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豊洲市場開場認可で都が国を騙す。七つの大罪④

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東京都の豊洲市場開場の認可が

卸売市場法に則しているのかどうなのかについての検証を続けます。

 

 

卸売市場制度というものは、国が長年にわたる苦労の末に、やっと定めることが出来たものであることは以前にご紹介しております。

中央卸売市場制度って日本人の大発明なんだぜ⑪

 

そして、卸売市場制度の目的もガッチリと法律の第1条に書かれております。

 

「生鮮食料品等の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図り、もつて国民生活の安定に資することを目的とする。」

 

上記で太字にしておきましたが、目的は大きく3つです。

1.取引の適正化

2.流通の円滑化

3.国民生活の安定

 

つまり、卸売市場制度がなかったころは、

不適切な取引がまかり通り、流通が停滞し、国民生活が不安定であった、ということを意味しています。

それも、ここで解説しましたね。→中央卸売市場制度って日本人の大発明なんだぜ⑦

 

その3大目標をクリアしてるんでしょうか?

 

卸売市場法に限らず法律文書というのは一見すると大変難しい、面倒な第何条について以下何項をもとにし…、

と大変にややこしいイメージを持ちますが、

どの法律もですね全体像をひもとくと、大枠から段々細かい話しになる、そういう構成になっています。

いわば、機械やスマホの説明書や、プラモの組み立て作業手順書、料理のレシピといっしょなんです。

 

そして、何十年も使えるようにということで、なるべく平易な言葉づかいで書かれている。

さらに、人によって解釈のブレがないように、定義や範囲を細かく決めてある。

第○項によれば…というのが初めて接したときにややこしくなるんですが、

その理由は文章を簡潔に厳密にするためと、同じ言葉が出て来たときには繰り返し使わず、

第○条の第○項(前に書いてあるでしょう、そこを見てね、という意味)による、を多用しているからというだけなんです。

 

だから、たとえばラーメンをつくる手順ですら、法律的に書くと、ややこしく見える。

 

 

1条 目的

 ラーメンを客に饗することを目的とする

2条 素材

 以下を素材とする

 1.水 2.長ネギ 3.鶏ガラ 4.醤油タレ 5.塩 6.ごま油 7.中華麺 8.チャーシュー 7.シナチク

3条 調理

 1.鍋に2条1項を入れ沸騰させ2条2およびを2条3を入れ出汁をとる。

 2.前項と異なる鍋にて第2条7項を、約5分程度茹でる。

 3.丼に第2条4項を入れ、3条1項を入れ攪拌、前項を湯切りした後、静かに流し入れる。

 4.3条1項で使われなかった第2条2項を斜め切りにしたもの、および薄切りにした第2条8項、9項を載せる。

 5.2条5および6を好みにより追加し調整する。

4条 給仕

 前条をすべておこなった後に出来上がったものを盆に載せ客に出す。

5条 付則

 本法律に規定するもののほか、塩ラーメン、味噌ラーメンは、さらに政令で定める

 

一度でもラーメンを作ったことがあれば、この法律条文的な表現をされても内容がわかりますが、

上記の「3条 調理」だけを取り出されると、なんだかすごく面倒で怖くなるでしょう。

ところがですね、一度アタマに入ればそれだけのことです。

 

そして、どの法律も言葉の定義から入ります。

 

卸売市場法も、以下のような構成になっています。

 

 

卸売市場法

 

第一章 総則(第一条―第三条)  目的と言葉の定義 卸売市場とは何か?について記述してあります。
第二章 卸売市場整備基本方針等(第四条―第六条) 卸売市場の目的を達成するにはどうしなきゃいけないか


第三章 中央卸売市場   ※この七条から十四条が一番重要なところです。
第一節 開設(第七条―第十四条)   農水大臣は何をしなきゃけいないか、知事は何をしなきゃいけないか、が書いてあります。


第二節 卸売業者等(第十五条―第三十三条) 卸売業者になるには農水大臣の認可が必要です。 仲卸業者は知事の許可が必要です。
第三節 売買取引(第三十四条―第四十七条) 売買取引は、公正かつ効率的でなければならないと決められています。

※特に重要なのは卸売業者が自分で仕入れで自分で小売する、自己買いの禁止です。 

※一方、仲卸業者は卸業者以外からの買い入れは可能です。産地買い、同業者買いです。


第四節 監督(第四十八条―第五十一条) 農水大臣は知事と卸売業者を監督します。知事は卸売業者、仲卸業者、買参人を監督します。


第五節 雑則(第五十二条―第五十四条) 卸売業者が業務を行えないとき、知事が卸売業務を出来る、という意外な決まりがあります。

これはおそらく、卸売市場法は食料流通の安定を期して、大正時代の米騒動の折に整備された法律ですから、なにかの経済混乱の折には民間の卸売業者に代わり、行政が食料調達をするように…との意図でしょう。

 


第四章 地方卸売市場   ※地方卸売市場については都道府県知事が認可し監督します。
第一節 開設及び卸売の業務についての許可(第五十五条―第六十条)
第二節 業務についての規制及び監督(第六十一条―第六十六条)
第三節 雑則(第六十七条―第六十九条)  ※知事でいろいろ決めたり監督できるけど農水大臣に後で報告するように、という決まり。


第五章 都道府県卸売市場審議会(第七十条・第七十一条)
第六章 雑則(第七十二条―第七十六条)
第七章 罰則(第七十七条―第八十三条)  法律違反に対する罰則。2年以下の懲役もしくは罰金200万円が最大。
附則

 

***********************

 

法律の構成を見ると、上記のように、そのほとんどが農水大臣の判断と監督に帰すようになっております。

 

判断と監督です。

 

 

 

 

そして!特に重要と思われるのが、第十条です。

 

 

(認可の基準)
第十条 農林水産大臣は、第八条の認可の申請が次の各号に掲げる基準に適合する場合でな
ければ、同条の認可をしてはならない。


一 当該申請に係る中央卸売市場の開設が中央卸売市場整備計画に適合するものであること。


二 当該申請に係る中央卸売市場がその開設区域における生鮮食料品等の卸売の中核的拠点として適切な場所に開設され、かつ、相当の規模の施設を有するものであること。


三 業務規程の内容が法令に違反せず、かつ、業務規程に規定する前条第二項第三号から第八号までに掲げる事項がが中央卸売市場における業務の適正かつ健全な運営を確保する見地からみて適切に定められていること。


四 事業計画が適切で、かつ、その遂行が確実と認められること。

 

*******************
 

 

一から四の基準に適合していなければならない。そう書いてます。

 

その基準とは、農水省の中央卸売整備計画にのっとっているか、つまり農水省の方針にあってるか?という問題

そして、「適切な場所で相当の規模」であるということ、つまり豊洲市場の場所や広さが適切であるのか?という問題

 

次に、「法令違反はないか?」という点と、(前条第二項第三号から第八号までに掲げる事項が)「適性で健全な運営」ができるか?ということ、

最後に、「事業計画が適切で、確実か、嘘じゃないよね?」と問うています。

 

適切か、適切か、適切か、をこれでもか、これでもか、と問うていますね。

同時に、嘘じゃないよね、確実なんだよね?とも釘も刺しまくっていますよね。

それほど、嘘や騙しを警戒しているのが、卸売市場法の思想、法の骨子、歴史的にも農水省の方針なわけです。

 

前条というのが出て来ましたが、これは十条の前の九条という意味ですから、

卸売市場法の九条を見て第二項第三号から第八号までを確認しますと、以下のように説明してあります。

 

 

(認可の申請)
第九条 前条第一号又は第二号に該当する地方公共団体は、同条の認可を受けようとするときは、業務規程及び事業計画を定め、これを申請書に添えて、農林水産大臣に提出しなければならない。
2 前項の業務規程には、少なくとも次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 中央卸売市場の位置及び面積
二 取扱品目
三 開場の期日及び時間
四 卸売の業務に係る売買取引及び決済の方法(委託手数料に関する事項にあつては、農林水産省令で定めるもの)
五 卸売の業務に係る物品の品質管理の方法
六 卸売の業務を行う者に関する事項
七 卸売の業務を行う者以外の関係事業者に関する事項(この章において業務規程で定めるべきものとされた事項に限る。)
八 施設の使用料

3 第一項の事業計画には、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 取扱品目ごとの供給対象人口並びに取扱いの数量及び金額の見込み
二 施設の種類、規模、配置及び構造
三 開設に要する費用並びにその財源及び償却に関する計画

 

********************

 

この三から八の中でも特に気になるのが

三 開場の期日や時間が適性で健全か?  「2018年10月11日が適性なのか?」都知事!

五 物品の品質管理が適性で健全か?   「露天やコールドチェーンが切れたりしてないか?」都知事!

八 施設使用料は適性かつ健全か?     「駐車場料金がいきなり数倍とか茶屋がないとかやらかしてないか?」都知事!

 

と、農水大臣が問うています。

ていうか、「キッチリ問わなきゃなんねーんだよ!農水大臣!」ということですね。

 

 

 

 

この十条に続いて、私が重要だな、と考えているのが、第四十九条と五十一条です。

それは、この法律に違反した場合、農水大臣は市場開設者である知事を処分できる、必要な措置を勧告する、というものです。

 

(監督処分)
第四十九条 農林水産大臣は、開設者が、この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、当該開設者に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 当該違反行為の中止、変更その他違反を是正するため必要な措置を指示すること。
二 中央卸売市場の開設の認可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて中央卸売市場の業務の全部若しくは一部の停止を指示すること。

(必要な改善措置をとるべき旨の勧告又は命令)
第五十一条 農林水産大臣は、中央卸売市場の業務の適正かつ健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、開設者に対し、中央卸売市場の施設の改善、業務規程の変更その他の必要な改善措置をとるべき旨を勧告することができる。

 

*******************************

 

農水大臣は開設者である都知事が法に違反したときには

 

農水大臣は東京都知事を処分できる、

農水大臣は中央卸売市場の開設の認可を取り消すことができる、

農水大臣は中央卸売市場の業務の全部若しくは一部を停止することができるんです。

 

 

えっ?

とか思ってる場合じゃないぞ

 

 

 

 

 

 

……

 

 

嘘や騙しを警戒しているのが、卸売市場法の思想、法の骨子、歴史的にも農水省の方針なんですよ!

 

 

 

 

 

 

つづく


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