大谷石の解説は
新国立競技場説明会にて 5に加筆するとして、
最近世間を賑わしている建築業界の話題。
「免震装置の偽装問題」です。
「偽装」という言葉を聞くと思い出しますね、姉歯建築士事件を。
あれからもう10年もたつのか、、と感慨深いですが、あの事件後の建築基準法改正の問題や混乱についても俺は当時各方面とやりあってた。
あの事件は正しくは「構造計算書偽造問題」と呼ばれてますが、こんな難しい専門用語よりも、
事件の当事者である一級建築士の名前が、姉歯秀次。
前半の苗字が「姉の歯」でシュールレアリズムの詩、
そして後半の名前の「秀次」は戦国、しかも豊臣秀吉の甥。
そして、構造計算書とへアスタイル。
その名前とキャラがあまりに立っていたため、もうそのまま「姉歯事件」で通じるようになりました。
日本の姓というのは、多分にコピーライティング的要素がありまして、行った先々の地名や行動や役職なんかを元に、時代時代ごとにその都度考案してきているので、諸外国と比較して非常に多種多様です。
戦国および珍名さん好きの私でも、
この事件が起きるまでは「姉歯(あねは)さん」は知らなかった。
陸前国栗原郡姉歯村が起源(ルーツ)であり、桓武天皇の子孫で平の姓を賜った家系である平氏の一族なんだそうです。
しかも姉歯城も存在している。
それでけじゃない、伊勢物語の在原業平が詠んだ歌に姉歯は登場する。
「栗原やあねはの松の人ならば 都のつとにいさといまわしを」
宮城県の金成という場所に、姉歯の松という松があったんだそうです。
姉に歯、葉ではなく歯、人体の一部。宮城県の金成という場所に、姉歯の松という松があったんだそうです。
「お姉さんの歯」と書いて「姉歯」
The teeth of sisters
「シスターズオブマーシー」を彷彿とさせパンクバンドなみにかっこいい。
知ってからも、この2文字をもって苗字となすネーミングセンスの凄さには何度見ても、感無量というか、何かシュールな詩のような、サルバトール・ダリの絵画を見るような、蛭子能収さんの漫画を読むような、感じを受けますね。
その姉歯事件で広まった「偽装」という2文字。
2005年から、様々な業界で発覚し続けている「偽装」。
「間違い」とか「ミス」ではなく、「偽りの装い」と書いて偽装。
またか!と
また偽装か!と
東洋ゴムが偽装かよ!と
正確には「建築構造設計において水平変位の負荷を低減させるために導入される免震装置のアイソレーターおよびダンパー」なのですが、
そんな難しい専門用語じゃわからないので「ゴム偽装」となった。
そうかあゴムかあ、、ゴムかあ、、
ゴムなんていうかなり世俗に近いものまでが偽装されているとなると、日本社会全体にどんよりとした不安感、やるせなさ、じっとり感といったものが漂ってきますよね。
私の感想はですね、、やはり、
やっちまったなあ!
です。
実際にどういう経緯で何が起こっているのかといいますと、
なぜ、今、森山が「ゴム偽装」を気にしているのか、
そしてこのゴム偽装がどのように新国立競技場計画にからむのかといいますと
つづきです。
http://diamond.jp/articles/-/69240
東洋ゴム工業は3月25日、免震装置のゴムの性能を改ざんしていた問題で、震度5強程度の揺れでも倒壊や崩壊はしないという検証結果を発表した。
ところが同じ25日、国土交通省は国の性能基準を満たしていない同社製品が設置された建築物の棟数は、さらに拡大する可能性があることを明らかにした。
「う~ん、どうなんだろう」この東洋ゴムさんからのコメント。
建築に詳しくない方々からすると、
25日にいったん「倒壊しない!(キリッ)」の東洋ゴムに対し、
同日に監督省庁の国土交通省から「まだいっぱいあるぞ、ゴルァ!」
と言われたことについて、
「大丈夫らしいけど、まだまだ隠してたんだね。」と
不信というか、なにやってんだ、とかそういった気持ちが沸き起こると思います。当然です。
ですが、一応建築専門家の端っこも端っこ、エッジもエッジ、建築家の極北に位置する5等星、昴(すばる:ボサボサの髪が元意)、限界建築家、マージナルアーキテクトである私からするとですね。
「震度5強程度の揺れでも倒壊や崩壊はしないという検証結果を発表」
という部分が、「ふざけんな、ゴルァ!」なんです。
真面目に事態を呑みこんで謝罪も解説もしていない!
そもそも「震度5強がどう」とか「倒壊」とか「崩壊」は、免震装置の範囲じゃないですからね。
免震くん。
そこまでじゃねえだろ、そこまで君、背負ってないわ。
倒壊や崩壊は構造全体の話なんであって、
もし、「免震装置に偽装があったから倒壊」なんていうなら、
実は免震装置があってもなくても、その前に倒壊、崩壊の危険があるくらいに危ない構造ということです。
「震度5強程度の揺れでも倒壊や崩壊はしないという検証結果を発表」
この東洋ゴムの記者会見を
やはり偽装後の対応がひどかった船場吉兆で例えるなら
「(産地偽装や賞味期限切れ、食べ残しを出していたけれども)腐ってはいなかったんで、食中毒や死亡することはないという検証結果を発表」
いや、料理屋としてのモラルや偽りの装いを問題にしているのに
「そんなことでは死なない!(キリッ)」って発表されてもねえ。
つまり、どういうことかというと
「免震装置」というのは、
地震に真正面から向き合う、対処する、強くする、建築構造のメインキャラではなく、
地震の揺れによる急激な水平変位、地震の影響を低減し、高層ビル等の内部空間での揺れの初速を抑えて家具の倒れや吹っ飛びを抑制する。
建築全体でいえば、メインの構造のサポートをしている役目なんです。
だから、「免震」が出来ているなら、メインの構造が少し軽く出来る、耐震要求水準からくる柱や梁の大きさや接合部の強度設定を下げることができるわけです。
つまりは、震度5でも、倒壊はない、とかいった言い訳をしているうちは、東洋ゴムも船場吉兆の女将となんらかわならい対応なんだ!
ニュースを見ている大衆は、どうせ建築の専門家じゃないから分からんだろう?という舐めた対応をしています。
しかしながら、姉歯建築士と同様に、船場吉兆も、誰も、まさか!やらんだろうということをやって、陳謝の後も進んで偽装し続けたわけなんですが、
免震ゴムのケースはちょっと弁護したいんですが、設定した機能をうまく生産するのが難しいという事情はあります。
ただ、東洋ゴムが供給している免震装置のゴムの製造は非常に難しいものであることは事実なんです。
ブリヂストンが救済に乗り出す「免震ゴム」不正事件:矢来街ぐるり(新潮社)
http://www.gruri.jp/article/2015/04080800/
一部抜粋
認定取り消しとなったのは、SHRB-E4とSHRB-E6の2種。前者が2045基、後者が7基納入され、55棟の建物に使用されている。
東洋ゴムは25日、問題の免震ゴム装置を全て交換すると発表したが、問題は“時間”だ。
「私どもの生産能力ですと、2000基の装置を新たに作るのに、少なくとも1年はかかります。しかも、代替品を開発して新たに大臣認定を取らなければならず、これにも時間を要してしまう」(東洋ゴム)
抜粋ここまで
免震装置への設定要求水準と生産現場での齟齬がみられる。
そもそもこのジャンルに見切り発車の感が強いのも事実なんです。
で、この「免震装置偽装事件」と新国立競技場問題がどう関係してるんだ?なんですが
もういちど発表された断面図見てみましょう。
7につづく