原宿駅の建て替えに関してのつづきです。 上記HPの提案書をお読みいただくと分かりますが、阿部先生はJR東日本が掲げた新築すら、する必要はなく、既存ホームの活用も含めた最小限での駅ホーム混雑緩和をご提案されています。
原宿駅が取り壊されるかも?について、実に多くの方々からご意見をいただいています。
また、twitter上でも「原宿駅」で検索をかけてみるとわかりますが、
https://twitter.com/search?q=原宿駅 &src=typd
「東京駅みたいに古い建物を活かしたほうがいい」
「オリンピックだから立て直すのではなく、オリンピックだからこの建物が必要」
「混雑は解消してほしい」
「古さと新しさは融合できる」
「これ以上、文化遺産を壊すな」
「かわいい建物だったんだ」
「戦争を生き延びた建築だからこそ大事だ」
といったようなご意見が飛び交っております。
さっそくTBSラジオの「森本毅郎ッスタンバイ!」では採り上げたようですね。
http://www.tbsradio.jp/43992
その中で、JR東日本さんのコメントが発表されていました。
「解体するか保存かについては、今後、地元や渋谷区と検討します。新しい駅舎を建てる上で、今の駅舎が邪魔になるなどの支障はないので、新しい駅舎が2020年に開業しても、今の駅舎が残る可能性もあります。」
なるほど、なるほど、ひとまずは強引な破壊はやらん!と、
JRもよくわかっている。
国立競技場を速攻破壊したJSCとは違う。
また、新国立競技場問題以来、いろいろとアドバイスもいただいている公共交通機関のご専門家、そして鉄道事故等ではTVのわかりやすい解説でもおなじみの交通コンサルタントの阿部等先生からはメールいただきました。
「原宿駅は建替えせずに混雑を解消できる」
https://t.co/Ct3DOw8gRc
https://t.co/8N3AeaVAOV
これは、どういう意味かといいますと、都内はじめJRの各線の中には、長大なホームを持ちながら改札が少ない駅はまだまだ多く、電車の最後尾や最前部に乗車した場合に、移動も大変なケースがたくさんある、と。
それは、かつて改札が人力であったことの名残であり、現在のように自動改札が当たり前となった今、監視カメラとの併用により改札は増やせるはず!その対応方法を取ることで多くの駅の混雑や不便さを解消できるはず!むしろ、原宿駅がそうした新改札増強化の先鞭たれ!とのご意見なのです。
確かに、今ではすっかり忘れてしまっていますが、かつての駅の改札は人力だったのです。
電車を降りて改札に向かいますと、ちょうど大勢の昇降客の人波をつっきるよ舳先のようなブースに改札員さんがずらりと並んでおりまして、「キャラ、カンカンカン、カラ、カンカンカン、キャラ、キャラ、カンカンカン、、、」と、リズムを刻みながら、次々とキップにハサミを入れていたんですね。
今、思い出してみると、あれだけ大勢の人々を次々とさばいていくのは神業だったと思います。
たまに、新人さんに出っくわすと、その改札口だけが渋滞したりしてましたが、数ヶ月もすると、その改札員さんもスムーズなドラミングになっていらっしゃるなんてのを、朝の通勤、通学時に毎朝みなさん観察されていたと思います。
そのような事情もあったため、かつては改札口は出来るだけ集約したかった。しかしながら、自動改札機が登場した今、そのような改札の集約ではなく、改札の発散の方が合理的であるという、阿部先生のご意見は私も正解だと思います。
特に!原宿駅の場合は、小さな駅でありながら、昼と夜、夏と冬といったように、昇降客の増減がはなはだ激しいところです。
地理の授業でならう気候区分でいえば、ステップ気候みたいな
私が最初に勤めた齋藤裕建築研究所が神宮前6丁目にあり、20代の前半から、その後の20年間を原宿駅を最寄りとしてきた私の経験からいっても、原宿は常時込む駅ではありませんでした。
たとえば、朝一なんていうのは、原宿駅には企業本社も少なく、店舗関係も開店は10時頃からが普通なので、山の手線から千代田線への乗り換え以外は、大して人は昇降しません。
夜も、9時を過ぎたあたりからは、中高生の街ですから、原宿の竹下通りは8時くらいで終わってしまうので、大して人は居ない。
観光客が始動する午前11時前後と、中高生が来襲する午後3時から夕方6時くらいがピーク。
季節でいえば、年末の表参道クリスマスイルミネーション、年始の明治神宮初詣がピーク、次に新入生がどどっと来襲する3月4月、GW、そして夏休み、といったところがピーク。
常時大勢の人が昇降する駅ではないのです。
原宿駅周辺の土地の利活用や居住者状況を見てみれば一目瞭然なのですが、駅の西側は明治神宮です。
この付近には会社の本社も少ないし、住んでる人も少ないのです。一方商業施設や企業が存在する場所には、地下鉄千代田線や銀座線の駅もあり、いってみれば原宿駅で昇降する人たちは、原宿のみを目指してきているといえるでしょう。
では、現在の原宿駅の問題をどのように解決していけばいいのでしょうか?
それを考えるためにも、駅だけではなく、駅周辺を含めて検討していかなくてはならないでしょう。
原宿駅に限らず、駅というものは改札出口と街へのつながりの部分が顔になります。
皆さんもある駅を思い浮かべて、すぐに駅舎が浮かぶことはあまりないでしょう?むしろ駅を出たとことろ、駅前の雰囲気、状態、駅建物を取り囲む周辺全体渾然一体とした空間的な把握が薄ぼんやりと浮かぶのではないでしょうか?
新宿駅東口、と聞いて浮かぶのは人混みの向こうに見えるアルタとか、渋谷駅、と聞いて浮かぶのも人混みのスクランブル交差点の向こうに見える道元坂方面の109とか
つまり、普段の利用者にとっては駅そのものよりも、駅と街のつながり部分の空間的な雰囲気が、その駅の顔なのです。
原宿駅は、現在2カ所の改札がありますが、この2カ所はまったく性格を異にする面白い駅なのです。
その秘密は高低差にあります。
駅ホームと改札の関係を示すモデル図がありますが、
この絵のピンクのところは空中、地中の通路です。
駅舎は左側の端っこの表参道口のところだけです。
駅というのは、線路に並行するホームとそれをつなぐ通路が複雑にからみあった内蔵をひきずっていて、いってみれば人の循環器のようなものです。
駅舎はその入り口部分にある顔や目や口のようなものです。
その顔にあたるのが、現駅舎です。
それが、以下にようなものに変わってしまうということは、建築のキャラクターが変わってしまうということを意味しています。
同寸法パネルを連続で張って、そのパネル割の一部をアルミサッシュで割っただけのもの、このような建築は生産側の事情、安く済ませたい、工期を縮めたい、で自動的に決まってくる形状なのです。日本中、世界中に増殖する似非モダニズムの安物建築です。
拙著『非常識な建築業界「どや建築」という病』の中でデザイナーの「どや顔建築」をご紹介しましたが、
このタイプの建築は、「どや建築」ではなく、もう一方の問題建築、「カオナシ」です。
つづき