配給元のユーロスペースさんより試写会にご招待うけ、
『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を観てきました。
それだけじゃなく歴史的建築物とそこに込められた文化やそれを支える人々の汗と涙と努力と欲望とか誠実さとかいろんなことがいっぱい詰まったとても人間らしい素晴らしい映画でした。
「10年も!閉館していた世界的美術館、そこでは何が起こっていたのか?」
というのがキャッチコピーなのですが、
この映画には前編があったんですね。
『ようこそアムステルダム国立美術館へ』
2004年、レンブラントやフェルメールなどの傑作を所蔵するアムステルダム国立美術館で大規模な改築工事が始まった。「みんなに愛される美術館」を目指して館長や学芸員たち、建築家が試行錯誤する中、美術館を貫く通路をめぐり地元民がプランの変更を求めて猛反発。さまざまな立場の人々の意見が飛び交い計画は二転三転し、工事は中断する事態になってしまう。
こんときには、いつになったら美術館はオープンできるのか?
ということがテーマでした。
改修デザイン提案コンペで勝利したのはスペインの建築家クルス&オルティスだったのですが、市民団体は「あのエントランスは自転車が通れない!」と問題提議してきます。
じゃあ、建築家は通りぬけできなく設計していたのか?というとそうではないんです。
むしろ、この通り抜け通路がこの建築の市民利用を即す特徴ととらえて美術館の左右移動のさまたげになっていた、自転車通路を立体的に地下ロビーと組み合わせることで解決しようとしていたんです。
だから、建築家の二人は
「我々のエントランスのデザインアイデアがコンペ勝利の決め手だ」と
自信満々でした。
しかしながら、市民はこのデザイン提案を机上の空論と一蹴しガンガン反対していきます。
討論集会においても両者の意見はまっこう対立です。
建築家は「あの連中には何を言っても無駄だ、聞く耳をもっていない。」とあきらめ顔ですが、解体工事はどんどん進んでいきます。
美術館の館長は、アムステルダム市民のための文化の殿堂を目指すと宣言し、実際にそうなることを本当に望んでいるのですが、
設計もなんとか終わり、やっと許認可も通り、いよいよ着工できるかという矢先に、建築の査問委員会でこの許可が差し止めになってしまいます。
で、工事はずっと頓挫したままだったわけなのですが、、、
美術館の学芸員たちはそんなこと言っても、美術品の収蔵管理や新美術館での作品展示の計画も進めなきゃいけませんから大変です。
ただいわゆるジャーナリスティックな作品ではなくて、とっても人間らしいシーンが多く、なおかつ映像がきれい。そしてキャラが凄く立ってて俳優なんじゃないのか?ってくらいに良いシーンが撮ってあるんです。
それはドキュメンタリーだからといってすべてを俯瞰的に撮るんじゃなく要所要所でアップやパンアップを多用してることもありますが、
編集が素晴らしくてリアルのセリフや表情が多重な意味をもって象徴的な効果を生むようにできあがってる点でもあります。
この打ち合わせシーンでも模型を入れた低い位置からのカットが、
そうでなくても大男のレーウ館長と、説明する建築家が、
大きく立ちふさがって、ちょうど進撃の巨人のようでしょ?
このころは、まだ彼らが計画の全体像を把握していたこともこのカットから伝わってきます。
出てくる人たち全員、俳優さんに見えてしまうんですよね。
というわけで、12月に封切りですので、ぜひぜひご覧ください。
封切りまで不定期でこの映画の良さを皆さんにお伝えしたいと思います。また、つづき書きますね。