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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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知の格闘家と、真・闘う建築家、堀部安嗣とは

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社会学者の松原隆一郎先生と建築家の堀部安嗣さんが、すごい建築を建てていた!の続きです。

その顛末は以下のサイトでも詳しく掲載されていますが

新潮社の「阿佐ヶ谷書庫プロジェクト」のページです。
http://www.shinchosha.co.jp/tonbo/blog/matsubara/


あふれる本をどうにかしたい、実家の思い出を残したい――。

“イエ”の歴史そのものである祖父の半生を遡りながら新たな“家”を建てる――気鋭の建築家に思いを託し、たった8坪で始まった家づくり。土地探しから竣工まで、その過程を施主と建築家、それぞれの立場から描いたドキュメント。施工の詳細や図面など図版多数。小説家・ 松家仁之による書庫訪問記も収録。



実は!不肖、森山、この内覧会に参加していたんです。
アートコーディネーターの森桜さんのご案内により!です。
http://morisakura.com

この建物を設計した方は堀部安嗣さんといいますが、
今、日本の建築家界でもっとも注目されている。

新国立競技場問題のザハ案頓挫からA案パクリ疑惑をはじめ、傾斜マンション杭問題等々、建築業界への信用がゆらぐなか

その動向に、堀部の動向に注目が集まりまくっている!
すくなくとも私は注目しまくっています、20年以上も前から。

気になって気になって気になって、注目し過ぎて、
決して、堀部安嗣建築は見ねえ!というのを20年以上も前より貫いてきました。



私が堀部さんを知ったのは、堀部安嗣?えーっ?何これ!と
注目というか瞠目したのは、1994年のことです。

当時まだ、私もこんな感じの生意気盛りでした。


▲95年の頃

で、堀部さんの何に驚きまくったかというと

「南の家」という作品が、、ある雑誌に小さく掲載されていたんだと思うんですが




な、なななな、何い!
この人、建具、なんでこんな処理出来てるのか!

今の時代にここまでの建具作成する実力のある若手いるのか!
外壁と建具が吉村順三じゃん。

壁が左官で床が幅広、庭に大きく開けて、、、
これ岩倉実相院じゃんか!てゆうか齋藤裕の流じゃん。
なんで?こんな処理知ってる人が居るわけ?俺以外に

これは、ですね。

当時というか、それ以前のときから、私は日本の伝統建築の良さを伝統建築によらず設計デザインしよう、というのがテーマだったわけなんです。
しかも、モダニズムに寄らないで、和を構成的に抽象的に扱わないで、伝統工芸や素材表現を駆使して、という。

近代の「建築」という概念がそもそも欧州中心にものですし、その中でル・コルビュジェとかいう人がモダニズムの基本メソッドを開発流布した後は、基本そのコルビュジェデザインの範疇でなければ「建築」じゃない、という風潮で来ているなかで、西洋「建築」の概念を出発点にしながらも、日本的感性をどのように表現するか、という。

まあ、いってみれば日本語ロックみたいなものを目指しておったわけなんです。
出来れば、建築の「はっぴーえんど」とか、「ジャックス」とか、「外道」とかみたいなもの?


だから、齋藤裕さんとこに行ったわけなんですが、

で、自分の仕事の初期もそういったことしてました。


この家なんかは、四国の栗林公園にある菊月邸を写そうとしていたわけなんです。


同時に、強い自然素材を使いながら抽象的な扱いにしようとか



スイス人の建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンのGoetzミュージアムなんかにリスペクトして


まあ、そんな感じにやってる人は、少なくとも同世代には、いない。
と思っていた。

まず、異種材料の混交は大変だし。

左官は割れるし、木材は反るし、ディテールは難しく危険になるし、
第一、素材を見に行って、工場で加工指示できるような人、観念的なコンセプト中心の建築界の中で具体的なモノづくりに賭けてるような人はいないと思っていた。

少なくとも、同世代には
いるはずはない

齋藤裕の流は

と思ったいたわけなんですが、、、

GA JAPANという建築雑誌がりまして、現在でも優れた建築デザインの作品を厳選して採り上げるという、まあ建築のフォーミュラニッポンみたいな本がありまして

実は、私の上記の建物も
GA JAPAN13号(1995年1月号)に掲載いただいて、まあちょっとというか、かなり小天狗になっていたんです。

ところが!
なんです。

その半年後

GA JAPAN16号(1995年9月号)
そこに、「ある町医者の記念館」というものが掲載されていたんですね。


えっ、ええー!!

こ、こ、これは、、、

幾何学的に処理してあるところは確かに現代の近代の建築ではありながら、小さな空間ではありながら、最小限に限られた建築ではありながら、

オール左官、オール塗り回し、幅木無し、曲切断面表現


これ、、俺がやりたかったヤツだよ~  orz

何んだよこれ?ていうか堀部さんって何者なんだよ!

というわけで小天狗の鼻が思いっきりへし折られて、
二度と、二度と、見るか!堀部安嗣。

ああ、もうやめやめ、日本的空間とか素材にこだわるの
左官塗りも建具製作も銘木も金かかるだけだし、やめやめ


となって、私はハイテク建築とか工場生産によるプレファブリケーションの方に行ってしまうことになったのです。

つづく




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