用墨だし板としても採用することで、床付け面の捨てコンクリート打設をなくした。

こうした省力化を積み上げた結果、基礎全体の約90%をプレキャスト化

在来工法では1日当たり360人を要する作業員数を「50人ほどに抑えることができた」

(by 松尾所長)


プレキャストというのは、プレ=事前に、キャスト=鋳出した、という意味でして、コンクリート部材を現場で流し込み固めるのではなく、プラモデル化、キット化してあるのです。
工場で部品化しておく.

その工場も

現場内の「サイトPC工場」では、日々の作業から発生する細かい修正なども反映させながらさまざまなコンクリート部材を製作。

現場で加工場を持つ、なんか昔の社寺仏閣の工事みたいですよね。現場の進行に合わせて部品を設計し製作し組み立てる。
工期を早くして一日あたりの作業人員も360人→50人、人件費が仮に1日3万円だとして、1080万円→150万円です。
しかも工場製作部品ゆえ精度は高まっている。

発注者も施工者も利用者もみんながWINWINじゃないでしょうか

こういうのが本来、建設業界がチャレンジする技術的課題だと思うんですよね。

この実績が今後の許認可にも反映していくこどで、どんどん川上から川下に流れていって、日本中の建設業者の技術や付加価値があがっていく、大手ゼネコンというのはやはりこういう砕氷船として頑張っていくのが使命だと思います。

「一番をつくろう」っていうのは、こういう一番なんじゃないか?と思います。

じゃあ、このガンバスタジアムで出来たことが新国立競技場で出来るかどうか?なのですが、、、

一番の問題があのブクブクにふくれあがったJSCが指定した肥りきった大きさと敷地の関係なのです。


誰でもないところからの眺め

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方南町をうろついておりましたら、昔ながらの商店街の中の本屋さんといった風情の秀文堂書店さんがありまして、フラフラと誘い込まれまれるままに、以前から買おうと思っていた文春文庫版の火坂雅志先生「真田三代」の下巻を購入したわけです。

で、ついつい2階のコミックコーナーに上がってしまいましたところ!
いがらしみきお先生の新刊がどよよどんっと待ち構えていました。

「誰でもないところからの眺め」 いがらしみきお




いったんは引き返そうと思ったんですね。
本日は見送ろう、と
そこまでの気構えが出来ていませんでしたから。

その気構えとは、もちろん「いがらしを読む気構え」のことなんですが、
以前から解説していますように

いがらしみきお「I(アイ)」1巻を買ってしまった

いがらし先生の作品はうかつには読めないんですよ、
「っしゃー!来いや!」というくらいに、精神がしっかりした状態でないと、
呑み込まれる。
初期友川かずきやジャックスを聞くときの心がまえといっしょです。


マンガといえど娯楽性はないんです。
命を削りながら書いてる。

しかし、表紙の装丁、そに描かれたいがらしタッチの大海原の波、そこに逆巻く不思議なオレンジ色の炎のごときもの

辛抱たまらず買ってしまった。
そして読んでしまった。

え~予想どおり、里山の裏側の森の中に人知れずあったような沼、思索の沼底に沈んでおります。

「アイ」を読んだ方にとっては「アイ」の続きのような、
「かむろば村へ」を読んだ人にとっては、「かむろば」以前のような、
そんなお話です。

いがらしファンには自明のことと思いますが、
先生作品のいつものような空恐ろしさに溢れております。


日常の微妙な変化、小さな気付き、その果てにある何か途方のないもの

その予兆
予言のようなものの数々が
あのデフォルメされた強いタッチの中で、
言葉少なに溢れかえっておりました。


「アイ」で追求されていた「私」とは何か、について
ヴィトゲンシュタインのように答えている。
そんなことは考えんでもよろしい、と

ヴィトゲンシュタインについて:魁!!クロマティ高校の哲学的考察 6

さらに、「アイ」で描けなかった、性についても

「性(せい)」とは、物事がはじめからもっている資質のことを表す広範囲な意味をもった言葉ですが、性格、性質、酸性・アルカリ性、経済性、といったように。

しかし、「性」だけで取り出すと、限定的に生殖、セックスに関する意味になります。

「誰でもないところからの眺め」では、そこに踏み込んでいます。

といっても、声高に論じたり、あえて露悪してみたり、賢しらぶってドライに解読しているわけではありません。

生殖なのか増殖なのか繁殖なのか、わかりませんが
生物は同族の個体をつくりだし世代という種の継続状況を形成しようとします。

「生きる」というのは、本来そういうことなのかもしれない。
少なくとも微生物はそうやって生きている。
社会性を持つ昆虫、アリやハチなども働きアリや働きバチ単体では生きていけません。
巣全体を含む社会構造の維持、そうやって生きています。

人間の「私」は、本当に人が生きるために必要なものなのか
そして、その本来的な意図と人間の性行動はある部分異なっている。

それを、儀礼や、コミュニケーション論で語る人もいますが、そのような難しい話しでもない、様々な小さなエピソードが大きな気付きをもって描かれている。

失われつつある「私」の中に残る性衝動といったものが、地震の予兆に震える田舎の港町の普通の生活の中で、普通に描かれています。

「羊の木」でも、そのあたりは描いてありましたが、どこかカリカチュアして滑稽にしてありました。

ということで、これから読む方にネタバレしないように、とりとめもない
解説になってしまいましたが、ぜひ皆さん読んでみてください。

文学であれば、完全に芥川賞ものです。

いがらし先生は、マンガの可能性のひとつを常に常に切り開いてらっしゃいます。

あの深くて広いデフォルメの海の中で

外苑新国立計画は凍結し駒沢競技場の活用へ3

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新国立競技場の見直しコンペについては、明日が応募者申し込みの期限のようですが、最終的に何社が応募するのでしょうね。

昨日までは、隈研吾+梓設計+大成建設氏チームしか応募できないんじゃないか、と懸念しておりましたが、本日新たな報道がありました。

世界的建築家・伊東豊雄氏、旧コンペに続き「新国立」コンペ参加へ

2015年9月17日6時0分  スポーツ報知
http://www.hochi.co.jp/topics/20150916-OHT1T50275.html

 世界的な建築家として知られる伊東豊雄氏(74)が2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場のコンペ参加に向け最終調整していることが16日、政府関係者らへの取材で分かった。

 伊東氏は建築のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」などを受賞。旧計画の新国立コンペでも最終選考に残り、景観に配慮したデザインで高い評価を得ていた。竹中工務店、清水建設、大林組の大手3社と組む見通し。

 新計画のコンペをめぐり、大成建設は参加の意向を表明し、木材を使ったビルなどが有名な建築家・隈研吾氏と組む見通し。旧計画でデザインを担当したザハ・ハディド氏は日建設計と組み、施工者と最終協議を続けている。鹿島建設は参加を見送る見通し。最低2者によるコンペ実施が決定的となった。

 9月1日に独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)が入札内容を発表。18日に締め切られ、審査を経て12月下旬に事業者が最終決定する。


なんと!竹中+清水+大林JV。

戦国時代でいえば!毛利+上杉+武田同盟とか
昭和のプロレスでいえば!猪木+藤波+鶴田同盟とか
スーパーロボット大戦でいえば!マジンガー+ゲッター+ガンダム
といった感じなんですよ。

そのスパーゼネコン3社JVを率いるのが伊東豊雄さん。
以前、旧国立を回収しちゃえばいいいんじゃね?と言ってた人です。

と同時に前回コンペでもデザインもされていました。
現国立競技場はチューンナップ出来るのか③

いずれにせよ、明日がエントリーのデッドラインですので何社が出揃うのか、見守るしかありません。

が、

私はもはや外苑計画は諦めて駒沢を活用してみませんか派です。

引き続き、駒沢について掘り下げていきたいと思います。

配置図がありました。


配置計画で見ると

案外、南北にも長いですね。


この駒沢計画なのですが、以前にも解説しましたが、
外苑での計画が頓挫して駒沢になったことがあるのです。

1940年のオリンピックですね。



外苑新国立計画は凍結し駒沢競技場の活用へ4

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駒沢オリンピック競技場の歴史をひもといてみようの続きです。

そもそも、この駒沢という地名は明治22年に出来たという比較的新しいものです。

現在の上馬、下馬という地名は元々、上馬引沢、下馬引沢が縮まったものだそうです。
源頼朝が奥州征伐に向かう折にこの付近で崖崩れに遭ったとか、馬を繋いだとか言われる由縁のあるところです。
その由来を持つ駒繋神社という社もあり、その脇を流れる川を蛇崩川といいました。


そのように近隣地名にあった「馬」と、野沢、深沢というこれまた近隣の地名「沢」を合わせて、「馬沢」ではなく、馬=駒と語呂を変えて「駒沢」となったそうです。


当時の地図を見る限り、主だった道は大山街道しかなく、農道のような道が曲がりくねっており、
明治、大正期までは山林および畑ですね。

この大山街道というのが現在の246です。
なぜ、大山街道なのか?といいますと、現代の都内在住者の人たちではまったく馴染みがないと思いますが、大山とは神奈川県の伊勢原市にある山です。


江戸時代まで、この大山(おおやま)は、別名阿夫利山(あふりやま)とも雨降山とも呼ばれ、雨乞いの神様として超有名だったのです。
万葉集にも吾妻鏡にも出て来るくらいの人気の山です。

そこへの参拝に行く大山講も組織され、関東中から大山詣が盛んだったんですね。


落語ファンならよくご存知の方もいらっしゃるでしょう。


その大山に向かう各地からの街道が大山道(おおやまみち)として整備されましたが、そのうち江戸からのメインのルート、青山ルートが現在の246になりました。


その大山道沿いに明治40年玉川電車が開通し、「こまざは駅」が出来ています。


ここに大正2年曹洞宗大学(後の駒沢大学)が移転してきます。

同時期に東京ゴルフ倶楽部も設立されています。


玉川電車の効果でしょうか、市街地が広がり始めていますね。
でも、まだまだ山林や田んぼ畑だらけ、「となりのトトロ」のような風景だったようです。

このゴルフ場を1940年の幻の東京オリンピックのメイン会場にしようとしたのは前述したとおりです。
返上後は戦局の悪化で、食料増産のための農地に逆戻りしていました。

そして、戦後に駒沢はプロ野球チームのホームになります。

東映フライヤーズ、現在の日本ハムファイターズです。

元々は東急フライヤーズと言って東急グループが、戦後復活した東京セネターズを引き継いだ球団です。


球場の入り口です。


昭和30年頃では敷地の真ん中に球場が存在しています。

この東映フライヤーズは、無頼派球団として大層人気を誇ったようですね。
東京をフランチャイズとする老舗球団でもありました。


フライヤーズの駒沢野球場は駒沢がオリンピック会場に指定されたことを受けて、1962年に取り壊され、その後フランチャイズが決まらず、神宮球場から後楽園球場に移り、1973年には日拓ホームという不動産会社が1年だけ保有した後に、日本ハムファイターズになりました。

その後は30年間、後楽園球場をジャイアンツと共にホームとして来ましたが、2004年から札幌ドームに移転し、北海道の球団となりました。

駒沢もスポーツと縁の深い土地柄ですね。

で、1964オリンピック会場計画が始まったわけです。
この建築について、戦前から関わっていた岸田日出刀、そして建築家の芦原義信さんをご紹介したわけですけど、実は芦原さんだけではないのです。

駒沢の計画の青写真には戦後の日本の都市計画の巨人とも言われる方が関わってたのです。

その人の名は、高山英華。

なんか、日本画の先生とか、俳号みたいな典雅なお名前ですよね。
華岡清州とか高野長英とかが思い浮かんでしまって、江戸時代の人みたいな印象をもっていました。


外苑新国立計画は凍結して駒沢競技場活用へ5

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1964年の東京オリンピック駒沢会場計画について掘り下げていきたいと思います。

この全体計画を取り仕切ったのは高山英華(たかやま えいか)という人です。
戦後の日本の都市計画界の巨人です。


様々な都市計画の立案や政府の委員等々を歴任されております。

ただ、その影響力というか成果は超巨大なのですが、個人的な活動やそのパーソナリティは皆目見当がつかない人でした。

著書や肉声等々の記録があまりにも少なかったからです。が、建築や都市を絡めた歴史的評伝や小説の執筆でも有名な都市計画家の東秀紀先生の著書、


「東京の都市計画家 高山英華」(鹿島出版会 2010)が出版されるにおよんで、初めて人間高山英華と、戦後の日本の都市計画への取り組みが、が活き々と我々の眼前に浮かび上がってきたというわけです。

BS朝日で本年放映された
近代建築誕生秘話Ⅳ 菊川怜が見た 建築家たちの東京オリンピック

https://www.youtube.com/watch?t=1&v=7u3HNEtuwm4

という番組で初めて知った方も多かったのではないでしょうか

この英華先生ですが、前述の岸田日出刀と同時期に1936年のベルリンオリンピックに行く予定だった人なのですが、しかも建築の視察ではなく選手として、それもサッカーの選手としてです。

戦前は現在の学科割のように専門の都市計画学科がなく建築学科内で都市や街区の研究もされていたようですね。

岸田日出刀と「外国に於ける敷地割類例集」なる図録の編纂もされています。

高山英華の都市計画巨人としての活動が戦後になって本格化するわけですが、その前に忘れてはならない都市計画家の先生がいます。
巨人の前の大巨人です。

この方も、雅号のような典雅なお名前ですよ。

近代都市計画の巨匠、石川栄耀

いしかわ、、、えいよう?、、、読めませんね。
いしかわひであき、と読みます。
が、えいよう、とも呼ばれていたようです。

栄(さかえる)そして耀(かがやく)
高山英華が、英(ひいいでる)そして華(はなやか)

戦前、戦後の日本の都市計画そして五輪計画のキーパーソンは、
キラキラネーム三人衆、栄耀、日出刀、英華と覚えておきましょう。


と、いいたいところなのですが、

東京オリンピックを契機として東京の都市計画の推進に関わった重要な人物がもう一人いらっしゃいます。

その人の名は!

山田正男

キラキラネームじゃない!

むしろ、ちょっとホっとする漢字、安心する感じ。

ところがですね、この山田氏は泣く子も黙ると言われるほどの東京都の初代都市整備局長として辣腕を振るった方なのです。

つづく

これでは新国立競技場問題の検証になっていない

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さる9月24日のことですが、
新国立競技場整備計画経緯検証委員会(第4回)の報告書なるものが発表されました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sports/029/shiryo/1361947.htm

これ読みまして、
う~ん、、なんていうか、、感想というか、結論ですが、
「これじゃ検証になっていないよね。」
です。



この報告書の根本的問題を指摘しておきましょう。それは文体です。
検証委員会の書き方は大体においてこういう書き方をしています。

「~は~すべきところをしていなかった」

(検証委員会としての見解は)~さんは、こうするべきだったのに、(なんらかの理由により)出来なかったんだよ。

これでは倒置法で当事者の代弁となる。
先生が生徒の代わりに言い訳してあげているような構造
やむを得ない自然現象的な天災さあったがごとき印象操作。

検証委員会と名打つなら、まず文体はこうであらねばならない。

「~は~を怠っていた。」とまず記述し、

その原因は、と書くべきなんです。


中学受験に失敗した生徒に、後から来た家庭教師の先生が

A君は、12月にもっと勉強するべきところをしていなかった。
B君は、算数のドリルを5章までやっとくべきところをしていなかった。

ではダメでしょう。

A君は、年末の勉強を怠っていた。
その理由は冬休みにゲーム三昧だったからだ。

B君は、算数ドリルを途中で投げ出した。
その理由は2章の割合のところが分からなかったのに、ちゃんと先生に言わなかったからだ。

と、して反省と対策を考えていないと、検証の目的として掲げてある「~検証結果を新たな整備計画の実施及び実施体制に反映させること。~」は出来ないと思いますよ。


「やるべきことをやっていなかった」とか
「やろうと思えば出来た子なのに」とか
「この子はまだ本気出してないだけ」とか

の検証ではまた受験に失敗する。



以下、順次理由を述べますが

まず発表された資料は以下のように並んでおります。

1.資料1 検証報告書(案)本文  (PDF:1740KB) PDF
2.資料1 検証報告書(案)参考資料  (PDF:4199KB) PDF
3.資料2 検証報告書(案)の概要  (PDF:464KB) PDF
4.参考資料1 新国立競技場整備計画経緯検証委員会による関係者ヒアリングの概要  (PDF:721KB) PDF
5.参考資料2 新国立競技場の計画の経緯  (PDF:1345KB) PDF
6.参考資料3 新国立競技場の工事費・解体工事費の変遷について  (PDF:93KB) PDF

上から順に1、2、3、と番号を振ると、この中で重要なのは1.と4.です。

2.はこの検証委員会の前提とか裏付け、これまで新国立計画中に発表された資料関係を集めたもの
3.は1.をわかりやすく表にしたまとめ
5.は出来事を日付準に羅列した日記帳みたいなもの
6.は費用の変遷をわかりやすく表にしたまとめ

1.は全部で61ページもありますから、最初の10ページくらいすっ飛ばしていいです。


最初に出て来る重要な資料は11ページ目にある新国立競技場整備計画に関わる主な関係者・関係機関という図です。

この上記仕組みがこの問題の機構を示しています。
車でいえばシャーシとか燃料とかボディとか電気系統のつながりです。

で、この問題の動力、エンジンが赤い部分です。



車の機構とエンジンは明記されていますが、一体この車を操縦していたのは誰だったんでしょうか?
それとも操縦者の居ない状態でアクセルを踏み込んでいた?
で、事故った?

新国立競技場問題は、やむを得ない自然災害ではないんです。
明らかに人災なわけですから、ここでどのように検証するかしないかで再発を防げるかどうかが決まるのです。

検証報告書の読解に戻りますが、次に経緯説明があります。

重要なポイントは次の2点です。

まず13ページの「新しい国立競技場に求められる要件について」です。

いわばお題ですね。

これ決めたのは有識者会議です。


この有識者会議のメンバーについては、今から約2年前の2013年の11月に解説していますのでご参照くださいませ。
新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について14


次に非常に重要な記述があります。

14ページですが
(3)新国立競技場基本構想デザイン競技における工事費が約1,300 億円程度と設定された経緯


初めておおやけの文書に大きく扱れわました。
「都市研(としけん)」です。


「都市研」はですね、これまでの新国立競技場の進行の随所に登場しているのですが、文字が小さく記述されたり、顔が見えないし、いわば黒子に徹していたので、クローズアップされてきませんでした。

しかし!第1回有識者会議の3月から第2回の7月までの4ヶ月間にJSCと9回も打ち合わせしている。

月に2回以上も何か頑張っている。


続きはまた後ほど

建築文化週間2015のお知らせ

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建築文化週間2015

建築夜楽校2015

2015年の都市建築状況を問う情報化社会が到来し、阪神・淡路大震災、オウム真理教事件のあった1995年から20年。2015年の社会における都市と建築は、どのような状況に置かれているのか?本年の建築夜楽校では、二つの事象にフレームアップして、その状況を問う。第1夜では、国民的な議論に発展してきた新国立競技場の議論を踏まえつつも、そもそもの問題点として、日本のコンペティションが歴史的に抱えてきた問題に切り込み議論する。第2夜では、人口減少社会の具体的な都市づくりに焦点をあてる。人口移動の問題、震災復興、地方都市の中心市街地の再生などを事例に、人口減少を空間の問題として捉え直す契機としたい



第1夜「日本のコンペティションは、このままでよいのか?」

日時:10月2日(金)18:00~21:00(開場17:30)
講演者(予定):
馬場璋造(建築評論家、『新建築』元編集長)
鈴木知幸(元・2016年東京オリンピック招致推進担当課長、順天堂大学客員教授)
森山高至(建築エコノミスト)
佐藤淳(構造家、東京大学准教授)
日埜直彦(建築家、日埜建築設計事務所代表)
浅子佳英(建築家、批評家)
田中元子(建築ライター、建築コミュニケーター)
モデレーター:松田達(建築家、武蔵野大学専任講師)
会場:建築会館ホール(東京都港区芝5-26-20)
定員:300名(当日先着順)
参加費:無料申込み:直接会場へお越しください。
動画配信:専用ページ(http://www.ustream.tv/channel/nKK95tdJPrY)をご覧ください。



これでは新国立競技場問題の検証になっていない2

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これまでまったく表に出て来ることのなかった「都市研(としけん)」の続きです。

第1回有識者会議の3月から第2回の7月までの4ヶ月間にJSCと9回も打ち合わせしていた!

ザハさんですら、全然直接対話がなかった!とのヒヤリングもあるようですから、
新国立競技場の施設計画についてそこまで打ち合わせしてた組織はいません。

いわばJSCや文科省の施設計画におけるご意見番というか懐刀として動いていたようなわけですが、

戦国時代でいえば、武将の陰に隠れて様々な作戦を具申する、そんなイメージが浮かんでくるポジションですよね。

武田信玄にとっての山本勘助、


徳川家康における本田正信、


三好長慶における松永久秀、


といった方々のイメージが去来するわけですが、、、

ありました。

第一回有識者会議の時点で既にここまでの計画をあらかじめ立てていたようです。

これをしょっぱなから会議で配布したみたいです。

注目すべきは断面計画


はなっから70メートル!敷地全体に広がる規模!

誰の指示か、それとも都市研からの提案か、

そこのところは不明なのですが、コンペにするんだかどうだかも決まっていない時点でこのポンチ絵が各委員の新国立競技場の規模の感覚を狂わせ、かつ拘束してしまいました。

これを第一回有識者会議でサラっとなにげなく通してしまっているために、コンペをどうするか?においても延々この根っ子の部分が顧みられることがなかったというわけです。

じゃあ、都市研さんは最初の種だけ撒いて、お役御免だったのかというと、どうやらそうではない。

コンペの審査にも関わっておられる。

これは!

新国立競技場計画の入り口にも出口にも都市研が見張っておる!

「前門の虎、後門の狼」ならぬ
「前門のとしけん、後門にもとしけん」
です。





新国立競技場問題の根本原因考察・情報の非対称性について

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10月2日の建築文化週間2015・建築夜学校で使ったスライドです。

このシンポジウムは新国立競技場問題を契機として、建築コンペのあり方を考える、という趣旨でした。

今回、公共建築における専門家と市民の断絶、情報の不透明性、自治体や行政の組織的不備が様々な面で問題視され、なおかつ議論のかみ合わなさが露呈したわけです。

その大きな要因のひとつに、建築の価値感のズレ、乖離を巡る問題が大きく横たわっていると考えています。

そのため、建築の価値をどうみていくかが、専門家においても一般の利用者においても、行政においてでも、首長においても、マスコミや専門情報紙においても、建築教育においても、建築現場においても、情報の非対称性が起きている。

そのことを是正する前に、その現実をまず認識する必要がある。

そんな趣旨です。

以下のごとく発表してきました。
当日説明不足の点も文章で補足しながらご報告いたします。



本来、「建築家と市民の乖離」、「建築家と市民の矛盾」つまり建築専門家とそれ以外といった対立構造があること事態がおかしいと考えています。
それは、他のジャンルで比較してみれば明らかでしょう。

「シェフと市民」、「シェフと市民の矛盾」、そんなレストランはすぐに潰れます。
「漫画家と市民」、「漫画家と市民の矛盾」、連載中止です。
「映画監督と市民」、「映画監督と市民の矛盾」、上映館が限られるでしょう。

しかし、
「デザイナーと市民」、「デザイナーと市民の矛盾」、これはなんか聞き覚えがあるような、、、
これではどうでしょう
「芸術家と市民」、「芸術家と市民の矛盾」、これもよく聞きますよね。

その理由は、供給者側と需要者側で直接的な市場ではないもの、大衆評価の前に専門家評価が優先していたり、開示の不足があるためです。
価値感のズレ、解釈や読み取りによる評価、それを生み出す情報の非対称性に起因していると考えられます。

「情報の非対称性」とは本来経済用語で、(asymmetric information)といいます。wikiによれば以下です。

市場取引において、保有する情報に差があるときの、その不均等な情報構造である。「売り手」と「買い手」の間において、「売り手」のみが専門知識と情報を有し、「買い手」はそれを知らないというように、双方で情報と知識の共有ができていない状態のことを指す。
情報の非対称性があるとき、一般に市場の失敗が生じパレート効率的な結果が実現できなくなる。このとき、必ずしも情報を持たない側に不利益が生じるわけではなく、情報を持つ側に不利益が生じることもある。

つまり、専門家だけが情報を占有しているからといって、必ずしも統合的優位にならないこともあるというわけです。
いわゆる博打の胴元がイカサマをやり過ぎるとその賭場には客がこなくなって不利益になるとかそういったことです。


情報の非対称性という用語は、アメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフが1970年に発表した論文 “The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism” で初めて登場した。
この論文は中古車市場を例に、情報の非対称性が市場にもたらす影響を論じたものである。買い手が「欠点のある商品」と「欠点のない商品」を区別しづらい中古車市場では、良質の商品であっても他の商品と同じ低い平均価値をつけられ、良質な中古車は市場に流通しなくなる傾向があることを指摘し、これを「売り手」と「買い手」の間における情報の非対称性が存在する(売り手のみが欠点を知り、買い手の側は欠点を知る術がない)環境一般の問題とした。なお、アメリカの中古車業界で不良中古車を指す隠語が「レモン」であるため、このような市場はレモン市場と呼ばれるようになった。


「レモン市場」という呼び名が面白いですね。
新国立競技場問題は「レモン市場」だったんでしょうか?
建築業界全体がレモン市場に陥っているのでしょうか?

今回は建築についてですので建築について議論すると、建築の評価は本来大きく下のレーダーチャートのように分類できるはずです。



わかりやすい言葉に代えていますが、右上から時計まわりに、「かっこよさ(デザイン性)」、「頭のよさ(哲学性)」、「こだわり(希少性)」、「性能の良さ(機能性)」、「お得感(経済性)」、「面白さ(話題性)」と分類することができるでしょう。



たとえば、デザイン雑誌やファッション雑誌に採り上げられるような建築物で、使い勝手が悪かったり、工事費が高かったりするような建物があったとすると、この上図チャートのようになるでしょう。



一方、ただただローコストを謳うハウスメーカー等の住宅で量販素材のみで、なんのデザインもしないで建った建物を考えてみた場合には上図チャートのようになるでしょう。

どちらが良いとか悪いとかを判断するものではなく、こういったチャートで分析すると、この二例では目的も目指す価値感も異なっているということが分かります。
同時に、チャート上で弱い部分を是正していくことが出来れば、より普遍的な評価に近づくというわけです。


ところがですね、建築物は一品生産なので当事者以外がその評価を下すのがなかなか難しいジャンルなのです。結果として実際に建った建物が流通するのではなく、二次複製物としての写真と解説が雑誌やメディア等の媒体を通して流通します。
それらの二次複製物を媒介として、建築物の評価が行われているといっても過言ではないでしょう。

と、同時にその建築を取り扱う雑誌においても、その主に評価するポイントがメディアごとに異なっています。

結果として、どの流通メディアに掲載されているかによって、建築的価値には大きく開きが生じています。

つまり、雑誌ごとに建築物の評価の重要度が異なっている点を理解する必要があるのです。



次に、このチャートの具体的使い方を解説します。
6つの価値基準は、3つのグループで二分することが可能です。
この右下がりの分割では、抽象的価値と具体的価値に分けることができます。
この二分線のどちらに比重が偏っているか?が重要な理解のポイントです。



この領域区別が非常に重要です。大衆にも訴求し専門家にも訴求するためにはここの右肩上がりのバランスが重要です。



建築専門誌だけでなく、一般マスコミに訴求するためにはこの左右のバランスが大事です。



具体的事例で見てみましょう。
1番目の事例は藤森照信さんの「高過庵」です。
高過庵では、ゲゲゲの鬼太郎の家のごときツリーハウスであり、文字どおり「高過ぎる」という観念的コンセプトと同時に、仕上げの土壁やグニャ曲げの板金といった具体的素材のリアリティがうまくバランスしていると同時に、細い木の上に展開する茶室的空間という漫画チックなふざけまくったシチュエーションが実際に存在するという具体的強度が特徴です。

2番目の藤本荘介さんの事例は、正直素材や仕上げに凝る余裕はないはずのチープな物件でありながら、脆弱な間仕切りがらせん状の空間を不確かに領域を仕切っているだけにも関わらず、そのような曖昧な空間の仕切りが、家とは何か、間仕切りとは何か、プランニングとは何か、建築とは何か、といった根源的問いを生み出す意味で、現世的には安物の建築にも関わらず、建築の存在意義を大いに揺らがす意味での評価が高まりました。初期フランク・ゲーリーの建築や齋藤義重を始めとする「モノ派」にも言及することが可能な、極普通のどこにでもある素材を用いながら、その具体性を超える価値を派生させようという
現代美術における試みにも通じる建築ですね。

3番目の難波和彦さんの「箱の家シリーズ」の建築ではサスティナビリティという語彙を庶民感覚に持ち込んだ事例として見ることが可能でしょう。現代建築の普遍的建材を実直に活用することで、誰でも手に入る可能性のある前衛建築のエッセンスを醸したデザインを模索され、建築物を施主と建築家の個人的な個別の一過性で終わらせることのないプロダクトデザインの領域にまで高めています。

以上のように、建築作品として評価を受けているといっても、その意味や性格が異なっていることが案外はっきりと把握可能なことがこのチャートの特徴であり、意義であることがおわかりいただけるかと思います。

そのように専門家に占有され定量しがたかった建築の評価の軸を俯瞰的に分析可能なチャートであることが立証されたといってもいいでしょう。

次に、もっとも重要な概念を図示します。



建築とは何か?を図解したものです。
この図に指し示しているものは、概念の構造です。

世の中に建っている建物と建築家の設計する建物のどこが違うのか?わからない、とか
同時に、パッと見ぜんぜん良いと思えないものが建築家筋だけで大絶賛されていたり、とか
使い勝手が非常に悪く、出来てからすぐに故障したり雨漏れしたりしてても、素晴らしい!とされている、とか

一方、お金もかけて素材にも凝ってデザインも良いと思うお気に入りの場所なのに、全然建築系の人には褒められない建物、とか

古いお寺の脇なのに、全然場違いな近未来建築に、街並み建築賞とかって信じらんない、とか

いろいろ不思議に思ったり疑問に思ったりしたことがあるでしょう。

それは、ですね。

「建築」という言葉の用法が、建築家と一般で違うからなんです。

「言語ゲーム」として同じボールを使って、片やサッカー、片やバスケやバレーボールをしているようなものだからです。

属する集団や組織で言葉の運用や語法が違うことを研究した哲学者でヴィトゲンシュタインという人が居るのですが、







カイジの「沼」に関する建築的考察1

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カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1
カイジの地獄チンチロに関する経済的考察  1

以前、もう数年前になりますがカイジシリーズの考察では多くの方々より、面白いと!か、なんだこれは!とか多くの批評や感想をいただいたわけですが、その当時より「沼はどうなんだ?」「沼をやってくれ!」と多くのリクエストをいただいておりました。

拙著「マンガ建築考」の執筆時にもこの「沼」はやるかどうかギリギリまで検討していたのですが
マンガ建築考 -もしマンガ・アニメの建物を本当に建てたら― (ThinkMap)/技術評論社

なんか、この「沼」のことを思い出すような事件、姉歯事件を思い出すような事件、建築業界を揺るがすようなとんでもない事件が勃発してしまいました。

それは
虚偽データ施工:横浜の大型マンション1棟傾いた状態
 

というものです。

現在はまだ続報中で詳しいことは分かっていないのですが、

大型商業施設に隣接する最高で12階建てのマンション4棟(計約700世帯)のうちの1棟。住民の相談を受けた市建築局が8月に確認したところ、この棟と他の棟をつなぐ上階の廊下の手すりに2センチの段差が生じていた。床も1・5センチのズレがあった。



そして、

元々の施主、分譲元である、三井不動産レジデンシャルが、傾いた棟にある計52本の杭を調べたところ、28本を調べ終えた時点で6本が地盤の強固な「支持層」に到達しておらず、他に2本は長さに不足があると判明した。

んだと

 また施工主の三井住友建設の社内調査で、地盤調査を行ったように装う虚偽のデータを用意していたことも分かった。他の場所のデータをコピーし、加筆した形跡があった。同社から市に対し、虚偽データがこの4棟にある計38本の杭で確認できたという報告もあったという。


ヒドイ!まことにヒドイ話しです。

非常に難しい施工条件であったとか
非常に難易度の高い特殊な工法であったとか
非常にアバンギャルドな挑戦的なデザインであったとか
そういったものでもない。

地盤調査データをゴマカシたあげく、そのデータに沿って施工されたであろう杭が、

実際は短すぎた。

そして、杭の長さが足りず、固い地盤まで届かない状態で施工され、

ついには
建物が傾いてきているということのようです。

施工後7年くらいを経過している物件、

非常に軟弱な地盤で難しい施工であったならともかく、海浜でもない、埋め立て地でもなさそうな横浜市の内陸側、新幹線の線路よりも山側。

こんなことってあるんだろうか、、、です。

建物が徐々に傾いてくる。


同時に、荒唐無稽と思われたカイジが「沼」対策で発案した手法ってあり得たんだろうか、という興味が沸いてきたわけです。

杭と地盤の関係について、ここでもう一度おさらいしてみなくてはならんな、ということです。

つづく


新国立競技場計画にもの申す!男気の遠藤秀平

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明日、いよいよ新国立競技場計画の見直し後のコンペ応募案が出ます!
といっても、すでに建築業界の大方の人は知っているんですが、、、
応募する建築家は隈研吾さんと伊東豊雄さんだけです。

たった2案です!

白紙撤回見直し!となったあげくの結果として

まあ、その原因は最初のコンペがメタメタで、予算や敷地条件や都市計画法を無視して審査員が選んでしまったザハさんの案をうまく現実化するところに着地させることができなかったからなんですけどね。

そして、この計画を引っ張利過ぎたあげくの果てに、時間がなくなってしまったんです。
もっと早く見直しておけばよかった。
もっと早く実施計画状況を政治家はじめ国民に知らせておけばよかった。
ということだったんです。

そのあたりの検証も中途半端になされていましたが、、、
ま、白紙撤回以降は次期コンペがどうなるか、、に私は集中してましたので過去のことはあまりほじってなかったのですが、すごい勢いで検証しまくっている人が出てきたので、
その辺はこの方のブログをご参照ください。

公に公開された情報のみで、ほぼ私と同じ見解に達してらっしゃいます。
kensyou_jikenboのブログ

特に100回目以降が面白いです。


 [新国立競技場100] 白紙化の要因…現時点での見解

 [新国立競技場101] 登場者検証1「ZHA」

 [新国立競技場102] 登場者検証2 「日建設計」

 [新国立競技場103] 登場者検証3 「JSC」

 [新国立競技場104] 登場者検証4 「検証委員会」

 [新国立競技場105] 登場者検証5 「和泉総理補佐官」

 [新国立競技場106] 登場者検証6 「ゼネコン・JSCと和泉氏」

 [新国立競技場107] 登場者検証7 「和泉劇場」

 [新国立競技場108] 登場者検証8 「安藤忠雄氏」

 [新国立競技場109] 登場者検証9 「槇文彦氏」

[新国立競技場110] 登場者検証10 「建築家の方々」

で、見直しコンペですが、デザインビルド方式というものになったんですね。
どういうものかというと


日刊建設工業新聞のサイトにうまくまとめてあります。

新国立競技場整備プロポ手続き始まる/鍵握る工期短縮と工費縮減 [2015年9月9日10面]



上図のように、前回の反省からデザインを迅速に具体化できるように設計者と建設会社は初めからチームを組んでね。というものだったのです。

日本にはスタジアムの施工をおこなうことができるくらいのゼネコンは大手5社から準大手10数社、それに次ぐゼネコンまで入れると20数社は存在していますから、少なくとも数社から10数社の応募が見込めるといいなあ、と考えていました。

が、現実は「大成建設さんがどうせ取るんでしょうから、遠慮しときますわ」でした。
これ、実際に私が「日本のためにオリンピックのために日本の建設界のために応募してください!」と接触したいくつかの準大手ゼネコンの役員さん達が言い放ちました。

なぜ接触したか!
それはですね、もしかして本当に大成建設だけになってしまうのか?という不安もあったんですが、もう一つは

「応募しよう思て関西系のゼネコンさんと連絡とってんねんけど、誰も応じんわ」
という声を聞いたからなんです!

誰から?

遠藤秀平さんからに決まってるじゃないですか!

以前、建築家の遠藤秀平さんについて軽く解説したことがあるんですが
上海万博にはこの人に頼むべきでした!→ 遠藤秀平さん

遠藤秀平さんは実は前回のコンペに応募されていました。
そして、伊東豊雄さんと同様、新国立のコンペのあり方、要項、審査委員たちへの批判もされていた。
応募して落ちたもんが何ゆうてんねん、という逆風もモノともせず。
そして、昨年わたくしが蟷螂の斧を振りかざし、新国立にガンガンもの申して苦しいときにも、「ホンマ君勇気あるわ」といろいろ励ましてくれていました。
私にとりまして20年来の友人というか兄貴分的な人なんですね。

ま、その遠藤先輩が困っている。
パイセンがコンペに応募するために組んでくれるゼネコンを探している。

同時に、今度ご紹介しますが遠い海の向こうオランダ活躍している日本人建築家の友人、松浦さんが所属するMAXWANも応募を考えているが国内ゼネコンが見つからない、、と相談を受けておったわけなんです。
建築家の横河健さんともいろいろ対策を話し合って、、JIAの芦原太郎さんともお会いして、ということで奔走しておったわけですが、、、、


日本の準大手ゼネコンときたら、、こうですよ。

結局、大成さんが出すんだったら、、楯突いたことになるのは、、どうせウチらに決まらんし、、無駄なことはしたくないんで、、、時間もないし、、とグジグジグジ
大成さんが大成さんが大成さんが、、、

ほんなら、大成死んだらおまえも死ぬんか!!
と言ってやりたくなりました。

初めから取れるとか取れないとか、無駄だとか、負けるとか、怒られるとか
本当に男気の感じられない業界になったもんだな!
と失望しておりました。

結局、遠藤さんにも松浦さんにも力にもなれず。

それから二ヶ月後の先週ですが、遠藤さんから連絡があったわけですよ。

「森山くん?新国立競技場の設計できたから見にけえへん?」

はあっ?
やってたんですか!

「うん、この件日本の建築界にとって大問題やねん。誰かがな異議申し立てせえへんとな。このまま無風状態でさら~っと行かすわけにはいかんやろ」

なにかっこいいことやってんですか!

というわけで大阪に行ってきましたよ!

新国立競技場計画にもの申す!男気の遠藤秀平 2

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というわけで行ってきましたよ。
http://designde.jp/2015/10/endo-shuhei-world-miniature-world/

現在開催中の展覧会です。



会場はですね
3つの世界が混在して遠藤ワールドを展開しておりました。

遠藤さんがこれまで世界各地で収集してきた建築のミニチュアが飾られております。


このコーナーはちょっとみうらじゅんさんみたいなテイストですね。

そして遠藤さんがこれまで設計した建物のコンセプト模型たち


そして!本当にあった
新国立競技場案

誰にも頼まれてもなく、応募もできないのに!です。


なぜ、設計を続けてきたのか?
に対する回答です。



図面


これは配置図ですね。
どうやら明治公園は公園のままですね。


こちらが平面図
数カ所の出っ張りが出入り口のようです。



見直し設計コンペ要望にある陸上トラックと球技の併設型ですね。
続いて断面図


確か7万人収容でしたか?
高さは50メートル前後ですが、ゆるいドームになっていますでの周辺高さは実感では30メートルくらいでしょうか


構成は非常に単純化されています。
いわゆる海洋生物、イソギンチャクとかクラゲ、そして植物プランクトン型ですね。


鳥瞰図です。



続いて外苑西通り
当たり前のことですが人工地盤は無しです。


内部パース





というのが建物の概要です。

で、ここからどうしてここまで単純化しているのか
ですが


工程管理です。
はい、出ました。

ショートケーキ方式、ピザ方式、お好み焼き方式(ただし広島風は除く)ですね。


施工期間を短縮化しようというものです。
2019年の春完成予定?じゃあラグビーワールドカップも視野に入りますね。

そして断面詳細


ここにいろいろな工夫があるのですが、後ほど解説します。
ピンク色の※脚注は私が加筆したものです。



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