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新型コロナウィルスにおける建築的考察⑩

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医療機関のゾーニング対策の続きです。

 

こんなプランの病院建築があるとして、どうやってバイオハザードを防ぐのか…という話です。

 

豚コレラの蔓延のときから、いろいろとご教示と示唆をいただいている元国会議員の笹山登生さんhttps://twitter.com/keyaki1117が、
こんな記事をまとめてくれてます。
 

新型コロナウイルス院内感染並びに病院関係者感染等医療機関一覧
 

全国に蔓延を続けてきた新型コロナウイルスによる感染は、病院の関係者をも巻き込む感染も広げてき、2020年4月に入ると、その院内感染の数は、急速に伸びを見せています。

そこで、これまで知りえた情報をもとに、今年2月から4月にかけての全国の病院・医療機関での感染例をリスト化してみました。

なお、これらの中には、原因究明中のものも含まれており、あくまでも、途中経過で院内感染や医療関係者への感染が認められるものも含まれていることをご承知おきください。

(2020年4月22日現在での集計)

 

すでに全国で250件ちかい病院で院内感染や医療関係者への感染が起こっているんですね。

 

これを見て、病院なのになんで!と思われる方もいるかもしれませんが、病院なのに!ではなく、

病院だから、当然ながら感染のリスクはあるのです。

患者さんと直に接して、患者さんを直に診て、患者さんを直に助けていく、それが医師や医療関係者なんです。

 

政府が、今後は新型コロナウィルスの検査を市中病院でもおこなう方向で調整しているようです。

これは!市中の一般開業医にとっても、そこで働く看護師さんや医療事務の方々にとっても、大変な事態です。

 

なぜなら、この30~40年は、致命的な疾患を抱える感染症患者が来院することなど想定してこなかったので、

どう対処していいかわからないからです。

しかも、病院によっては、通常の診療科を閉めて、新型コロナウィルス患者の入院を受け入れる方針を打ち出してきているところもあります。

そうなると、これまでの科の先生やスタッフは休業なのかというと、にわかにコロナウィルス担当になってしまうかもしれない…ということで、

大変、不安な状況。

だけでなく、マスクも防護服もないのに、危険な感染症に関わっていくことに対するリスクから、やむを得ず休暇、もしくは退職、といった事態も起こっているという話も聞きます。

 

そういった事態を防ぐためにも、病院建築は「ビフォアーコロナの開放的な空間方針」から、

「アフターコロナの防疫的空間構成」に変えていく必要があるかもしれませんね。

 

ただ、その防疫的空間構成というのは、新しいものではなくて、つい50年ほど前までは当たり前のことだったんです。

それは、ある不治の病、つい最近まではこれに罹ると助からない…と思われていた。

その病とは、結核です。

 

かつての病院建築は、結核の存在を前提にしていたので、感染に対する空間設計にも配慮していたのです。

 

同時に、現在新型コロナウィルスCOVID-19で感染症専門の病床に収容されている方々のいる場所は、結核用に準備されていた病床です。

 

つまり、病院施設がCOVID‐19に対処するには、結核に学ぶ必要があるということなんです。

 

こんな論文がありました。

結核を想定した感染症指定医療機関の施設基準に関する研究 筧 淳夫 平成20年

日建設計も竹中も鹿島も協力しているような研究です。

 

結果として、病室は以下のようにする必要があると言っていますね。

 

病室は原則として個室

結核患者が自由に行動できる特定区域を設けることがのぞましい

病室は前室を有していることがのぞましい

入院期間は長く、平均2か月であり、病室面積は15㎡以上がのぞましい

病室内にトイレ、シャワーを設けること

病室の開口部はできるだけふさぐ

病室の扉は自閉式

病室は原則として陰圧

病室では適当な換気をおこなうこと。換気回数は1時間あたり12回以上

病室内の患者に安全に接することができるように空気流の方向を設定すること

施設内の空気は清潔区域から汚染区域に流れるように維持する

病室の空調換気設備は、全排気方式(空調機への還気をおこなわない)がのぞましい

病室の空調換気設備を再循環式にする場合はHEPAフィルターを備えること

病室は独立した排気とすること

病室から直接屋外排気でよいが人が近づく可能性がある場合はHEPAフィルターを設置

病室の排気は、外気取りレグ地や病室窓から離すこと

旧排気装置が停止した場合の対策を講じること、気密ダンパの設置。

病室内に手洗い設備を設けること

手洗いの設備は自動水栓など手指を使わないものがのぞましい

排水を適切に処理すること

結核患者が使用する検査室は陰圧とすること

結核患者を収容している病室は陰圧状態を保つために窓を開けないこと

結核患者を収容している間は陰圧状態を毎日点検し記録を残すこと

病室に医療スタッフや家族が出入りする際にはN95マスクを着用すること

結核患者が病室の外へ出る場合はサージカルマスクを着用させること

結核患者と他の患者を同時に入室させないこと

HEPAフィルターの適切な保守管理をおこなうこと

院内感染対策委員会による運用の敵的評価を実施すること

 

陰圧室の構成です。

 

 


陰圧制御を厳格におこなっても、目の前の廊下には菌が落ちてしまっているんですね。

なので、やはり空間的にもつなぎの部分、廊下が要注意だということです。

同時に、食品工場でも再三再四、洗浄していた靴底の清浄化が、感染抑制の鍵になるということです。

 

そもそも、我が国の病院建築をひもといてみても、たかだか50年ちょとなんですね。
 

入院したときの各室にクーラー等の空調設備が一般化して、30年くらいですかね。

気密性の高い扉や窓も同様です。

 

それまでは、やはり風通しと採光を意識していたのと、機能上も感染症の病床は物理的距離をとっていました。

 

1950年に、東京大学建築学科の吉武泰水助教授らにより、186床の綜合病院モデルプランが提示されています。
平面図中央の南北に走る廊下部分がコンクリート造で、左側の厨房や手術室などの部門とは、

右側の病棟(木造)部分と区分して計画されていました。 


またこのモデルプランは、当時アメリカから日本に導入されたばかりの新しい病院管理の考え方を具現化することが意図されていて、
それまで診療科ごとにそれ ぞれ計画されていた手術、サプライセンター、検査、サービスなどについて中央化が図られており、

今日では常識となってい る病院の管理運営の考え方が、具体的に建築計画モデルとして示されています。

実際に、このモデルプランをほぼ踏襲して、県立中央 病院など地域医療の中核となる病院が数々建設されています。

ちょうど、全国に小学校の整備も進んでいた時代で、小学校の校舎の平準化と同様に、
ひとびとの生活に欠 くことのできない医療施設を、一定の水準 を保ちつつ、短期間で大量に整備することが求められたこの時代では、

モデルプランが有効に活用されたと考えられています。

 

こんな平面図、ちょうど真ん中に背骨のような大廊下動線があって、魚の骨や樹木の枝のような構成です。


このプランのゾーニングをわかりやすく色分けするとこうなります。

 

簡単なレイアウト図に見えますが、病院建築の肝を抑えた構成。

同時に、低学年、高学年、特別教室と、職員室エリア、宿職室等もあった、かつての小学校にも酷似していますね。

 

つづく

 

 

 


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