築地市場というものがあります。
元々は魚のプロの方々が魚を卸し、かつ仕入れるために集まる施設です。そのため、かつては漁業関係者と魚屋さんと、こだわりの寿司屋さんや料亭の仕込みの方々しか行かない、行けない、入ると怒られそうな施設でした。
プロが集まりプロだけの用語でプロだけの動きをする。
ちょうど同じような材木市場に木場がありますが、素人がチョロチョロするには非常にハードルの高い、緊張感が漲っていました。私が若いころ木場での出来事を書いた→ある日の斉藤ジムショ
しかし、バブル時代のころから徐々に「築地」という名が食の情報誌に紹介されるようになり、
東銀座にあるマガジンハウスのブルータス等で文化人や編集者が「場内の美味い定食を知っている」とか、「場外しか行ったことないのは素人」とかいった具合にチラチラ紹介されはじめ、「danchu」とかでは、築地巡りの特集が組まれるようになる。
「美味しんぼ」というマンガの登場により、食文化に関する蘊蓄も広く一般の趣味になりました。
テレビ番組の「料理の鉄人」で様々な食材を有名シェフが思いもよらない調理法を駆使したり、知らない食材や調味料が登場する度にワクワクしましたよね。
極めつけは、築地市場そのものを舞台にした「築地魚河岸三代目」という作品もあります。
この料理&グルメ漫画というジャンルも、「庖丁人 味平」を嚆矢とするものですが、その後ものすごい発展と広がりを見せました。
これ意外にも読み切りの料理漫画はたくさんあります。
それくらい、多種多様な料理の表現や蘊蓄や食材というテーマが存在するのです。
そうした非常に多くの食材流通を支えているのが、市場の仕組みです。この場合の市場(しじょう)とは、経済用語でいうところの抽象的なマーケットを指すのではありません。
交易のための市場(いちば)のことです。
出来るだけ多くの様々な物品が持ち込まれ、必要とするところに出来るだけ細かく分かれて買われていくことが可能な場所が良い市場です。
この出来るだけ多種多様というところが大事なのです。
もし、日本人の食卓に上る魚が、サーモンとサンマとサバだけであったら、市場が必要ないでしょう。
大手サーモン商社と配送センターがあればいいだけです。
豊かさとは何か?と問われたときに、それは多様なモノから選択の自由があることなのだ、といってもいいでしょう。
そういった意味で、豊かさを失ってしまったのがパソコンです。
今の若い方はご存じないかもしれませんが、かつて、パソコンにも様々なOSやメーカーが存在しシノギを削っていたのですよ。
日本のメーカーも独自OSやマシンを開発していたのです。
コンピューターの市場が活気を失ったのは、OSがWINDOWSだけになってしまったため、競争もイノベーションも多様性もなくなりました。ただの道具に成り下がってしまいました。
話しがズレてしまいましたが、同様のことが起きかねないのが築地の豊洲移転なのです。
さらには、豊洲新市場という施設が、どうやら市場として十分に機能しないどころか、もし、移転してしまったら、魚の流通がストップしかねない事態になってしまっているようなのです。
なぜ、そんなことになってしまったのか?
最初、私も事態がうまくつかめなくて、まさか?そんなバカなことが起きてるのか?と信じられない気持ちでいっぱいでしたが、、、。
どうやら、新国立競技場問題以上の大変な状況に陥っているのです。
しかし、新国立競技場問題より救いがあるのは、豊洲施設がダメなまま完成しちゃいましたが、現築地市場をまだ壊していないことです。
築地移転がなぜ不可能なのか、、徐々に紐解いていきたいと思います。
まず、豊洲新市場の衝撃的な問題点が指摘されたのは、2月のことです。
日刊ゲンダイ 2016年2月24日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/175878
床の積載荷重が700㎏と聞いても、皆さんには専門的過ぎてなんだかピンと来ないと思います。
これは、どういう意味かといいますと、
建物が完成した後に、床にどれくらいの荷物を置いても安全か?という建物設計上の能力をいいます。
通常は1㎡に耐えられる荷重をN(ニュートン)で現しますが、それは地球の重力を考慮した表現です。
同じ質量でも、重力加速度が違うと力が違うので、厳密にはN(ニュートン)で表現するようになりました。
地球の場合、9.81なので、1㎏の質量の物体の力は9.8N(ニュートン)となります。
ちなみに、火星の重力加速度は3.71ですから、1㎏の質量の物体にかかる力は3.7N(ニュートン)です。
つまり、テラフォーマーズたちは、地球に居るときよりも3分の1くらい荷物を軽く感じるというわけです。
話しは床の積載荷重に戻りますが、これは最低基準が建築基準法で決まっておりまして、建物用途ごとに違います。
住宅1800N/㎡ 1㎡あたり1800Nの力、質量は地球上の場合には重力加速度の9.8で割るので、約10分の1と見ていいですが、
住宅の場合には、1㎡あたり180㎏までものを置いていい前提です。
以下同様に
事務室、一般的オフィスは 2900N/㎡→1㎡あたり290㎏
百貨店、店舗 2900N/㎡→1㎡あたり290㎏
映画館とか集会場 3500N/㎡→1㎡あたり350㎏
自動車車庫 5400N/㎡→1㎡あたり540㎏
一般書庫 7800N/㎡→1㎡あたり780㎏
2段式書庫 9800N/㎡→1㎡あたり980㎏
という決まりがありますが、これは最低基準であるため、実際の運用では施設ごとに、より以上の積載荷重の設定をして設計をおこないます。
数字だけでは分かりずらいので具体的にしますと、たとえば下図のような薄型の本棚
漫画コミックスなら250冊入るらしいのですが、コミックス一冊の重量は約200グラムですから、50㎏くらいです。本棚自体の重量が30㎏くらいあるとすると、80㎏です。
住宅は1㎡あたり180㎏が最低基準でしたから、全然余裕がありそうですが、、、この本棚の底面積で割っておかなくてはなりません。
この本棚な底面が90センチ幅で奥行き30センチですから、㎡数に直すと0.27㎡です。
0.27㎡で80㎏だから、、、本棚真下の局部には1㎡あたり296㎏となりますから、、この本棚の周囲に1㎡程度の何も置いていない部分がないと、基準値を超えてしまいます。
実は、この程度の本棚でも、床一面にビッシリ置いてしまうと、住宅の床の積載荷重基準をすぐに超えてしまうのです。
なので、オーバースペックにならない程度で床の積載荷重は多めにしておかないと危ないのです。
コレクターが、大量の書籍を保管のためだけに古い木造アパートの2階を借りるのは結構危険なんです。
さあ、ではこの豊洲施設の床積載荷重、700㎏というのはどうなんでしょう?余裕のある数字なのでしょうか?
1メートルあたり700㎏を理解するtめに、1メートル角の水のキューブが基準になります。
この量の水が1000㎏=1t(トン)です。
トン、なんて単位は普段の生活であまり使いませんよね。
スーパーでも「豚バラを1トンくださらない?」て聞いたことがない。
しかし、プロの世界では案外、すぐにトンが出てくるんです。
普段の生活で出て来るトンに近いものとしては、浴槽です。
たとえば、一人ぐらしの部屋にあるような小さな浴槽、これにめいっぱい水入れたときに、内側60センチ×90センチ×深さ60センチで400㎏近くになります。
つまり、こんな極小の風呂でもそうなのだから、豊洲施設の床の積載荷重700㎏というのは、水槽やいけすを二段には出来ないということです。
さらに、市場ではこんな乗り物が走っています。
「ターレ」と呼ばれる、正式名「ターレトラック」というはたらく自動車です。元はターレメーカーの朝霞製作所の登録商標でしたが、今は一般名詞になっています。
このターレ1台で何も載せてない状態で、1トンの重量があります。
だから!このターレに魚を積み込んだり、魚の水槽を載せたり、して運んでいるときの重量は2トンを超えます。
でも、、1㎡あたりなんだから、、、、大体ターレを上から見たときの投影面積が大体、幅1メートル×長さ2メートルで、、2㎡くらいでしょうかね。
2㎡あたりで2トンなんだから、1トン/㎡。
トンは1000㎏なんだから、、、、豊洲の床の積載荷重は700㎏ということは、、、、
全然、超えてんじゃん。
豊洲の積載荷重設定は、荷物運ぶように出来ていないじゃないですか!
一体だれがこんな設計したんだよ!
と思って調べたら、、、
ヤツらでした。
新国立競技場問題のときにも、出来るのか?キールアーチ?の構造計画の説明を一度もしなかった、日本一の設計会社と言われているところでした。
なんか、ヤバイ雲行きだぞ~これ。
そういえばゲンダイの記事で指摘された、舛添東京都知事は既に居ません。
政治資金の私的流用を指摘され、政治資金規正法が記録のみのザル法で、何に使ったか?については罰されないというところを逆手にとって、高圧的な態度や言い逃れの時間稼ぎをしていることが、国民のさらなる不評を買ってしまったあげく、自分で頼んだ第三者という卑怯な手がさらに人々の怒りに油を注いでしまいました。
4ヶ月前の記事ですが、舛添氏、もはやなつかしい感じもします。
舛添知事は退陣したのですが、豊洲の工事は粛々と進行してしまって、ここまで出来てしまいました。
②につづきます。