書評書きました。
「築地移転の闇を開く」
中澤 誠 (編集), 水谷 和子 (編集), 宇都宮 健児 (編集)
移転予定ギリギリで、問題が大きくクローズアップされた豊洲市場移転問題。それ以前から10年以上の長きにわたって粘り強く問題提起に取り組んだのが、著者の中澤誠さん、水谷和子さん、宇都宮健児さんらである。
本書はこれまでの経緯を、原因から問題の推移まで、特に中澤・水谷の二人が対談形式で語り尽くし、現在、巷で語られている豊洲市場問題における、正確でかつ根本的情報が開陳されている。
この問題の本質は、公共事業における公の概念を、真っ向から否定したことにある。卸売市場における公益性とは、生鮮食品の安定供給と適切な価格形成にある。そのために市場には非常に数多くの職種の関係者が、複雑な関係性を保ちつつ従事している。
ところが、計画を急ぐあまりに用地取得を強引に進め、施設設計の内容について、市場関係者の合意を得ることなく設計や施工が開始された。その杜撰なプロセスにより、公共施設として必須な検討事項や機能性、安全性が、疎かにされてきた。
もし予定通り移転していたなら、即日、市場機能は混乱を来たし、その後は永遠に機能回復しない可能性もあったのだ。
いわゆる「のり弁」と揶揄される黒塗りの行政開示書類を読み解きながら、欠けたジグソーパズルのピースを組み合わせ、最終的にその実態を詳らかにしていく経緯が、まるで遺跡発掘や事件捜査のようなノンフィクションドラマのように小気味よく、時にユーモアも交えながら展開していくのも本書の魅力である。
(大月書店1200円)
大月書店さん
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b272921.html
出版ロバの耳
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