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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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新型コロナウィルスにおける建築的考察⑪

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医療機関の空間が感染症に対して脆弱なんじゃないのか?

大丈夫なのか?についての続きです。

 

BBCで大変なニュースが流れました。

東京圏の病院は「感染患者でひっ迫」 新型ウイルス専用治療室の内部

 

 

聖マリアンナ医科大学には感染症センターがあるのですが、そこのICUに新型コロナウィルスCOVID-19の患者さんを収容していて、

これ以上患者さんが増えると大変な状況とのことです。

 

この映像にもあるとおり、ICU( Intensive Care Unit =集中治療室)では、呼吸、循環、代謝その他の重篤な急性機能不全の患者を、

24時間体制で管理することになります。

 

通常、ICUは手術室を同じように清浄ゾーンとして管理されているかと思いきや、
 

重篤な急性機能不全を対象ということで、必ずしも感染症を対象としていないため、下図のようにICUは手術室とは違うゾーン管理です。


 

このレイアウト図のあるように、手術室まわりはどこの病院も清潔ゾーンと準清潔ゾーンの管理計画を元にプランニングされています。

 

しかしながら、新型コロナウィルスの患者を収容したICUはBBCのニュースで、イエローの先の汚染ゾーンと設定されます。
 

当然といえばそうなのですが、感染症患者を収容したICUは汚染ゾーンになるわけです。

だから、そこで患者さんの治療にかかわる方々の入出管理が大変に重要なんです。

 

この映像でもわかるように、青いフレームのパーティションで廊下を臨時に間仕切って気密性を確保していますね。

この工事をやらなきゃいけないんです。
 

今後、各地で新型コロナウィルスの患者さんに対応する医院では、発症者のケアと隔離封じ込めをやらなきゃいけない。

しかし、通常の医院はそのように設計されていないんです。

だから、既存プランの中から動線と空気の流れを考慮したゾーン管理と緊急的なリフォームが必要になってくるということです。

 

 

この映像でも廊下は安全ゾーンだけど、ICUに入るための前室は「この先黄エリア」と表記されていますね。

つまり、この先は準清潔ゾーンの前室を介して、患者さんがウィルスを放出しているレッドゾーンなのです。

 

しかし、ICUというのは日本語で集中治療室というように、いろんな生命維持装置をつなぎ、患者さんの状態を常に経過観察しなくてはいけない状態です。大勢のスタッフがつきっきりで、生きるか死ぬかの患者さんを診ているそういう空間なんですね。

 

だから、通常はむしろ、オープン。

さっと、行き来ができるように。

 

 

患者さんのプライバシーに配慮してカーテンだけとか、

重篤な患者さんだったりすると意識もないのと、誰か部外者がのぞき込むわけでもないので、
 

少ないスタッフで、ベッドを回すためには、もうフルオープン。

 

 

そういう、空間です。

急に状況悪くなることもあるし、急ぎで対処できるように、ヘルプも呼びやすいように、という意味でも。

 

 

ところが、ですね。

新型コロナウィルスの感染患者さんをICUに収容したらどうなるか…というと、

 

海外の報道ではちゃんと伝えてくれていますが(日本ではなぜか報道しませんね)、

 

こうなります。
こうしないといけません。

 

 

防護服にマスクだけじゃないんです。

 

よく見てください。

マスクからチューブが腰や背中に伸びている。

 

全員、フルアーマー。

この空間内は患者さんから排菌されるウィルスで満ちているからです。

 

 

なので

防護服だけではダメです。

「バーサフロー」が必要です。

 

バーサフローというのは、日本語で「送気マスク」と呼ばれるもので、もともとは医療機器ではなく、建設作業機器です。

溶接や塗装作業時の有毒ガスから人間を守るものですね。

 

 

 

溶接のときになぜバーサフローが必要かというと、溶接時になんかモクモクしている煙みたいな蒸気。

これ、気化した金属で「溶接ヒューム」と呼ばれるものです。

 

 

この煙は気化した金属が細かい粒子として浮遊しているもので人体に有害で、細かすぎる粒子は呼吸により肺の奥の奥まで侵入して排出できなくなり、長く吸うと「じん肺」という病気になります。

なので、フルフェイスで空気をろ過できる装置のついた機器が必要なんです。

この溶接ヒュームの大きさが、なんと!ウィルスの径とほぼ同じ。

 

だから、これを装着していれば空気中のウィルスを吸い込まなくてすむのです。

 

 

この腰や背中にある小さな箱にフィルターと送風装置が入っていて、それを背中にしょってフルフェイスマスクをかぶり、

防護服を着る必要があります。

 

なので、現在、工事が止まったり生産が止まったりしている鉄鋼関係、塗装関係の業界は組合や元請けを通じ、

バーサフローや防護服、フィルターの在庫や装備の数を把握して、地域の病院に提供してください。

 

また、国土交通省も大手ゼネコンを通じ、この建設系・自動車製造系の膨大な工事関係者に大至急調査アンケートをおこない、

地域ごとの装備の備蓄と、新型コロナ感染者受け入れ先の病院への配給計画を立ててください。

 

日本中で先生方が感染し重篤化し亡くなったりしたら、新築の病院計画もなくなるんですよ。

 

 

ICUは、新型コロナウィルスのときには、それだけの装備が必要な空間ということになるんです。

 

でないと、院内感染や医師や看護師さんはじめ医療スタッフが守れない。

 

それだけじゃなく、

 

建築の配置計画でみた場合にはさらに問題があって、

ICUは重篤な患者さんの経過観察の用途なので、

通常は、

大事故や大けがで救急で運ばれてきた手術後の患者さん、癌はじめ多臓器に病気があり大手術後の患者さん

を想定しているから、手術室のすぐ近くにあることが多い。

 

 

そこが、汚染ゾーンとなるので、医療動線上も非常に支障をきたす可能性が大なんです。

 

ほとんどの病院の配置計画では、上記の手術室隣接で病院のセントラルコアとして、もっとも重要な核空間に鎮座してます。

ざっと最近の病院計画をながめていてもこんな感じですね。

 

ICUは手術室に隣接しつつ、エレベーターや中央廊下に近い、動線の扇の要みたいな位置

 

 

ここでは、手術室との間に多少のバッファーゾーンがみうけられます。

 

 

この病院では、もっともいろいろな動線が交差する位置にICUがあり、迅速にスタッフ対応ができることを想定してます。

 

 

 

この病院もそうですね。

もっとも重要な奥の院にICUがある感じです。

 

 

 

つづく

 


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