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ワンピースにおける建築的考察4

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ワンピースにおける建築的考察1
ワンピースにおける建築的考察2
ワンピースにおける建築的考察3


インペルダウンの迷宮性が、ピラネージの「牢獄シリーズ」に親和性があり、
建築アカデミズムの体系の中心をうがつものであるという意外な結果になった
わけですが、再度このインペルダウンの構成を考えてみましょう。

世界政府も何を血迷っているのか、
ものすごい施設設備のレベルを上げている。というところまででした。

ます、レベル3とレベル4ですが、ここでは興味深い計画がなされています。
レベル3は通称飢餓地獄といわれておりますが、
これは食料を与えないということに加えて、レベル3全体が床から熱気を放っていることからくる
「渇き」を付加させてあります。

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もちろんこのレベル3もレベル4も内部は数階にわたって仕切られた立体的迷宮になっており、
特にこのレベル3は石積みの通路や階段、アーチで構成されたポルティコや橋など
アルジェリアのカスバを思わせる奇観な風情でもあり、世界遺産級の建築的な名所が満載です。

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特に、石造りの街中の遺跡みたいな階段通路で獄卒獣といわれる間抜けて超強い
ミノタウロスとボンクレーが対戦するシーンなどが見ものだと思います。

しかもアニメでは、このレベル全体が薄黄色味がかった光で溢れており、
常に中東の日暮れみたいなセピア色に照らされておりまして、
微妙なニュアンスを表現する照明計画がなされております。
ハリウッドのスタジオの照明係りさん顔負けなんです、ほとんど誰もいないのに。

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この下レベル4には常に煮えたぎる巨大な鉄釜があり焦熱の地獄と化していますが、
その熱気がそのままレベル3を乾燥させてレベル3を飢餓地獄に導くという非常に合理的な設備計画なんです。

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というよりもこれは巨大な戦艦の機関部とか、潜水艦の原子炉を思わせるようなシステムで、機関から出てくる廃熱を有効利用しようという意図なんです。

こういったシステムは長い間補給なしで洋上を航行する船舶には必須の仕組みですね。

機関部を運転することから生じる熱源を最大限無駄にしない、
投入したエネルギーを逃がすことなく使い切る、空調機から出てくる廃熱もうまく生かし、お湯を沸かしたりしていくものです。

太平洋戦争中の巨大戦艦の大和はみなさんよくご存知ですよね。

この大和にはそうした当時の最新鋭の設備システムが組み込まれていたという事実があります。
洋上で孤立した状態でどこまでうまくエネルギー効率を高めるかを考えていたんですね。
また、荏原製作所と日立製作所が大和と武蔵のターボ冷凍機を納入しています。
当時大阪金属工業所といったのですが、ルームエアコンで有名な現在のダイキン工業日本初のフロン式のヒートポンプ空調機を製造し、伊号171潜水艦に採用されています。

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伊171号
艦艇のデジタル着彩さんより

この温度管理とエネルギー管理、空調管理の日本の専門家で、
日本設備界の大家で井上宇先生という方がいます。
もう亡くなられましたが、


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私が大学で一番好きだった先生です。

どう好きだったかというと、この先生は容赦がないというか、
普通の学生では授業をまじめに受けて、
その内容を元に試験なんかをするわけですが、

この先生の試験は、本当にエネルギーのことをわかっているかどうか?
それを問うんですね。
だから、授業の内容をノートに必死で写しただけではどうしようもないんです。

しかも、当時の井上研究室はもっとも優秀な生徒が大学院への進級を
希望することろとして有名で、
井上研志望者は
井上先生担当の設備計画という授業では、
絶対に「優」をとらないといけないといわれておりました

まあ、当然わたくしなどは優秀な生徒ではありませんから、
井上研への進級などまったく考えていなかったんですが、
その本気のエンジニア魂に触れまして、まったくやる気のない私も、
設備計画だけは真面目受講しておったのです。
が、なんだか物理の話になったりいろんな建築家の話になったり、
井上先生独特のしゃべりが面白いんですね。

で、問題の試験だったんですが、すごい問題が出ました。

太平洋戦争末期、旧満州の陸軍部隊20名が行軍中に凍死した。
なぜか?
そのときの、外気温○○
度、湿度○○度、
陸軍装備の防寒具の熱還流率○○、蓄熱係数○○
兵士の体温は度とする。


です。

あとはすべて回答用に真っ白です。

なんだこれ!?鈍器で思い切り後頭部を殴られるような問題でしょ。

理工学部の建築学科の設備計画の授業の中で、
八甲田山の事件を考えるがごとくの、法医学みたいな問題ですよね。

教室がざわついてましたよ。

でも、これなら俺でも何か気の効いた答えが出せるかも、、
もしくは本気の回答を思い切りぶつけてもまわんのかも、、
と、いうことで私は何か、つたない知識と想像力を駆使して、解答用紙を埋め
まくったように記憶しております。
 

まあ、居住環境をどのように考えるか、、それが人の命を左右するんだ。
とでもいわんがごとくの超ハードエッジな問題ですよね。

それもそのはず、井上先生は日本の南極基地の設備・空調設計も
されていた方なんですよ。
自分の計算間違いによって南極越冬隊が死んじまったらどうしよう、、
と気が気ではなかったそうです。

井上先生は、東京大学の船舶工学から航空機の設計者を目指されていたんです。大戦末期には高高度戦闘機キー108の設計者として、

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戦後は建築設備の設計エンジニアに転身し、
早稲田大学の教授となり、日本の設備技術のバイブルといわれる
「空気調和ハンドブック」を出版されています。

早稲田建築アーカイブス 井上先生のトークが聞けます

早稲田建築アーカイブス 井上宇市炉端談話

日本の設備エンジニアはみんなこの本を読んでいるといっても過言ではないでしょう。

この洋上船舶におけるエネルギー効率と空調計画の技術を生かしてうまれたのが、地域冷暖房システムとか、コ・ジェネレーションなんです。

井上宇一先生はその専門家でもあります。

コ・ジェネレーションとは、
発電タービンやエンジンなどの外燃機関や内燃機関から発生する熱を回収し
有効利用する仕組みのことで、国内では工場周辺や居住密度の高いエリアでも
環境負荷を低減しエネルギー効率を上げる意味で結構普通におこなわれているのです。
六本木ヒルズにも導入されています。

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各タワーやTV局に供給する温水や冷水、蒸気を効率よく配給、回収するシステムがインフラストラクチャーとして地域全体に組み込まれているのです。

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インペルダウンがさらにすごいのは、このレベル4での煮えたぎる釜の熱をそのままレベル3の熱放射に利用しているだけでなく、その下のレベル5を極寒地獄に設定している点です。
空間を寒くするというのは実はとてつもなく難しい技術なのです。

熱いのと寒いのとなんの関係があるの?と思われるでしょう。
逆じゃない?とそうではないんです。

熱あるところに冷気あり、冷気あるところに熱あり、なんです。

みなさんはヒートポンプという言葉を聞いたことがあるでしょうか、

専門用語なのでなじみが薄いと思いますが、
実はこれエアコンの室外機や冷蔵庫の内部に組み込まれた仕組みのことなんです。
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ざっと簡単にいうと熱くするにはどこからか熱をうばってこなくてはならず、
寒くするのはどこかに熱を逃がさなければならないんですね。

どういうことかというと、レベル5のあれだけの面積、空気の容積を極寒にするためには巨大なヒートポンプが必要だということなんです。

その分の熱を海中に放熱するという手もありますが、それではもったいない。

だからレベル3が熱いんです。

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つまりどういうことかというと、
インペルダウンそのものが巨大な冷蔵庫なんですよ。

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むしろ、レベル5を極寒にするためだけに、レベル4やレベル3があるといっても過言ではありません。

しかも、レベル5にはそんなに囚人いないのに。

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軍隊ウルフまで飼っている。

うん?飼っている?ここまでして?

雪を降らして、木まで生やして、森までつくって人工で極地方の自然環境を再現しているんですよ


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これは、、ちょっと、、やりすぎと思いませんか。


もしかして、インペルダウンってもともとは監獄ではなかったんじゃないのか?
という疑問が沸いてきました。

もしかしたらインペルダウンとは、軍隊ウルフを飼育するだけのために建設した極地の気候を再現したサファリパーク型の動物園みたいなものなのかもしれない、、



たしか、
レベル2もけっこうな数の動物放し飼いではなかったですかね。

つづきます。

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