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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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国立競技場の解体工事が決まらない理由 4

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既存杭がどのような影響を与えるのか?の続きです。

引き抜くとなると5000~1万本も存在し、
場合によっては杭の引き抜きだけで解体工事費の70億円を使い切ってしまうおそれがある、という話でした。

既存杭を撤去しないで残す場合は、古い杭が新しい建築の基礎の邪魔にならないように一定の深さまで取り去る必要があります。
そのうえで、少し離した場所に打つのです。

既存杭を生かすことを昨今は提唱されているということでしたが、その場合の方法の提案や実例も多くなってきました。


この方法は古い杭も新しい杭もみんなで支える、というものです。


そのために、単独で下向きにのみ効いていた古い杭を新規杭と横つなぎする基礎梁や一定の厚みをもった基礎板(スラブマット)
で杭頭をつないでいくのです。


この原理は下の写真を見ていただければ、ひと目でわかるでしょう。







基礎梁でつなぐことにより古い杭も新しい杭もみんなで支えていますね。




スラブマットっぽいのはこれです。


縦横に渡すことで杭がびっしり、面で支えています。



あと、周辺に余裕があればこのような工法もあります。


道路や橋などの1本柱にはぴったりです。

バットレスというのは脇から支える構造要素なのですが、日本建築ではあまり登場しなくて、ヨーロッパのゴシック聖堂などでは「フライングバットレス」として特徴的に使われています。


この「フライングバットレス」という言葉は、建築用語の中でも、「ネガティブフリクション」に次いで、バンド名にしたいカッコイイ言葉のひとつだと思っているんですけどね。

構造部のディテールが外側の露出させてあり、蝙蝠や翼竜の羽根の骨みたいで、荘厳かつ幻想的なイメージを生み出しています。


写真のシャルル大聖堂ではバットレスの先端にさらに棘を出したりしてあるため、構造要素がどこなのか見えにくいですから、これも分かりやすい例を写真で出しますと



下で支えているカギのついた棒、火消しのときに使った道具、鳶口(とびぐち)といいますが、その棒がフライングバットレスと同じ役目を果たしています。

いずれも、杭頭の水平変位に抵抗しようというものです。


実際に現在の国立競技場と新国立競技場案の平面的関係はどうなっているのでしょうか



「無駄にデカイ問題」はすでに多くの方々がご指摘されて、
皆さん十分に理解できているとおもうのですが
、やはりデカイですね。


なぜ、こんなものを進めていこうとしているのか本当に理解に苦しみます。

新国立競技場案で、国立競技場の既存杭を残置、もしくは再利用できそうなものなのか、
具体的に平面図上で重なり方を見てみましょうか


ぜんぜん、ダメですね。

無理です。

旧形状と重なり合う部分が半分もありません。

では、断面形状はどうなのでしょうか、

これが新国立競技場2014年5月28日時点の案です。
ちなみに、半年以上経過してもこれ以上進んでいるとの情報はありません。


で、現国立競技場の断面図。
青いところが躯体、赤いところが杭。


大きさを合わせてみましょう。


西側はグランド面に飲みこまれた上状態、
東側は地下室がぶつかっていますね。

それにしても、つくづくフザけた計画です。

東西方向ではまだこの程度の違いですが、南北方向になるともっと凄いことになります。


なんだ?これは。
大バカヤロー!


結局、2014年5月28日付けの新国立競技場案の断面図には肝心の基礎下周りが出ていないので、既存解体でどういう処理をするべきなのかよくわからないんですよね。

これは、きっと解体業者さんも同じで上物の解体だけでいいのか、基礎の下まで解体するのか、その場合どこまで解体するのか誰も的確に指示出してないんじゃないかと思うのです。

あと、一番謎なのがこの長手方向にある二カ所の下向きのヘッコミ部分なんですよ。

やっぱりやるつもりなんですかね、下向きの巨大アンカー。

この件も設計図が出てくる前に予測しましたよね。
参照:新国立競技場の基本設計が終わらない理由3

このようなエントリーを書いておりましたら、またまた有志の方が面白いものを送ってくださいました。

付近の地盤状況に関する情報です。


これが現在の姿ですが、地面の下はこうなっています。


外苑西通りは元は川でしたから低地、埋め立て(ピンク色)ですね。


明治時代の地図でははっきり川です。


初代競技場、初代の日本青年館、現在の東京体育館は徳川邸です。


前回のオリンピックの前までは外苑西通りがありません。


千住院下の千駄ヶ谷トンネルも登場して現在の姿にほぼ同じです。


元が川底ですが、地下15~16メートルで支持地盤出ますね。


ここも川底なんですが地下10mで一気にグラフが右に寄っています。

このグラフは右に寄ってる方が固い地盤であることを示します。

信濃町入口方向は地下20mからですね。

神宮球場のあたりも地下20mくらいです。
全体に東京都内でじゃ結構良い方の地盤です。

結局、今の新国立競技場計画の基礎下の処理はどうなりそうかといいますと、下図のようになります。

ピンクは現国立競技場の杭がからんでるところ、おそらく引き抜き。
薄紫が新国立競技場で杭打つか何か地盤触るところです。


断面図だとそのバカバカしさが少しやわらいでますが平面図で見ると、
こうなります。


えっ?

ほとんどじゃん、土地のほとんどの範囲を地下20mくらいまで掘り下げるのか、、、、

採掘現場みたいになるね。


いやあ、もうやめといた方がいいと思いますよ。
これは

もう改修でいいよ。
久米さんでいいですよ。

なんでJSCは建築のこと本当にわかってる久米設計を外して、
建築のこと知らない有識者なんかに任せたかなあ。


久米設計が国立競技場の主治医なんだから少なくとも診察の方針とかに関わってもらっていないと正しい治療が出来ないですよ。

上モノだけで建築じゃないんだから。

有識者会議に関わっている建築家は医者でいえば藪医者どころか、もはやモグリなんじゃないかとすら思えてきます。


では、国立競技場の耐震改修方法について、久米設計さんはどう考えていたのか。

現国立競技場の現状杭が鉛直方向にしか効いていないのをどのように耐震改修しようとしていたのかを見てみましょう。



久米設計と創業者の建築家久米権九郎については下記を予習しておいてください。



5につづく、
国立競技場の解体工事が決まらない理由」は5で終わり。

で隅田川スタジアム計画の続きをやります。



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