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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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築地市場の豊洲移転が不可能な理由⑦

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築地市場と豊洲施設の何が違っていて、何が問題か?の続きです。

配置計画を含めたプランですが、

築地市場のいわゆる場内というのは、メインの建物とその周辺にいくつかの建物が林立し、その間間のスペースを行き交っているということでした。

それが、豊洲では、行き交う部分は無くして、建物中にそれらを囲い込もうとしている。
同時に、いったんその建物の外に出ないと移動できないということがわかりました。

では、なぜそれではダメなのか?です。

それを理解するためには、築地市場内で魚荷がどのように流れていくかを知らなくてはいけません。

築地市場のHPにはその名もズバリ「市場を構成する人々」というページがあります。
http://www.tsukiji-market.or.jp/chuou/hataraku.htm

そこに、エクセルかワードで作成したであろう、こんな絵がありました。


たしかに、流通の流れを説明するにはこれでいいのかもしれませんが、、

ちょうど、プログラムや作業工程を組むときのフローチャートみたいにモデル化、単純化されています。

「生産者→出荷→(卸売→仲卸→買出人)→消費者」となっていると、

つながりはこうだ!と、だから豊洲は6区と7区は通路でつながっていさえすればいいんだと、道路をまたごうが、なんにしようが別施設でもいいんだと、、、机上で考えてやがる馬鹿者!

「6区と7区はアンダーパスでつないであります~」とか、アンダーパスとか横文字で言やあ、なんだか特別な対処をしたかのように聞こえるが、
要は狭い地下道ってことです。


漁業や魚市場の動きや空間をなんっにも知らない、
なっんにも考えない、なんっにも聞かなかった、
一度も現地を見なかった、
見に行っても注意散漫でぼけーっとしてたと、
そうとしか言いようがねえんだよ!

それじゃダメなんだ。
市場として使えないんだよ!

なぜなら、上記の流通の流れというのは具体的にはこうなっているからです。


魚っていうのは、生で、傷つけちゃいけなくて、汚しちゃいけなくて、重くて、持ちにくくて、場所を取るのです。

この具体的な流通の動き、人やモノの流れから、空間構成を考えたときに、いかに豊洲施設がヤバイかを解説します。

そして、そのことによってこれまで魚を仕入れていた、魚屋さん、居酒屋、小料理屋、料亭、レストラン、そして一般消費者まで、どういった迷惑をこうむるものなのか

その心配事を皆さんと共有したいと思います。

お魚が目の前に届くまでを、空間の変動として捉え直してみようか、なんですが、まず最初は漁獲です。


これは、もう文字通り広い範囲から集めます。
まき網漁を考えてみても広く網を張って、その中に入った魚を集めていく行為だというのが分かりますよね。
それを、港にまで運んでくるというのが漁師さんの仕事です。

下図は「まき網漁」といいまして、海の中に網を下ろし、文字通り巻き込んで一網打尽にしようという漁法です。


漁を終えた漁船が港に入りますと、漁獲は並べられて買われます。
取れたての魚をその場で買い取って出荷していくわけですが、そのときにおこなわれるのは、漁獲の分類と数量チェックも含めて港に広げられます、当然、船の中に詰めているときよりも広いスペースが必要です。


浜買人さんは仕入れた魚を出荷します。

そのときには、一定の数量ごとに発泡スチロールの箱に詰められ、冷蔵車両に積み込まれていくわけですが、そのときには配送先ごと魚種ごとに整理して集められていくというわけです。

養殖でも同じです。

一般社団法人 全国海水養魚協会さんのHPに詳しく解説されていますが、
http://www.yoshoku.or.jp

養殖場も広大なスペースを必要とする施設







これらの養殖場からは、魚を生きたまま運ぶ「活魚(かつぎょ)」という手法も採られますが、その場合は海水を満たした水槽ごとに仕分けしなければいけません。


全国の漁場、港湾、養殖場から魚は集められてきます。

ここまでで、既に集めて運んで、広げて選んで分類して、もう一回詰め直して、さらに運ぶ、そして遠距離トラックで市場に運んでいます。


こうしたトラックが全国から集まってくるのが築地です。

朝5時、いえ真夜中からこのトラック配送便を、どんどん荷下ろししていかないといけないんです。

なので、いったんトラックの積荷を広げるスペースが必須なんです。
市場には、産地も魚種も様々な貨物がひっきりなしで届きます。
いったん、積荷を広げないと何がなんだか分かりません。

なので、バースはこんな状態になります。
発泡スチロールの箱が山積みです、が、中身は各地の各種の魚が詰まっているんです。


その積荷を卸さんが受け取り、セリに向かう分けですが、築地ともなると、魚種も多様で数量も多く、行き先もその仕分けも複雑なんですね。

結果として、思いっきり広げることになります。


広げた漁荷から目的のモノを集めてセリに向かいます。
選別したものを集めて運ぶのです。
この時点ですでに時間との勝負です。

で、セリ場で再度広げます。

この写真ではマグロですが、魚種ごとに様々にセリ場ではまたもや運んできた魚荷を広げなくてはいけません。
全国から届くということはそれだけのスペースと、次々と並べていく速度が重視です。


ここまででも、集まった積荷を解く、そして下ろす、そして分ける、その後に集めて運ぶ、という仕事が待ったなしで進んでいくのが市場なんです。

しかも、漁獲の港の数倍、数十倍の量です。
その仕分けが秒単位、分単位で続きます。

なぜなら、漁獲から配送までの全事業者が、できるだけ早く新鮮に魚が傷まないように、魚の商品価値が下がらないように、ここまで全精力を通じて運び込まれているわけですから、

卸から買出人さんに渡すまでの間で、だいなしにするわけにはいかないからです。

だから、築地市場に行けばわかりますが、深夜から早朝まで活気がある、いきおい、鉄火場みたいに熱いんです。

そして、セリ落とした魚を仲卸さんは運び出します。


取り扱う魚によって、あっちへこっちへ、大きいものから小さいもの、箱に入ったモノから入っていないもの、いろいろです。

仲卸は、それぞれが取引ルートの中で得意な魚種があり、マグロばっかりやってるわけではありません。
エビが得意、底魚が得意、白身系が得意、お客さんの買い出しもそのことがわかっていて、店舗を回るのです。

この取り扱う膨大な多品種であるところが、市場では大事なのです。


この仲卸への運搬時も非常に築地らしい活気あるシーンです。


この1分、1秒の攻防が、深夜から早朝まで続くのです。
だから、見学者はこれらの仕事がすべて終わる10時まで入ってはいけない、本当に邪魔になるからです。

以上、「魚が届くまで」をざっと概観しましたが、要は「集めたものを広げて選別整理して運ぶ」ことの繰り返しというわけですね。
毎時間が引っ越しみたいなものです。

集めて広げてというのは古書店とかとも同じです。
膨大な古書市で目利きが選別し店舗に運んで整理して並べる。

しかし!築地の魚河岸では何が違うのかというと、毎日この「集めて広げて運ぶ」をおこない、時間が経てば経つほど商品価値が落ちる。そして、「商品をその日のうちに売り切る」という待ったなしなんです。

だから!仲卸の店舗をただ並べただけでは、セリ場を確保しただけでは、バースを確保しただけでは、ダメなんです。
「広げる場所」が必須、「並べる場所」が必須、しかも周囲に迷惑をかけない「逃げ場」が必須、というわけです。

実は!築地にはその、隙間というか余裕というかバッファーゾーンがあるから、狭い狭いと言われながらも、これまでまわってきた、動いてきたんです。

そのバッファーゾーンを青く塗ってみました。

この青いところで、集めたものを広げているのです。
そして、築地は昔の駅舎ですから、どこでも自由に出入りできるようになっているから、人がターレとぶつかり合わずにショートカットで動けるんですよ。

さあ、豊洲施設は、「集めて広げる」ことが出来るかな?

できなかったら市場としては欠陥です。
計画者のミス確定です。

⑧に続きます。



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