先日来からの懸念事項が東京新聞に続き記事になりました。
懸念していた新計画に応募が1案か2案しか来ないのでは?というものです。
この件では、JIA(日本建築家協会)の芦原太郎会長、筒井信也専務理事ともお会いしまして、デザインビルド方式が昨今地方の公共施設でも増えてきており、公共入札における設計施工分離体系を脅かすものであり、危機意識を持たねばならん、というお話をお聞きしておりましたが、昨日意見書が提出されたようですね。
日本建築家協会、新国立競技場コンペで意見書
2015/9/15 19:26 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HMH_V10C15A9TJC000/
日本建築家協会(東京・渋谷)は15日、整備計画が仕切り直しとなった新国立競技場の設計や建設のコンペを巡り、「十分な競争原理が働かないことが考えられる」などとする意見書を発表した。整備計画再検討のための関係閣僚会議や日本スポーツ振興センター(JSC)に提出した。
今回は設計と建設が一体のチームを募集しており、意見書は「建設会社と組めない建築家の応募が難しい仕組みになっている」と問題点を指摘した。価格の透明性を確保する手立てをとることや、積極的な情報公開が必要とした。建設予定地の神宮外苑の周辺環境に配慮した計画案を選ぶことも求めた。
新国立競技場計画は本当に白紙見直ししてるのか?5
での予測どおりになってしまうとしたら、もしかしたら、2年間設計やっていたと豪語するデザイン再挑戦宣言のザハ+日建設計チームですら応募が出来ないかもしれない、ということです。
どうなってしまうのか?
ちまたの噂によれば、これまで建設受注予定でいた大成建設が資材を抑えているから、サブコン(下請け業者群)を抑えているから、他のゼネコンは元より、準大手ゼネコンでは早々に退散しているとかの、もっともらしき言説が飛び交っておりますが、、
大成建設も日本のゼネコンの横綱なら、横綱相撲を目指すなら、ここは一丁、「日本の建設業オールジャパンで考えるのだから、いずこのゼネコンがコンペに勝って頭になっても施工支援します!みんなどんどん応募して来い!」ぐらいのことは言って欲しいところです。
一方、大成建設意外で唯一応募可能性があると言われているのが、竹中工務店です。
戦国ゼネコン 竹中藤兵衛 巻の1
維新ゼネコン 竹中藤右衛門 巻の2
以前も竹中工務店について解説ましたが、果たして竹中工務店が火中の栗を拾うかどうか微妙なところだと思います。
と心配しておりましたところ!もしや名乗り出る?むしろ出て欲しいというニュースがありました!
それは!ガンバ大阪スタジアムがついにお披露目されたらしいのです。
直線主体で構成された外観
おおー!見事に完成している。
観客席とピッチが近い!
スタンドの傾斜角も最適化している。
ピッチの芝生がそろった予想図
本当に2年で建設したんですねえ。
このスタジアムは建設費用が寄付中心であったため、費用をどこまで抑えられるかが勝負だったようなんですが、費用対効果を超えている。むしろ一番立派なスタジアムなんではないでしょうか
その秘密はですね、徹底した現場作業の省力化だったんです。
建設通信新聞という業界紙でその辺を詳しくレポートしてあります。
ちょっと専門的な内容ですが、素晴らしい記事です。
引用ここから
【現場最前線】基礎の90%をプレキャスト化! 省人化徹底で挑む吹田市立スタジアム
http://kensetsunewspickup.blogspot.jp/2014/11/90.html
大阪府吹田市の千里万博公園内で、4万人を収容できる(仮称)吹田市立スタジアムの建設が進められている。この現場では、竹中工務店の設計施工案件であることを生かし、両部門が連携して着工の1年以上前から現場作業を極限まで減らすための検討・実験などを繰り返し、基礎のプレキャスト化を実現。以降の工程でも徹底した省人化を図っている。
このプロジェクトは、国際サッカー連盟や日本サッカー協会の新基準を満たすサッカー専用スタジアムを建設するもの。サッカー界とガンバ大阪、関西財界で構成するスタジアム建設募金団体が事業主となり、法人と個人の寄付で建設費を賄う「みんなの募金でつくるスタジアム」としても注目を集めている。
規模はRC・S造6階建て延べ6万6355㎡。500kWもの太陽光発電や雨水利用などの環境配慮技術だけでなく、スタジアムピッチ照明はLED(発光ダイオード)を採用して大幅にエネルギー使用量を削減するなど、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)Sランクの「エコ・コンパクトスタジアム」を目指している。
事業費は約140億円で、工期は約22カ月。在来工法ではこれらの条件をクリアすることが難しく、さらに建設業界では職人不足が深刻化してきている。そこで同社は中野達男総括作業所長が発案した基礎のプレキャスト化をはじめとする省力化に挑むことにした。
フーチングPcaおよびPC梁の設置状況
ことし5月に終えた基礎工事では、同社保有技術の「竹中式杭頭半剛接工法」をベースとし、工場製作したフーチングを杭頭にかぶせて接合材となるコンクリートを流し込んで一体化させる方法を採用。このコンクリートの配合も実験により、「36ニュートン、スランプ21cmでもポンプで圧送すれば密実に充填できる」(松尾享作業所長)ことを確認して使用した。
そして、工場製作するフーチングや基礎梁は接続部分の鉄筋にスリーブ継手を始め、ジョイントに必要な材料を工場で事前にセットし、現場で簡単に接合できるように工夫。さらには平板ブロックでフーチングの荷重受けを兼ね、位置決め用墨だし板としても採用することで、床付け面の捨てコンクリート打設をなくした。
こうした省力化を積み上げた結果、基礎全体の約90%をプレキャスト化することができ、これに伴って在来工法では1日当たり360人を要する作業員数を「50人ほどに抑えることができた」(松尾所長)という。
現在進めている地上躯体工事でも可能な限りのプレキャスト化とジョイント部の工夫などを徹底している。柱鉄筋は地組みするものの、その時に鉄筋がズレないようにテンプレートで固め、その鉄筋を所定の位置に立ててから、一体型に組みあがったシステム型枠ですっぽりと覆ってコンクリートを打設している。
こうした工事を進めるとともに、現場内の「サイトPC工場」では、日々の作業から発生する細かい修正なども反映させながらさまざまなコンクリート部材を製作。4階のVIPフロアを挟み5階から立つ上部スタンドは3分割して製作したPC部材を地組みヤードで一体化し、総重量50-80tにもなる大型プレキャスト部材を揚重・取り付けすることで、工期短縮・省力化と高所での危険作業の排除を図っている。この揚重作業には日本に数台しかない超大型のドイツ製クレーン(リープヘルクローラー)を予定している。
4万席すべてに屋根がかかるサッカー専用スタジアムとなり、観客席とフィールドが非常に近いことで、ダイナミックな臨場感を演出している。日本最大のVIPフロアをもち、約2000席のバルコニー席も併設する。「多様化した観戦スタイルにも対応できるサッカー専用スタジアムとして日本でのスタンダードを目指している。また、災害時は、吹田市の防災拠点及び避難所としての活用も予定している」(大平滋彦大阪本店設計部設計第5部長)。
松尾所長は「既に寄付金の額は132億円を超えたと聞いており、今後も無事故・無災害を続け、皆さんのこうした思いをしっかりと形にしていきたい」と語る。
引用ここまで
「エココンパクト」という建物コンセプトが解説してありますが、屋根の太陽電池とか緑化とかいった子供だましの技術ではなく、ここで試みられている建設業での最大のチャレンジはですね。
「基礎のプレキャスト化」です。
これは凄いことなんです。
基礎というのは地面の上に最初に置かれる板というか梁というか、建物を支える基盤となるものです。
地盤が良ければ直接基礎といって固い地盤の上に置く、地盤が悪ければ固い地盤まで杭を打ってその上に置く。
置くといっても、建物全体に広がる広大な面積を持つ部分ですから、普通は現場打ちコンクリートになるんです。
現場で「墨出し」といって位置決めをし、杭打ちをして、その上に真っ平らな面を作るために「捨てコンクリート」を打ち、再度「墨出し」をして、そこに鉄筋を敷き詰めて、基礎梁の鉄筋をセットして、型枠を組んで、コンクリートを流し込んで、さらに鉄筋と上部構造とアンカーして、型枠組んで、コンクリートを流して、
と、一般住宅でもこの繰り返しの現場作業を経るんですね。
工期は天気にものすごく左右されます。
精度も現場で何度もチェックし続けないといけません。
上記記事で一番凄いのはここです。
在来工法では1日当たり360人を要する作業員数を「50人ほどに抑えることができた」
(by 松尾所長)
プレキャストというのは、プレ=事前に、キャスト=鋳出した、という意味でして、コンクリート部材を現場で流し込み固めるのではなく、プラモデル化、キット化してあるのです。
工場で部品化しておく.
その工場も
現場内の「サイトPC工場」では、日々の作業から発生する細かい修正なども反映させながらさまざまなコンクリート部材を製作。
現場で加工場を持つ、なんか昔の社寺仏閣の工事みたいですよね。現場の進行に合わせて部品を設計し製作し組み立てる。
工期を早くして一日あたりの作業人員も360人→50人、人件費が仮に1日3万円だとして、1080万円→150万円です。
しかも工場製作部品ゆえ精度は高まっている。
発注者も施工者も利用者もみんながWINWINじゃないでしょうか
こういうのが本来、建設業界がチャレンジする技術的課題だと思うんですよね。
この実績が今後の許認可にも反映していくこどで、どんどん川上から川下に流れていって、日本中の建設業者の技術や付加価値があがっていく、大手ゼネコンというのはやはりこういう砕氷船として頑張っていくのが使命だと思います。
「一番をつくろう」っていうのは、こういう一番なんじゃないか?と思います。
じゃあ、このガンバスタジアムで出来たことが新国立競技場で出来るかどうか?なのですが、、、
一番の問題があのブクブクにふくれあがったJSCが指定した肥りきった大きさと敷地の関係なのです。
引用ここまで
「エココンパクト」という建物コンセプトが解説してありますが、屋根の太陽電池とか緑化とかいった子供だましの技術ではなく、ここで試みられている建設業での最大のチャレンジはですね。
「基礎のプレキャスト化」です。
これは凄いことなんです。
基礎というのは地面の上に最初に置かれる板というか梁というか、建物を支える基盤となるものです。
地盤が良ければ直接基礎といって固い地盤の上に置く、地盤が悪ければ固い地盤まで杭を打ってその上に置く。
置くといっても、建物全体に広がる広大な面積を持つ部分ですから、普通は現場打ちコンクリートになるんです。
現場で「墨出し」といって位置決めをし、杭打ちをして、その上に真っ平らな面を作るために「捨てコンクリート」を打ち、再度「墨出し」をして、そこに鉄筋を敷き詰めて、基礎梁の鉄筋をセットして、型枠を組んで、コンクリートを流し込んで、さらに鉄筋と上部構造とアンカーして、型枠組んで、コンクリートを流して、
と、一般住宅でもこの繰り返しの現場作業を経るんですね。
工期は天気にものすごく左右されます。
精度も現場で何度もチェックし続けないといけません。
上記記事で一番凄いのはここです。
工場製作する基礎梁はジョイントに必要な材料を工場で事前にセットし、現場で簡単に接合できるように工夫。
さらには平板ブロックでフーチングの荷重受けを兼ね、位置決め用墨だし板としても採用することで、床付け面の捨てコンクリート打設をなくした。
さらには平板ブロックでフーチングの荷重受けを兼ね、位置決め用墨だし板としても採用することで、床付け面の捨てコンクリート打設をなくした。
こうした省力化を積み上げた結果、基礎全体の約90%をプレキャスト化
在来工法では1日当たり360人を要する作業員数を「50人ほどに抑えることができた」
(by 松尾所長)
プレキャストというのは、プレ=事前に、キャスト=鋳出した、という意味でして、コンクリート部材を現場で流し込み固めるのではなく、プラモデル化、キット化してあるのです。
工場で部品化しておく.
その工場も
現場内の「サイトPC工場」では、日々の作業から発生する細かい修正なども反映させながらさまざまなコンクリート部材を製作。
現場で加工場を持つ、なんか昔の社寺仏閣の工事みたいですよね。現場の進行に合わせて部品を設計し製作し組み立てる。
工期を早くして一日あたりの作業人員も360人→50人、人件費が仮に1日3万円だとして、1080万円→150万円です。
しかも工場製作部品ゆえ精度は高まっている。
発注者も施工者も利用者もみんながWINWINじゃないでしょうか
こういうのが本来、建設業界がチャレンジする技術的課題だと思うんですよね。
この実績が今後の許認可にも反映していくこどで、どんどん川上から川下に流れていって、日本中の建設業者の技術や付加価値があがっていく、大手ゼネコンというのはやはりこういう砕氷船として頑張っていくのが使命だと思います。
「一番をつくろう」っていうのは、こういう一番なんじゃないか?と思います。
じゃあ、このガンバスタジアムで出来たことが新国立競技場で出来るかどうか?なのですが、、、
一番の問題があのブクブクにふくれあがったJSCが指定した肥りきった大きさと敷地の関係なのです。