ワンピースにおける建築的考察2
より
「インペルダウン」の建築概要は
「凪の帯」(カームベルト)といわれる風の吹かない海域の、
深底から海上にまで聳え立つ大監獄です。
ここにエースが囚われている。
これを助けにルフィが向かう。
それが、インペルダウン編です。
地上1階から地下6階までが存在し、
それぞれの階層で囚人たちは様々な責め苦を受ける。
まさに「この世の地獄」と呼ばれるにふさわしいところです。
地上1階から地下6階まで階層ごとに、
下へいけばいくほど過酷な収監状態が設定され、
囚人の凶悪性や犯罪の大きさごとに分けてあります。
この建物なんですが、地上1階、地下6階とはいうものの、
各階層は階高40メートルくらいはありそうですから、
実際には各層5~6階建ての地上1層地下6層で、
実質地上6階、地下30階建てという風に考えたほうが
よさそうなくらいの規模なんです。
高さでいうと、海上に顔を出している部分はさらに高く50メートルくらい、
海中に没している部分で300メートルはあろうかという大きさです。
海底まで300メートルくらいというのはいわゆる大陸棚の浅瀬であって、
凪の海、現実に存在する船の墓場として有名な、サルガッソー海とか
スールー海のようなところに建造されているわけです。
現在の地球で陸地と海域は約3:7で、
平均水深は約3800メートルといわれていますから、
海の深さっていうのは平均してもちょうど富士山の高さまで
すっぽりはいってしまうくらい深いものだということです。
それに比べると「凪の帯」といわれる地域に「インペルダウン」が存在するのも合点がいきますね。
次に、平面形の方ですが、インペルダウンに集結している七武海や世界政府海軍のガレオン船から推察するに、
ガレオン船の全長が約40メートルくらいですから、
そこから推察すると下図のような感じになりますかね
インペルダウン外周の壁面直径は約300メートル前後といったところでしょう。
1階はその外周よりも小さく直径で240メートルくらいでしょうか。
インペルダウンは下に行けばいくほどその直径が広がっていきますから、最下層のレベル6ではその直径は600メートル以上はあるでしょう。
面積でいうと最上部が約45000㎡、1万4000坪、最下部が約280000㎡、9万坪くらいです。最上部が東京ドーム1個分、最下部は6個分といった規模です。
総面積ではバチカンを上回りモナコよりちょっと小さいくらいという巨大な規模です。
この巨大監獄の周囲はまさに海であって、海王類といわれる魚たちの楽園になってもいます。地下と言われている部分は土の中ではなく、完全に海中なんです。
そこから各層40mごとに立ち上がる巨大なバベルの塔といってもいいでしょう。
高さ関係のイメージは下図です。
ここでもガレオン船の大きさと比較してみてください。
全体としては海底から300メートル近く聳え立つ大聖堂といった感もあります。
高さのイメージがしやすいように、東京タワーを隣に置いてみました。
海底からこんな施設を見上げることができたら、まさに凄い壮観でしょうね。
インペルダウンは世界政府にとって凶悪犯罪者を収監するための施設として、上から段々激しい環境が設定してあります。
ここに収監された囚人は命がいくらあっても足りないといわれています。
上から、地上部ぬるま湯地獄、
LEVEL1紅蓮地獄、LEVEL2猛獣地獄、LEVEL3飢餓地獄、
LEVEL4焦熱地獄、LEVEL5極寒地獄、LEVEL6無限地獄、
といった風に囚人たちを痛めつけるための地獄巡りとなっています。
このうちLEVEL5と6の間に囚人の一部がつくった秘密の階層LEVEL5.5と呼ばれるニューカマーランドがあるのですがね。
この施設の壮大さは、各レベルごとの仕掛けだけでなく内部空間の迷宮性なんですよ。
そのためレベル1の紅蓮地獄こそ露天でしたが、
レベル2の猛獣地獄では、廊下と獄舎部分が複雑に入り組んでおり、
廊下を通って脱出しようにも、迷路みたいな通路を奇妙な猛獣に追い掛け回されて食われてしまう危険をともなっています。
この空間イメージって、どこかで、見たことあるぞ、、って思ったのですね。
それは何かといいますと、建てない建築家=アンビルドアーキテクトの元祖
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージではないのか、、、と。
アンビルドアーキテクトとは
参照: レベウス・ウッズ アンビルドアーキテクト1|建築エコノミスト 森山のブログ
ピラネージといえば18世紀の人なのですが、近年評価が高まり、建築だけでなく、小説家や詩人など様々なジャンルの人たちからその建築のビジョンや、
空間の意味性などに言及されるようになった人です。
しかも彼が創造したのは想像上の牢獄です。
当時の建築はバロック様式とか新古典主義とか言われるように、ひとつの
建築のスタイルが、歴史的な評価の中で模索される時代でした。
しかも、このピラネージはローマ建築や遺跡の調査をローマ教皇の支援の下に
おこなっているような、ある種まっとうな建築研究家であったわけなんです。
ところが、自分の創作活動はこのような想像の空間に求めた。
表現形式が版画であったため、プロフィールが版画家として紹介されtたりもしていますが、ご本人はあくまで「建築家」であるとの自負をもっていた人です。
その表現は上記の絵のように、骨太な構造体が複雑に入り混じり交差し、
光はずべて上方からしか差さない閉塞した縦の空間です。
そこに繰り広げられる得体の知れない責め苦、
不安を掻き立てる小さな通路や危険をともなう空中の渡り廊下、
煤煙や埃で汗ばんだ体は真っ黒に汚れるであろう世界が、
一定の厳しい秩序で構築されています。
そこに差し込む光の強いコントラストは、現代の建築芸術で追い求めらているテーマでもあります。
なぜ「監獄」なのか、、、
おそらく、何かの重大な罪を背負った囚人が一生這いだすことのの出来ない
世界を建築家として世に問うことの意味がとは、
様式にとらわれない建築を模索しているようでもあり、
何か近代市民社会の自我の創出を暗示しているようでもあり、
中世から近代へ移行する過程での、見えない社会の仕組みを象徴的に、
浮かびあがらせるものともいえるでしょう。
世界政府は、このピラネージのビジョンを採用してまで、いったい何をしようとしているのでしょうねえ。
さらにいえば、このレベル2くらいまでは、内部も薄暗くまあいってみれば普通の監獄の巨大版ですましてもいいんでうが、
ここから下の階層になってくると世界政府も何を血迷っているのか、ものすごい施設設備のレベルを上げてくるのです。
つづく
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