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谷口吉生さんの京都国立博物館「平成知新館」を見てきたよ4

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谷口さんの目地解説まだまだやりますよ~。


3で見た外部庇のところの柱
まあ、この付き方も凄いんですけどね。
これほどの大判のアルミ板のド真ん中に柱をセットしている。
これはホントたまげる処理なんです。



このことの何が凄いかといいますと、まずこの庇下のアルミ板がセットされる前に何があるかといいますと、当然鉄骨の構造柱があります。

なのに、アルミ板がガシっと入っている。
ありえない。


柱の前にアルミ板を付けて、穴に柱を通している。
仕上げ材が先、おそらく。
しかも、ちょっとでも傷付けたら、速攻アウトの生地アルミ。
値段だけじゃない、工事が止まる。
やり直しとなると、アルミ加工再発注、運搬、再セッティング。
相当な緊張感走ったと思いますよ、この取り付け時。

デザインのせいで施工の段取りまで決まってしまう。

で、そんなギリギリの施工部位にまたしても逃げ場のない目地。


均等幅でセット。
誤差1ミリ以内。

東西総長50mの建物で誤差1ミリとか、クレージーな指示です。

普通コンクリート打ち放しの建物で相当ピン角まっすぐに見えて誤差が5ミリから10ミリというのが建築的スケール感なんです。

そのままスケール比較していいかどうかわかりませんが、

50mの物体で誤差1ミリというのは、5mくらいの自動車でボディの誤差で100ミクロンってことですよ。50センチのアタッシュケースで10ミクロン、5センチで1ミクロンの誤差、ブレゲとかの高級腕時計みたいなもんです。

わかっていただけますか?

それを入口の庇でシャアシャアとやってる。
しかもそんなムチャクチャなデザインとはまったく感じさせない。
爽やか過ぎる処理、サラサラ過ぎる処理、見えない神業。

じゃあ、中に入ってみましょう。


このエントランスまでは誰でも写真撮影可です。

この空中廊下と階段も凄いんですが、内部まで石が貼られています。
暖色系のベージュの石、化石混じりのジュライエローだと思いますが。


ダーっ!と。
逃げ場なく隙間なく。

いえ、隙間はあります。
石と石の間、ここにも目地です。



もう、ね
これは、もう
本当の意味で、真に「なんということでしょう!」です。


この石は「ジュライエロー」というのですが、恐竜好きならよく御存知のジュラ紀の石なんですね。
ドイツ産です。
ドイツのバイエルン地方にホルツマーデン(Holzmaden)というジュラ紀の地層が露出する化石で有名な街があります。
おそらくその周辺で産するのだと思います。


一般的に大理石の名前は、色+産地で表されているんです。
「ロッソベローナ」といえば、イタリア「ベローナの赤い石」という風に


そのジュライエローという石灰岩質の石をカッキカッキに厳しく加工してあると見ます。


ひとくちに大理石といってもその主成分はほぼ同じなのですが、熱による変性を受けて再結晶化したものが艶々して透明感のある大理石です。
この「ジュライエロー」はその前段階だから、そうでなくても通常の大理石より鋭く加工するのが難しい石なんです。

なので、「本磨き」というツルテカテカではなく、「水磨き」という微妙にマット感のある処理にしてあります。
おそらく、コンクリート打ち放しの肌合いと木部との「なじませ」を狙ったものだと思います。

形状はカッキンカッキンなのに肌理は少ししっとりさせてあるわけです。

出来上がった建物を見れば簡単にすっきり石張りしてあるとしか見えませんが、ただ単に石加工を精度よくやって目地を綺麗に通せばいいかというとそうではありません。

それは、模様シートを貼ってるわけじゃなくて、本物の石だから、重たいから、建築だから、です。

元々、石は積んでいたわけです。
重たいものを下から順々に。

それが、だんだん様々な工法や簡便な工法が生まれ、普通の建物でも石積みのテクスチャーだけを取り入れたいということで、石風味、石をかたどりした軽い素材も生まれました。

結果、積石構造でない場合にも石積み表現をしようということで、積むのではなく「表面に貼る」というやり方が出てきたんですね。



ビルなんかの場合では、この接着工法では万一剥がれてきた場合の心配があります。
また、薄いといっても大判の石だと厚みが3センチから5センチくらいになってきて、重量も100㎏を優に超えて数百㎏になってしまいます。

そこで、ビルでは壁から引っ掛ける、壁に一枚一枚が固定されながら上下にも荷重を受ける乾式工法が一般的なんです。
地震時の揺れや、施工時の出入りや隙間の調整もできますからね。



この「調整しろ」として、石と石の間に目地があり、そこは目立たないように埋めて隠すんです。「調整しろ」としての目地は幅が広ければ広いほど浅ければ浅いほど、目立たないのでゴマカシが効きます。

そういった石の施工知識をもってもう一度谷口さんの石壁を見てみると



このアソビのない自然石で真っ平らの壁の凄さが分かってきますよね。
おそらく、下図のようなやり方だと思います。


ほとんど、「アソビ」がない収まりです。


一番コントロールが難しい再重量自然素材の石でここまでやってあるわけですから、他のところも厳しい収まりをとっています。

旧館とつながっていく廊下のところです。


整然と並ぶ柱とサッシですが、、


床の溝は空調の吹き出し口ですね。


床の石にはもはや目地すらありません。
こういう石と石を目地なしで「突きつけ」ることを「眠り目地」と言います。

で、柱に合わせてくり抜いたところにも目地やシーリング(ゴムみたいな接着剤の隙間埋め)がありません。
で、空調吹き出しのグリルのところにもありません。

この石仕上げは黒い御影石ですが、真っ黒ではないですよね。
なぜでしょうか?
サッシ枠と柱とグリルとこの石はチャコールグレー(墨色)で統一されているように見えますが、どうやっているのでしょうか。

この石の処理は磨きではなくバーナー仕上げです。
石の表面を高温のバーナーで焼いたものです。
すると表面の結晶が弾け飛びながらとろけて固まり「ゆず肌」をつくります。その分マットな感じに発色は弱くなって渋い感じに仕上がるのです。

そして鉄骨の丸柱もマットに仕上がっています。

で、バック側の壁面は木ですが、この木部も尋常ではない。


壁面に消火器と表示された扉があるのですが、、、、
丁番とかの金具がまったく見えません。


この木はですね、おそらく塩路(シオジ)か
佛(タモ)だと思うのですが、、
シオジとタモは区別がつきにくいんですが、ジュライエローに合わせる意味で、黄味がすくなくより明るめで肌色に近く、木目の筋々の巾が多少広めなシオジを採りたいところです。
タモという木は、野球のバットにする木(特にアオダモ)ですね。
シオジもタモも植物としてはトネリコ種の木です。



エレベーターの内装も、同じ雰囲気にしてありました。


と、部材やディテールの話ばかりになってしまいましたが、、
続いて、プランと空間構成のことも解説します。

なんか谷口建築の解説がいつまでたっても終わらないですね。
ま、オタクの会話なんてそんなもんでしょうが、お茶室とかをされている数寄屋系の人達はもっとうるさいですよ。
現代建築系の人でここまで話しの合う人がなかなかいないのが残念なんです。


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