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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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新型コロナウィルスにおける建築的考察⑰

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ここまでの、結核病棟の対応から学んだことは、

 

1時間あたりの換気回数15回の能力で換気すれば約30分で空気中の細菌は99.9%減らすことができる。

病院の中枢としての手術室やICUは、清潔空間として陽圧管理している。

排菌している患者さんは絶対に陰圧室に入れないと、周囲に菌が広がり院内感染を起こす。
既存の病院建築の中に陰圧室をつくることはできる。

 

ということがわかりました。

 

では、既存の病院で新型コロナウィルス感染者を受け入れるときにどうすればいいのでしょうか?

 

いくつかケーススタディしてみましょう。

 

1.分棟型の病院のケース
 

病院建築で起こりがちなこととして、時間と共に増築を繰り返して拡大しているケースがあります。

入院患者さんを全部退院させるわけにもいかないし、地域の診療を止めるわけにもいかないし…ということで、

新棟、新新棟、西新棟、北新棟とか呼ばれたりして、患者さんも医療スタッフも渡り廊下で、大変…という施設ですね。

 

新型コロナウィルスに対応する、という限りにおいては、この分棟型の病院は有利です。

 

空間を遮断し、新型コロナ専用病棟とします。

医療スタッフもその他の事務系のスタッフも、備品供給や廃棄物管理のスタッフも専用化です。

絶対に兼用とか、療法にアプローチしてはいけません。

スタッフローテーションも両棟で動く場合は2週間とかの待機時間を設けてください。

 

2.水平増築展開型のケース

 

これもよく見ます。付け足し増築の繰り返しです。

はじめてきた人が迷う、レイアウト図がないとどこにいるかわからなくなってしまう、一番迷路化するパターンです。

 

このケースもどこかでゾーニングできるのですが、重要なことは避難ルートとエレベーターや階段の関係です。

建築法規や消防法では、病院の1フロア面積あたりの必要な階段の数や廊下の長さが決まっています。

そこをうまく見極めることと、エレベーターと階段は上下でつながってしまうので、新型コロナ患者さん収容部で専用化しないといけません。

空調や給排水もこの際チェックして、ゾーンを貫通したダクトや排水菅がないように分ける必要があります。

 

運用は、分棟型と同じで分割されたゾーンの間を内部で行き来してはいけません。

 

3.パッケージタワー型

 

これが一番難しいです。

ここ十数年で増えたタワー型の巨大病院。

外から見ると綺麗な直方体のビルディングで、デコボコもないスッキリした建築なんですが、中は異様に複雑です。

同時に、低層階は商業施設やカフェやコンビニが入ってたりして、受付がホテルのように2階や3階にあり、各診療室も2階から3階です。

そして、病院の主要部である手術室やICUが中間階の4階から6階あたりに入っていて、上層部は病室、最上階にヘリポートです。

 

 

こうした大型の病院の場合、新型コロナの患者さんをどこに入ってもらうかの前に、

専用エレベーターを設定し決めることができるのか?から考えなくてはなりません。

 

こういう平面図で手術室とICUが構成されているときに…

いきなりICUに感染症の患者さんを入れると、周辺で院内感染が起きかねない。

 

 

だから、まずは専用エレベーターや階段を設定できるのか?という検討が先です。

そのときに、建築の法律や消防の法律に齟齬はないか、またエレベーターをひとつ専用化しても上下層階での利用者に支障はないか…

これらを確認しなければなりません。

 

 

そのうえで、このエレベーターと階段を中心に上階の病室を仕分けします。

 

階段とエレベーターは専用化されます。

 

 

つまり、最近に建てられた病院建築であればあるほど、また大型でタワー型であればあるほど、

病院全体が有機的に一体化しているので、一部を感染症対応でゾーニングするのは非常に難しいのです。

 

東京都内で比較的新しい永寿病院や墨東病院で院内感染が起きているのは、空間のつながりに余裕がなく、

清潔ゾーンと汚染ゾーンが近接してしまう。

平面のゾーニングだけでなく、縦方向でのゾーニングが非常に難しくなってくるからなんです。

 

 

防御、という観点からみると、

建築は、分割されている方が守りやすいんですね。

 

分かりやすい例としては、お城がそうですね。

お城は、本丸、二の丸、三の丸、といった風に拠点が分かれています。

 

 

そこに、石垣や土塁や堀で二重三重に防衛ラインを敷いています。

無尽蔵に人や費用をかけてつくった大阪城のような堅城もありますが

 

特に、限られた人材でうまく防御しきったお城としては、真田正幸の信州上田城があります。

 

 

川の流れを町全体に取り込んで堀となし、本丸、二の丸だけでなく、藩邸や町屋敷までを拠点化し、徳川の大群から守り切りました。

 

千人ほどの軍勢で楠正成が幕府軍数万の包囲をしのぎきった千早城の戦いでも、

上赤坂城、下赤坂城から、千早城と拠点を切り離しながら守っています。

 

 

逆に、織田信長が倒れた本能寺のように、信長の近習の精鋭をもってしても、

伽藍ひとつと土塀だけの構成では防ぐに防ぎきれなかったことがわかります。
 

 

つまり、分棟配置や連棟型のかつてのサナトリウム型の病院建築が、感染症に対し防御姿勢、有事の建築であったのに対し、

パッケージタワー型の病院建築は、感染症が克服されたとみた平和な時代の病院建築、いわば平時の建築といえるかもしれません。

 

現代の病院建築にも土塀と堀が必要。

 

もう一度、おさらいすると、

 

病院では全体空調のリターン空気を全体に戻さない。

戻す場合は、かならずHEPAフィルターを間に入れて、ウィルスの侵入を防ぐ。

ダイヤモンドプリンセス号の集団感染は、ほぼこれが原因ではないかと考えられます。

まもなく、冷房空調をしないと熱中症等が恐ろしい夏の季節を迎えますので、この空調のチェックと対応を急がなくてはなりません。

 

 

続いて、床に落ちている生きているウィルス(不活性化していないウィルス)を靴の裏で運ばないように、足裏洗浄です。

 

これは、食品工場では一般的なもの、ゾーンが切り替わるところには必ず設置です。

 

そして、畜産関係で取り組んでいる踏み込み消毒槽
 



長靴を着用していない場合は、バットに浸していてもいいでしょう。

 

 

消毒液は次亜塩素酸ナトリウム溶液

 

 

そして、履物は履き替える。

 

 

汚染ゾーンから出るとき、清潔ゾーンへ入るときには防護服着用のうえパスボックスを通り、ウィルスや粉塵を除去する。

 

これも、食品工場には常備されている設備で特別なものではありません。

 

受付カウンターも仕切る。

アクリル板設置

 

 

ナースステーションも同様

 

 

新型コロナウィルスの患者さんに接する医療スタッフには、バーサフローの支給

 

 

陰圧ユニット、陽圧ユニットを導入して空間の制御をおこなう。

 

 

 

 

陰圧室には前室を設ける

 

 

PCR検査のための受付窓口はできれば既存建物と別に設ける。

 

 

 

といったところでしょうか

 

つづく

 

 


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