ワンピースにおける建築的考察1
ワンピースにおける建築的考察2
ワンピースにおける建築的考察3
ワンピースにおける建築的考察4
インペルダウンとは
もしかしたら軍隊ウルフを飼育するために建設したサファリパーク型の動物園みたいなものなのかもという疑問。
それを裏付けるような、レベル2でも動物放し飼いという事実。
▲どでかいニワトリを放し飼いのレベル2
空調システムにより極寒の環境を生み出したレベル5のためだけにあれだけの施設を建設しているという酔狂な世界政府。
その仮説を裏付けるように、ワンピースのインペルダウン編をごらんになった皆さん全員がたぶん感じたことだと思うのですが、エースが収監されているというレベル6の内部空間。
なんかしょぼくなかったですか。
レベル1からずんずん地獄度を増していって、ついにはレベル5でルフィもボンちゃんも行き倒れてしまう。
そんな強烈な獄舎に比べて、レベル6に来てみると、ちょっとがっかり。
それほど天井高さもないし、鎖でただつながれているだけの普通の牢屋です。
ということなら、このレベル6というのは設備的にも内装的にも実はそんなに力を入れていない箇所、床下収納とか基礎の中のピットみたいな余ったスペースなんだと思います。
▲ビルの地下ピット
だからこそ、イワンコフたちが巣くうニューカマーランド、レベル5.5はなんなのか?
ここはきっとレベル5の極寒を維持するための断熱層の空間であり、
そのため床下のスペースとして見逃されているのではないでしょうか
結論ですが、「ワンピース」に登場した世界政府の深海の大監獄。
と思われましたが、、設備プラントを有する実は巨大な冷蔵庫。
めずらしい動物を集めた飼育施設であるということが推察されるわけです。
そもそもここまでの巨大な施設を海底から立ち上げることは可能なのでしょうか
「ワンピース」の物語を盛り上げる意味ではちょうどいいんでしょうが、マンガの中で出てくる想像上の建物とはいえ、、こんな巨大な施設を海底から聳え立たたせることなど可能なのでしょうか。
海底から建物を建てていくなど無理に決まっている、そんなビルなんか見たことないよ。
そう思われるでしょう?
実際そういったビルというのは存在しませんが、海底から海上にまで建造物をつくる技術というのは存在しているんです。
それは、石油プラットフォームといわれる施設です。海底油田の掘削をおこなうための施設ですね。
現在では「インペルダウン」の倍以上の高さのものまで存在しています。ペトロニアス・プラットフォームで610メートル、ボールドペート・プラットフォーム580メートル、などです。
この海底から建造物を立ち上げるという技術は第二次世界大戦中にイギリスが防衛拠点として設置したテムズ海上要塞が原型となっており、あらかじめ完成させた構築物を海上から海底に着床させることによって設置します。
この海上プラットフォームの設置方法には、固定式プラットフォーム、コンプライアント・タワーといわれる重力着床方式のものと、半潜水式プラットフォーム、甲板昇降式プラットフォーム、ドリルシップ式、浮体式生産システム、緊張係留式プラットフォーム、スパーといわれる浮力をもった構造物を海底から牽引固定するものがあります。
前者が海底から聳え立つタイプ、後者は動かなくした船みたいなものです。
インペルダウンはおそらく前者なのですが、海底固定式となると史上最大規模でしょうね。
先ほどご紹介したインペルダウン以上の高さをを実現しているプラットフォームなんですが、そのいずれも浮遊固定型なんですよ。
石油掘削プラントとして海底まで到達してはいるのですが、海底から立ち上がったものではないんです。
とするなら、やはりインペルダウンは建物ではありません。というか完全な人工物というわけではなく、一部島であったものを掘削したり増床したりして押し広げた半人工島というのが正解だと思います。
半人工島なら結構いっぱい存在しています。有名なものとしては最近観光も可能になったという通称「軍艦島」です。
正式名称は長崎県にある端島です。ここは元々小さな瀬、岩礁であったものを、石炭の採掘が可能ということで、埋め立て拡張し上部構造をどんどん建設していった結果、元々の大きさの三倍以上になってしまったという半人工島です。かつて炭鉱の島として5千人以上のおおぜいの人々が移り住み暮らしていましたが、廃鉱とともに無人島になってしまいました。
島の中心部には石炭を掘る坑道が海底に向かって数十メートルも掘られていたわけです。
そのような形式であれば、東京湾にも第一海堡、第二海堡、第三海堡、と明治、大正時代に建設された洋上要塞が存在します。
これらも元々の岩礁や小さな島を拡幅し高層化したものです。
世界的にもこういった施設は数多く存在し、島の原型をとどめないくらいに人工物化に成功した施設
フランスに現存するボワイヤー砦(Fort Boyard)があります。
シャラント地方のラ・ロシェル(La Rochelle)という港町の沖合に鎮座するその姿は、まさにインペルダウンです。1800年代にかのナポレオンによって海軍施設として建設されました。一時は本当に監獄としても利用されていたといいますから本当にインペルダウンの原型ですね。この建物が世界的に有名なのは、アラン・ドロン主演の映画「冒険者たち」の舞台になったからなんです。映画のラストシーンでこの要塞の屋上からゆっくりとカメラが遠ざかっていくシーンがとても印象的でした。
前述の軍艦島とか海堡のように自然形状をとどめた半人工島要塞ではなく、海の上にぽつんと存在する島というよりも長円形に石造りされていますから、まさに建物です。
それが水平線からすくっと垂直に立ち上がっている姿は非常に幻想的というか、かっこいいというか、威厳があるというか、窓が少ないこともちょっと不気味ですし、やはりこれがインペルダウンでいいんじゃないでしょうかね。
一時はこの要塞はホテルに改装される予定だったみたいなんですが、今でもこの要塞島をひとめみようと多くの人たちが訪れているそうです。
というわけで、現在インペルダウンを建設しようとするなら、ちょうどいい大きさの島を拡幅しながら上部構造を建設し、同時に島の地下を堀進みながら内部空間を拡張していくという工法になります。
波の影響や、防水や防食の技術、そういった海上とか洋上とかにおける建設行為にはそれなりの専門異家の投入が必要です。
そんな工事をおこなえる業者がマリンゼネコン、通称マリコンです。
四方を海に囲まれているわが国の国土においては、こういった防波堤とか干拓工事や浚渫工事、そして海上橋とか海底トンネルとか多くの海浜工事を数百年にわたり続けてきました。その結果として都市と結ぶ大動脈としての道路や電気、通信ケーブル、耕作地面積の増大や居住可能エリアの拡張がなされてきたともいえるのです。
いってみれば日本列島そのものがすでに半人工島なんですよ。
こういった海洋土木工事については非常に専門性をともなうと同時に、危険や不測の事態に対する対応など経験がものをいう業界です。海洋土木専門のマリコンにはいくつかの有名な会社が存在しています。
五洋建設株式会社、東亜建設工業、東洋建設株式会社、若築建設株式会社、不動テトラ株式会社、りんかい日産建設、みらい建設工業株式会社、あおみ建設株式会社あたりがそうです。
そういったマリコンの建設工事に最新鋭の設備システムを投入して珍しい動物を飼っているのが世界政府の所有するインペルダウンの本当の姿かもしれません。
ひとまずおわり
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ワンピースにおける建築的考察5最終章
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