HACCPとコールドチェーン、これ別々の概念なのですが、
コールドチェーンをやろうとするとHACCPも出て来るし、
HACCPの実現にはコールドチェーンも関連するという互いに切っても切れない関係です。
どちらも、食品の取り扱いを巡る衛生管理や品質維持のための手法と機構です。
まず、カタカナ語でなんとなくイメージしやすい「コールドチェーン」の方からいきますが、
「コールド」は冷たい
「チェーン」は自転車のチェーンや鎖のことを指しますが、連結させる、連鎖する、という意味です。
つまり、冷たいままの繋がり、冷温維持接続といったことでありまして、要は温度を管理したまま全体をつなぐ、ということ。
食品の生産地・生産者から消費地・消費者まで持って行く、流通させる、ということです。
それはなぜか?というと
食品は温度変化によって価値が損なわれたりしやすいからです。
つまりは腐りやすい。
腐ったものを食べると中毒を起こします。
それを防ぐのが根本の目的です。
かつては、冷蔵庫も氷もありませんでしたから、魚にしても野菜にしても遠隔地に運んだり、長期に保存するためには、冷蔵ではなく塩蔵でした。
一部の細菌、塩が大好きな好塩菌を除き、細菌やカビは塩分濃度が高い状況下では、浸透圧により菌内部の水分が外に引っ張り出されて死滅することを狙ったもので、世界中の食品加工文化において塩蔵は発展しました。
つまり、コールドチェーンならぬ、ソルトチェーンによって、食品は保存流通されていたのです。
福井県の小浜から京都までの若狭街道を通称「鯖街道」といいましたが、若狭湾で取れた生の鯖を塩でしめて人力や馬に載せて丸一日かけて運びました。
現在では、この「鯖街道」はマラソンコースや街道沿いの観光地としても整備されています。
欧州の食文化には欠かせない、ハムやソーセージもこの塩によって、保存流通させた食品、ソルトチェーンですね。
塩が効かない好塩菌に対しては、有害な菌に対抗できる無害な好塩菌で醗酵させるという手法を編み出しました。それが味噌や醤油といった醗酵食品です。
何もかも殺菌できるような技術をもたなかった時代に、有害菌に対抗しながら食品価値を維持するために進化したのが各地の食文化を多様かつ芳醇にしてきた醗酵食品です。
こうした、食文化や食品貯蔵技術の発展により、食料の乏しいエリアや季節でも人類は活動範囲を広げてきたといえるでしょう。
そういた意味では、コールドチェーンというのはここ50年くらいで確立されてきた技術であり、冷蔵装置や冷凍装置は、登場してまだ100年も経過していません。
しかしながら、その流通技術の発展により、より遠くまでより早くより長期に、食品は運ばれ貯蔵されることが可能になりました。
続いて、HACCP
エッチエーシーシーピー?ではなく、ハサップと読むのですが、
HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略です。
Hazard Analysis (危害の分析)、Critical Control Point(重要な管理のポイント)
HA分析に基づいて健康へ悪影響をおよぼす可能性のある要因の発生を防止または排除、もしくは、許容できるレベルにまで低減するための工程(CCP)を決め、その工程を重点的に管理する手法であり、これまでの事後対応型ではなく、食中毒などの健康危害の発生をあらかじめ予防することを念頭に置いたものです。
1993 年に国際食品規格委員会であるコーデックス委員会により食品産業事業者が守るべき、国際的な食品衛生管理システムとしてHACCPシステムが位置づけられました。
特にEU市場に水産物を輸出しようとすると、HACCP システムによる衛生管理の導入が必要となります。
ここでも、テーマは食中毒や異物混入の防止です。
コールドチェーンもHACCPも目新しい言葉に聞こえますが、
食品を長期に貯蔵し、遠隔地に届ける、というのは人類の生き残りをかけて培ってきた、普遍のテーマなのです。
つづく