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Channel: 建築エコノミスト 森山高至「土建国防論Blog」Powered by Ameba
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オリンピックは大丈夫なのか?11

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新国立競技場問題の続きです。

10の設問に対してどのように考えればいいのでしょうか



それでは槇文彦先生のヒントを見てみましょう。



「マキクンノ コタエ」




「無蓋化し子供施設を併設」http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20140827/674791/?P=1


1.オリンピック時8万人収容の規模をもった有蓋施設は、建設費だけで容易に2,000億円を超えることが想像されるだけでなく、ポストオリンピックの50年以上、スポーツ、室内イベントに8万人の需要即ち市場性が恐らくないまま、厖大な維持、修繕費を支払い続けていかなければならない。

2.室外スポーツ、室内イベントは本来相反する機能を相互にもっている為に、理想的な室外スポーツ施設でもなければ理想的な室内イベントホールでもないという矛盾は永久に解決できない。スポーツ関係者は誰も有蓋化に賛成していない。

3.不完全な半屋外競技場の天然芝に365日間適正な日照、通風、芝表層に湿度を与える為に、高度な技術と莫大な維持費が必要とされることが明らかになったが、それですら普通の屋外競技場の天然芝のクオリティを再現できるという保証は全くない。

4.同様に施設の屋内化に必要な可動式屋根装置は、地上60mから70mの高所における膜式天蓋をスムースに可動、操作させ得る技術的信頼性の保証は全くなく、特に提案されているC種膜は耐久性が低く、又その為に必要とされる10年毎の全面取換えの容易性についての説明もないまま、膜式可動装置の支持材も含めて厖大なコストが建設費、維持費にかかることだけは明らかになっている。

5.一方室内イベントホールの性能はC種膜式可動天井による遮音性能欠如、スタジオジャンピングによる周縁への振動の影響に対する無対策、巨大なボリュームに対する電気音響、暖冷房コスト、市場性確保の懸念等、理想的なイベントホールから程遠いものであることが明らかになっている。又、健全な芝育成の為、使用頻度は年12日以内に抑制されている。

6.可動式有蓋複合施設に決定した唯一の理由は、年間平均12回のイベントからの収入に期待するところが大きいとしているが、その収支計画をみる限り、有蓋とした為に予想される厖大な修繕維持費(様々な支出の一部)はイベントによる7億円収入を遥かに超える額である。更に他の主要収入、源として公にされた特別ルーム、パートナーシップ制の需要についてまったく精細な説明がない。従ってこの施設の収支計画は希望的観測に過ぎず、既に破綻しているといえよう。

と現在、強引に進めようとしている新国立競技場計画案に対して厳しく批判してらっしゃいます。
要は「JSCはじめコンペプログラムはコンサートイベント活用を重視するあまり、スポーツ施設としての根本機能やオリンピック以降の活用と維持管理について破たんをきたしている。」と喝破されています。

おっしゃるとおりと思います。

だから、「開閉式屋根という現時点で限りなく不可能かつ維持管理に問題があり芝生の育成に支障をきたす全面屋根はやめて、スタンド上部の庇だけにしなさい。」というご意見です。

同時に、「次世代を担う子供達にこそ活用しやすいスポーツ施設としての市民に親しみやすい機能を拡充するべきだ。」とのご提案です。

ポストオリンピックを見据えた重要なご指摘を皆さん参考にしてください。

つづいて伊東豊雄先生


「イトウクンノ コタエ」






「改修だとコスト半分」
http://toyokeizai.net/articles/-/38360?page=2

現競技場の聖火台とは反対側のスタンド約4割を撤去し、2段または3段のメインスタンドと固定屋根を新たに造り、8万人の収容条件を満たす案。サブトラックは敷地南側に新設する。コスト高の要因となっているコンサートなどの利用は想定しない。

5月12日示されたイメージは配置やボリュームを当てはめた必要最小限の検討図。伊東氏らしい「軽さ」や斬新なデザインを期待していた向きには肩すかしだったろう。

伊東氏は「改修をするなら誰が考えてもこれに近い形になるのでは。シンプルでローコストでいい。費用は現在の1800億円ほどの計画に対し、ラフに見て半分で済むだろう。ただし、私自身がこれを進めていくつもりはないし、そういう立場にはない」と強調。傍らの中沢氏は「伊東さんが触媒となり、国民的な議論が広がることを期待したい」と述べた。

この伊東豊雄先生の改修案については以前解説したことがありますから、こちらも参考にしてみてください。
現国立競技場はチューンナップ出来るのか④


そして磯崎新先生です。



「イソザキクンノ コタエ」

つづく


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